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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第五章

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恋話

そうして作ったお守り、レオンは出発までに、一度ラピスラズリ邸に来てくれると言っていたので、その時に渡すことにした。


紅緒ちゃんはさすがに無理かな?と思っていたんだけど、シーラ先生のはからいで、相談した翌日に、私たち三人とリーナちゃんのお茶会をセッティングしてくれた。


前にも遠征の後、一度だけお茶会をしたけど、そうそう何度もひとりの貴族令嬢だけ聖女と仲良くするのは、外聞が悪いみたいだから、内密で。


こういうところ、聖女って面倒くさい。


でも、紅緒ちゃんにとっても、少し気を緩める良い機会かなと思う。


本人はそんなつもりないみたいだけど、やっぱり気を張っているなって、周りの人は分かるもの。


「リーナちゃん、わざわざありがとう。少ししか時間取れなくて、ごめんね」


「ううん。ベニオちゃんこそ、いそがしいのに、ありがとう」


リーナちゃんお得意のエンジェルスマイルで、紅緒ちゃんもめろめろだ。


とろとろの顔をして、リーナちゃんの頭を撫でている。


うんうん、癒やしって必要よね。


そんなふたりを見て、黄華さんもほっとした表情をしている。


毎日頑張っている紅緒ちゃんの様子を見て、きっと心配していたのだろう。


「あのね、またまものたいじにいくってきいたから、わたしにもなにかできないかなっておもって。はい、これ!」


そう言ってリーナちゃんは、カバンからラッピングされた小さな包みを取り出して、紅緒ちゃんに差し出した。


「え、ありがとう!開けてもいい?」


「うん!」


リーナちゃんの許可を得て、紅緒ちゃんが包みを開く。


丁寧にリボンを外すと、現れたのは先日一緒に作った、あのお守りだ。


「これ……」


「ルリせんせいにおしえてもらって、いっしょにつくったの。おまもり、ベニオちゃんもしってる?ぶじにかえってきてね!」


優しい笑みとともに贈られたお守りには、リーナちゃんの心が詰まっている。


もちろん紅緒ちゃんにもそれが届いたようで、はじめは驚いたように目を見開いていたが、リーナちゃんの言葉を受けて、じんわりと目尻に涙が溜まっている。


「もうびっくり!まさかこの世界でこんなものもらえるなんて。瑠璃さん、さすが。リーナちゃん、本当にありがとう」


紅緒ちゃんが大切そうに、ぎゅっとお守りを胸の前で握り締めた。


良かった、喜んでくれて。


「お守りなんて、懐かしいですね。リーナちゃんの気持ちが込められているなら、きっと紅緒ちゃんは無事に帰って来れますよ」


そう言って黄華さんもリーナちゃんの頭を撫でた。


みんなからよしよしされて、リーナちゃんも嬉しそうだ。


「えへへ。かえってきたら、ベニオちゃんはへいかのおよめさんになるんでしょ?おうひさまになっても、なかよくしてね!」


「!ちょ、ちょっと?リーナちゃん、なんでそのこと……」


「?ベニオちゃんは、へいかのことすきなんでしょ?このまえあったときも、おへやによばれたっていってたし」


「い、いやいやいや、ち、違うの!いや違わなくもないけど。で、でもそうなるにはまだ早いっていうか、ほらまだ若いし……」


まさかのリーナちゃんからの攻撃に、紅緒ちゃんがタジタジだ。


「うーん、じゃあオウカさんがさき?ウィルさんと、どうなってるの?」


ここでまさかの、矛先が黄華さんに向いた。


「わ、私とウィルさんは別にそんなんじゃ……」


「でも、かお、あかいよ?ウィルさんのこと、きらいなの?それともすき?どっち?」


「き、嫌いでは、ありませんけど……。す、好きか嫌いかの二択なんですか?」


出た。これ、私も前にリーナちゃんに聞かれたんだよなぁ。


レオンのこと、どちらかといえば好きかな〜って答えたら、マーサさんに生温い顔で見られた。


懐かしい。


今度は黄華さんがタジタジになり、紅緒ちゃんがほっとした顔をしている。


うーん、見ているだけなら面白い。


でも、そんな私をただの傍観者にしてくれるはずもなく、黄華さんがキッとこちらを振り返った。


「ま、まずは瑠璃さんが先だと思いますよ!?ほら、大好きなレオンハルトの叔父様と瑠璃さんの結婚式、リーナちゃんも見たいですわよね!」


なんとここで爆弾を投下してきた。


「ええっ!?なんで私!?」


「うーん、それについては、おかあさまもおにいさまも、なやんでるんだけど……。さっさとすればいいのに、ってふたりともいってる。かいしょう?がなんとかって……」


そしてリーナちゃんから語られる、まさかの事実。


エレオノーラさん、レイ君。


リーナちゃんを前になんて話してるんですか。


「そ、そうね!瑠璃さんのウエディング姿を見届けないと!」


そして紅緒ちゃんもそれに乗ってきた。


う、裏切り者!


しかし、ここでリーナちゃんがまた予想外の発言をした。


「でも、ルリせんせいのことはおうちでもきけるから、きょうはベニオちゃんとオウカさんのこと、ききたいな。おちゃかいでも、おともだちとはなしてるの。えっと、コイバナ?わたしはまだわからないけど、おねえちゃんたちは、かっこいいおとこのこのはなしとかしてる」


なんと。


私に向きかけた矛先を、ふたりに構え直した。


そしてお茶会で恋バナって……。


子どもとはいえ、女だ。


元の世界でもそうだったが、六歳くらいになると急にそういう話が増えてくるのよね……。


そうか、お茶会でおねえさんご令嬢たちに教わったのか……。


リーナちゃんの目は、完全にふたりにロックオンされている。


逃げられない、紅緒ちゃんと黄華さんはそう悟りながらも、必死にこの状況を打破する方法を考えているのだろう。


いや、押し付け合いかもしれない。


チラチラとふたりは、目配せしながら無言の攻防を行っている。


……良かった私、今日は大丈夫そう。


「レオンおじさまのかいしょうのおはなしも、きになるけど」というリーナちゃんの呟きには、聞こえなかったふりをして、カップを傾け、お茶を一口頂くのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 流石!リーナちゃんの天使的幼女無双………www 天下の聖女さんズもタジタジ(///∇///) 心の籠った御守りなら千人力ですね! ………多分………物理的にも………(;゜∀゜)
[一言] 何処の世界でも、男は生まれてから徐々に男に育つが女は生まれた時から既に女なのですな。 相手がおっさんや男に同じ事を訊かれたら笑顔で塩対応待った無しの黄華さんも相手が幼女では調子が狂ってしま…
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