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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第五章

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祈りを込めて

「そうか、赤の聖女様やレオンのために」


「うん、おまもり、っていうんだって!わたし、がんばってつくりたい!」


夕食の席、先程のことをエドワードさんやエレオノーラさんに伝えたところ、快く材料の提供を申し出てくれた。


まあ布と紐くらいだから、多分あるだろうなとは思っていたけれど。


材料も確保できたことだし、早速夕食が終わったら作ることにした。


縫う以外はそんなに難しくないもんね、三十分くらいで出来上がるだろう。


「リーナは本当に色んなことに興味を持つようになったね。聖女様や叔父上のために何かしたい、なんて」


いやいや、このところぐっと背の伸びたレイ君も成長著しいですよ?


アラサーともなると時の流れが早く感じるわぁ……。


「そうねぇ。それに、再来週には、いよいよアーサー殿下とヴァイオレット殿下のお茶会ね」


子どもたちの成長に、エレオノーラさんが柔らかい表情でそう言った。


そう、以前ヴァイオレットちゃんが、そろそろ……と言っていたお茶会、急な遠征が決まったものの、無事開催されることになり、レイ君とリーナちゃんも招かれている。


「叔父上たちが遠征で頑張ってくるんだから、僕達もしっかりしないとな、リーナ」


「うん!がんばる!」


そう、レオンたちの出発は来週、そしてお茶会はその翌週に開催されることになっている。


レオンたちにはレオンたちの、リーナちゃんたちにはリーナちゃんたちの戦いがある。


心が安定して以来、少しずつエレオノーラさんとお茶会に参加してきたリーナちゃんだが、やはり王族主催となると、また別格だ。


貴族令息・令嬢としての経験を積んでいる最中なのだ。


「だけど楽しみでもあるよね。ふたりとも、アーサー殿下やヴァイオレット殿下と仲良くなれると良いね!」


私の言葉に、はい!とふたりは大きく頷いてくれた。


ちなみに、予想通りエドワードさんが、パパの分はないのか……?と呟いたのだが、きょとんとしたリーナちゃんに一蹴された。


おまもりは、いまからなにかをがんばるひとにあげるんだよ、だって。


「パパだって毎日家族のためにお仕事頑張ってるじゃないかぁぁーーー!」


そう言って涙するエドワードさんにとどめを刺したのは、レイ君の一言。


「確かにそうだけど、仕事をするのは一家の家長として当たり前でしょう。もし地方に左遷とかになれば、作ってもらえるかもしれませんね」


うっうっと泣くエドワードさんと、それを慰めるエレオノーラさん。


勤労感謝の日ってことで、今度レイ君とリーナちゃんに、お手紙でも書いてもらおうかしら……?と思う私なのだった。







「さて!じゃあお守り作りを始めます!」


「おねがいしま〜す!」


夕食を終えてすぐ、リーナちゃんの部屋に戻り、早速お守り作り開始。


まずは布と紐を選ぶ。


フェルトがあると便利なんだけどな……と思っていたら、少し手触りは違うが、端がほつれない似た布があったので、その中から好きな色を選んでもらった。


紐も同じく、布に合わせて選んでもらう。


リーナちゃんは、紅緒ちゃんには薄いピンクの布に赤い紐、レオンには紺色の布に銀の紐を選んだ。


うんうん、いい組み合わせ。


特に、サバサバしてるけど意外とかわいい紅緒ちゃんに、ピンクをチョイスするあたり、リーナちゃんは分かっているなと思う。


じゃあまず、線を書いた布をハサミで切ってもらう。


直線だし、ハサミはもうかなり上手だもんね、難なくきれいに切ることができた。


「じゃあ、私がこれを縫い合わせている間、中に入れるものを考えてもらおうかな?」


「なかにいれるもの?」


元の世界のお守りの中身は(多分)護符的なものだと思うけど、この世界にそんなもの、あるわけない。


ということで、なら思いがこもっていれば、中身なんて何でも良いんじゃない?ということになった。


大切にしていた石でも貝殻でも、なんなら手紙とかでも良い。


大切なのは、“心”だもの。


無事に帰ってきてほしいっていう、その願い。


「う〜ん、じゃあ、おはなのたねでもいい?かえってきたら、いっしょにうえるの」


そう言ってリーナちゃんが取り出したのは、庭園で自分が育てた花から取れた種。


「うん、すっごく良いと思う!じゃあね、種をぎゅって握って、怪我しませんようにとか、そういうお願いを込めてみて?」


私の言葉に、リーナちゃんは種を握りしめて目を閉じた。


その真剣な様子に、笑みが零れる。


うん、私も。


紅緒ちゃんもレオンも、みんなが元気に帰って来てくれますように。


そんな願いを込めて、一針一針お守りの形に縫っていく。


疲れた時、危ないって思った時。


このお守りを思い出して、頑張ろうって、無事に帰るぞって、思ってくれたら良いな。


私たちに出来ることはこれくらいだけれど、ちゃんと、みんなが帰るのを待ってるから。


「よし、できた」


「わたしも、もうだいじょうぶ」


袋状になった布の中に、それぞれ種を入れてもらう。


何の花の種なのかな?


みんなで植えて、どんな花が咲くのか見守るのも楽しいかもね。


その後は目打ちのようなもので布に穴をあけ、紐を通す。


本当は叶結びっていうんだっけ?あの独特のリボンみたいな形の結び方。


それをするんだけど、正直、結び方が分かりません。


なのでごめんなさい、ちょうちょ結びで……。


情けなく思いながらも、リーナちゃんにちょうちょ結びを教えていく。


さすがにいきなり一人では結べなかったが、少し手を貸しながらやると、綺麗なちょうちょの形になった。


「すごーい!かわいい!」


出来上がったお守りに、リーナちゃんが目をキラキラさせる。


うん、思っていたよりも綺麗にできた。


「きっと喜んでくれるよ。一緒に作ってくれて、ありがとう」


「うん!こちらこそ、おしえてくれて、ありがとう!」


リーナちゃんとふたり、達成感と渡す楽しみで微笑み合う。


そうして完成したお守りは、なんとなく、ほんのちょっとだけど、キラキラと輝いて見えた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ルリがレオンを思って作った お守りねぇ... ぶっ壊れアイテムの予感が(汗)
[気になる点] レイ君、リーナちゃん、パパにもお守り作ってあげてよ… エドワードパパも皆を養うため、お家存続のため頑張って働いているんだからさあ… 世の中のお父さんは結構大変なのです。
[一言] 聖女の祝福を込めたミサンガとかどうか……と思いましたが、ちょっと古いしやってもレオン専用ですね(ゲーム的には一度だけ致命傷クラスの攻撃を無かった事に出来るとかのえぐい効果になりそうですが) …
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