表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/283

初外出

「はい、良いですよ、リリアナ様。とてもお上手でした」


「ありがとうございました」


レッスンを何度か受け、リーナちゃんもかなりクレアさんに慣れてきた。


クレアさんは初めの印象通り、サバサバとしているけれど優しくて、でも甘やかすのではなく、ダメなところはきちんと言ってくれる人だった。


薄紫の長い髪を綺麗にまとめて、服も上品で落ち着いたものを好んでいる。


瞳は鮮やかな赤色で、知的なんだけど色っぽさもある、本当に綺麗な人だ。


演奏会とかしないのかな。


もしやるなら、聞きに行きたい。


「そう言えば、ルリ様もフォルテをお弾きになられるとか?もし宜しければ聞かせて頂けませんか?」


「!るりせんせいのフォルテ、またききたい!」


「えっ!?いやいや!そんな先生に聞かせるようなモノでは!!」


「るりせんせい、じょうずだったよ?」


まずい、リーナちゃんの上目遣い攻撃だ。


これに勝てたことは、まだない。


「…一曲だけね?」


勝てる日は来るのかしら?







「素敵でしたわ。聞いたことのない曲でしたが…。でも、何だか心が洗われると言うか、穏やかな気持ちになれる演奏をされるのですね。私にはない魅力で、羨ましいくらいです」


レッスン後のティータイムで、クレアさんが私の演奏を褒めてくれた。


社交辞令とは分かっているが、それでもやっぱり褒めてもらえると嬉しい。


「いえいえ。先生の演奏も迫力があって、情感豊かで…。演奏会などはされていないのですか?もしあるのなら、是非聞きに行きたいです」


「そうですわね…次の演奏会まで暫くあるのですが、近くなったらご招待しますわ。宜しければリリアナ様やラピスラズリ家の皆様も。」


「わあ!嬉しいです」


「わたしも、いきたいです!」


やった!皆で行けるといいな。


楽しみが増えたぞー。


「それは置いておいて…ルリ様、あれだけフォルテがお上手なのであれば、孤児院などで弾いてみるのは如何ですか?実は私、ボランティアで演奏しに通っていまして…。何やら子ども達向けの話などもお上手と聞きましたし。もし宜しければ、ですが」


「孤児院、ですか」


そっか、この世界にもあるんだ。


実は私、この世界に来て、ラピスラズリ邸から外に出たことがない。


人から話を聞くだけで、外の世界のこと、あまり知ることができていないのだ。


そろそろ外にも出なくちゃとは思ってはいたのだが、なかなか機会がなかった。


なので、これはとても良い提案だ。


「…行ってみたい、です。でもあの、エドワードさんとエレオノーラさんに相談してからでないと」


「勿論ですわ。旦那様と奥様に許可を頂けたなら、是非。良い知らせをお待ちしていますわ」


うん、早速今夜にでも話してみよう。







「ああ、良いのではないか?」


「そうね、子ども達も絵本や紙芝居に夢中になるわよ、きっと」


わあ、あっさり。


「では、その日はリーナ付きはマリアに任せましょう。リーナ、いいね?」


「…いっしょに、いきたいです」


あー、そうだよね。


色々興味を持つようになったのは良いことだけど…侯爵令嬢だし、やっぱり保護者同伴じゃないと危ない。


「そうね。もう少しお勉強して、立派なレディになったら私達やルリと一緒に行きましょう」


「おべんきょう、がんばったら、いっしょにいける?」


「ええ。いつ行けるかは、リーナ次第ね」


「…わたし、がんばる」


おお…エレオノーラさん、なんだか母力上がってません?


リーナちゃんの成長といい、感動だ。


フォルテの練習も順調だし、この調子で色んな勉強も頑張ってほしいな。






孤児院への外出許可を得て、リーナと共に瑠璃が先に退出すると、残った三人は互いの顔を見合ってコクリと頷いた。


「チャンスね」


「はい」


「レオンに連絡するぞ」


三人の心はひとつだったーーー。







「あれ?どうしてレオンハルトさんがここに?」


「聞いていないのか?今日は貴女の護衛のために呼ばれたんだ」


クレアさんと一緒に孤児院に行く日。


いつもとは違う、市井向けの少しくだけた格好と髪型で待っていると、レオンハルトさんが現れた。


「え、レオンハルトさんがそうなんですか?確かに護衛の方が来るからとここで待っていたのですが…」


道案内と護衛を兼ねて、と言われたので使用人の誰かかなと思っていたのだが、まさかのVIP待遇だ。


騎士団長様の護衛とか豪華すぎない?


「気にするな。どうせ今日は公休日だ。それに、孤児院には私も興味がある」


申し訳ない気持ちにはなったが、ここで彼に帰られても一人では行けないので困る。


ここはお言葉に甘えよう。


お願いします、と伝えると、何故かスッと右手を出された。


意味が分からず首を傾げて見上げると、綺麗な瞳と目があった。


「…重そうだ。私が持っても良いものなら、貸してくれ」


びっくりしたが、その優しさが嬉しくて「ありがとうございます」と微笑む。


荷物を受けとるとスッと前を向いてしまったが、その目元が少し赤く染まっていた。


…可愛い、かも。


はっ!いやいやいや!!なに考えてる私!!!


イケメンは鑑賞のみ!


私が目指すのは平穏!!


パタパタと赤くなった顔を扇ぎ、レオンハルトさんの後を追う。


そう!私は今からボランティアとは言え、お仕事なんだから、気を引き締めないと!!


そう言い聞かせてレオンハルトさんの隣に並んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ