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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第五章

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お守り

「では、よろしくお願いしますね、リアムさん」


「……そんな大役、私で本当に良いのでしょうか」


勿論です!と返せば、頬を染めたリアムさんが、照れたように少しだけ俯いた。


「ご両親とも話をしようと決意されてから、少し角が取れたようですね。とても良い表情をしている。貴方には、期待していますよ」


そんなシトリン伯爵の言葉に、リアムさんはばっと顔を上げ、少しだけ嬉しそうに笑った。


「――――謹んで、お受けいたします」


これでまたこの国の教育は一歩進んだ、そう信じて、私たちは握手を交わした。






午後からの打ち合わせも何事もなく終わり、夕方、私はラピスラズリ邸に帰って来ていた。


「出発は、一週間後かぁ……」


ついでにとばかりに、王宮でベアトリスさんに遠征食の手伝いと、シーラ先生やヴァイオレットちゃん、アーサー君にポーション作りの手伝いを申し出てきた。


色々考えたけど、やっぱり私にできるのはこれくらい。


紅緒ちゃんやレオン、ウィルさんやイーサンさん、みんなに無事で帰って来てほしい。


ただそれを願うばかりだ。


「ルリせんせい?」


「あ、リーナちゃん。ただいま」


少しだけ下向きな気持ちで廊下を歩いていると、リーナちゃんが声をかけてくれた。


私の様子を見て、心配そうにしている。


相変わらずの天使っぷりだ。


そんなリーナちゃんも、もうすぐ五歳。


身長も伸びたし、話し方も随分つたなさがなくなってきた。


それにますます可愛くなった気がする。


ぷにぷに感はなくなったけど、女の子!って感じになってきた。


それを言ったらレイ君もだけどね。


少年!って感じになって、可愛さよりもカッコ良さが際立ってきた。


あれは同年代のお嬢様方がほっとかないだろうなぁ……。


「ルリせんせい?なんかへんだよ?」


「あ、ごめん。ちょっと考え事してた……」


あははと誤魔化せば、リーナちゃんは首を傾げた。


そして夕食まで少し時間があるからと、部屋に誘ってくれた。


最近ゆっくりリーナちゃんと過ごすことも少なかったしね、もちろん喜んでお邪魔させてもらうことにした。


マリアにお茶を淹れてもらい、ふたりソファに並んでくつろぐ。


「ルリせんせい、なにかあったの?さっき、げんきがないふうにみえた」


やっぱりリーナちゃんは鋭い。


それになぜだか相談したくなってしまう。


黄華さんも王宮の人によく相談受けているらしいし、ひょっとしたら光属性魔法の効果なのかな?


「うーん、実はね……」


思えば、今までも何度もリーナちゃんにアドバイスをもらってきた。


だからつい、話してしまったのかも。


だけど、話を聞きながら、リーナちゃんの顔が強張っていくのが分かった。


そうだよね、リーナちゃんも紅緒ちゃんやレオンのこと、心配だよね。


不安にさせるような話をしてしまったと、申し訳ない気持ちになってしまった。


ごめんねと謝ると、リーナちゃんはううんと首を振る。


「おしえてくれて、ありがとう。なにもしらないままより、ずっといいもん」


強くなったなぁ、リーナちゃん。


よしよしと頭を撫でると、くすぐったそうにする仕草は、以前と変わらない。


「わたし、いまはなにもできないけど、まほうも、もっとべんきょうする。ルリせんせいみたいに、レオンおじさまやたいせつなひとをまもれるよう、がんばる」


意志の強さを感じる眼差しでそう告げられ、またひとつリーナちゃんの成長を感じた。


「うん。そうだね。レオンが聞いたら、感動して泣いちゃうかも」


甥姪を可愛がっているレオンのことだ、泣きはしなくても、目が潤むくらいはするんじゃないかな。


あ、その前にエドワードさんが、パパは!?と嫉妬して泣くかも。


うん、すっごくあり得る。


くすくすと笑みを零す私に、リーナちゃんが不思議そうな顔をしたので、考えていたことを話すと、そうかも!と笑ってくれた。


良かった、ちょっぴり暗い空気だったのが、少し和らいだ。


「あのね、いまはなんのやくにもたてないけど……わたしにも、レオンおじさまやベニオちゃんにできること、ないかな?」


くうっ!カワイイ!発想がもう天使!


リーナちゃんにもできること、かぁ……。


「あ、そうだ。私たちの住んでいた国では、これから何かを頑張る人のために、お守りを送ったりしてたよ」


「おまもり?」


???とリーナちゃんがハテナを飛ばしている。


そりゃ知らないよね。


まず神社なんてあるわけないし。


「うーんとね、スタンダードなのは、これくらいの小さな袋に、えーっと、何が入ってるんだろ……。護符?願いを込めた紙とかを入れるのかな。元気な赤ちゃんが生まれますようにとか、事故に合いませんようにとか……」


だいたいの大きさを指で示しながら説明してみるが、悲しいことに、自分でもお守りって何か、よく分かっていない。


しっかりしろ、純日本人。


心の中で自分を叱っていると、何となく分かったとリーナちゃんが言ってくれた。


え、嘘。今の説明で分かる?


「うーんと、ちいさなふくろに、おねがいごとをこめたものをいれて、もっててもらうってこと、だよね?」


「そうそう!それ!」


すごい!リーナちゃんの理解力、素晴らしい!


「そういえば似ているのでは、パワーストーンなんかもあったなぁ。ブレスレットをみんなで買ったこともあったっけ。恋愛成就とか、仕事運を上げるとか、あとは魔除け、と、か……」


そこではたと気付く。


そっか、その手が!


「ありがとうリーナちゃん!すっごく良いこと思い付いた!」


「え、ええ?」


わーっわーっ、なんで今まで思い付かなかったんだろう。


ポーションがだめでも、これならひょっとして……!


「そうだ、レオンや紅緒ちゃんにお守りを作るなら、一緒に作ってみよう?きっと喜ぶよ」


なんだかよく分からないけど……とリーナちゃんは戸惑っていたけれど、お守りは作りたいと思ってくれたみたい。


それほど難しくないし、材料さえあれば、夕食の後にでも作ってみようと、リーナちゃんと約束をしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 瑠璃さん謹製の御守りなら効力抜群過ぎて、国宝級か伝説級の御守りが出来上がりそうで楽しみですねwww( ̄▽ ̄)b 多分………!Σ( ̄□ ̄;)的な効果がありそう……(;゜∀゜)
[良い点] お守りというのは相手を守ってくださいと願いを込めて作られたものなので定番の小さな袋からパワーブレスレットまで何でもお守りになると思いますよ。この世界なら魔法の効果を付与することもできるかも…
[一言] お守りの中身は見てしまうとご利益が無くなるので、一般人は知らないのが普通です(断言) 後余り知られてないのが、お守りを無くした時は「悪い物を身代わりに受けてくれた」という事で探してはいけない…
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