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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第五章

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思い愛

そしてそんなエドワードさんにも、お子様用カクテルは大好評!


お酒風ポーションになりそうなサングリアも、今度陛下やシーラ先生に相談した後に作ってみようかな。


とりあえずそれは私の胸の内に秘めておくことにして……。


それにしても、ガーリックポテトをつまみながらワインを飲んでいるレオンを見ていると、やっぱり私も飲みたくなってきちゃったかも。


後で部屋でちょびっとだけ飲んでみようかな?


ひと口ふた口くらいなら、強いお酒でも大丈夫だよね?


大事な話が終わったら、飲みやすいお酒を選んでもらって、ふたりで少しだけ飲むのも良いかもしれない。


「ルリ?どうかしたか?」


「あ、ごめんレオン。あのね、後から話したいなと思うんだけど、良かったらちょっとだけ、お酒付き合ってくれない?」


今思い付いたばかりのことをレオンに話すと、快く了承してくれた。


マーサさんに頼んで、後で用意してくれるって。


恋人とふたりでお酒を飲む、ってちょっと憧れてたから嬉しいな。


ほら、素敵なバーでカクテルを飲んだりするのって、大人!って感じがするよね。


こんなこと考えてるなんて、お酒に憧れてたリーナちゃんと一緒だわ。


思わずくすっと笑みが零れると、不思議そうにレオンが顔を覗き込んできた。


「何でもないの。ただ、楽しみだなぁって」


元の世界で憧れていたことを、この世界で経験できるのが、嬉しくて。





「ルリ、入っても良いか?」


「あ、いらっしゃい。丁度お風呂も終わったところ。どうぞ」


一度食堂で解散した後、お風呂や着替えなどを済ませて部屋に戻ると、ちょうど良いタイミングでレオンが戸を叩いた。


お酒を飲んで、そのまま眠くなっちゃうかもだし、すぐに眠れるように準備はしておいた。


ほら、眠くなるとお風呂も着替えもめんどくさーい!ってなっちゃうじゃない?


さすがに夜着は恥ずかしいから、そのまま寝ても大丈夫そうな、シンプルでシワになりにくい素材の服にした。


そうしてレオンを招き入れると、その手に一本のボトルが握られていた。


どうやらマーサさんにお願いしていた物を、持って来てくれたらしい。


ちょっとだけど、チーズとかおつまみも用意しておいたからね、久しぶりに楽しく飲みたいし。


いつものように隣り合ってソファに座ると、もう栓を開けるかと聞かれる。


うーん。大事な話もあるし、できればそれが終わってからが良いかな。


「分かった、ならば冷やしておこう」


そう言うとレオンは氷魔法でボトルの周りに薄い氷の膜を張った。


溶けないようにその周りの温度調節もしているらしい。


さすが魔法騎士団長様だ、魔力操作が上手い。


「それで?話したいこととは、何だ?」


「うん、あのね――――」


そして私は、最近のあれこれを話し始めた。


候補者との公園視察のこと。


リアムさんの気持ち。


和解したこと。


そして私の今までの言動が、少なからず誤解を与えてしまっていたこと。


「……ごめんね。私、きっとレオンにも嫌な気持ちにさせてたよね。それに、紅緒ちゃんや陛下にも、迷惑かけちゃったかも」


リアムさん、言ってたもんね。陛下のお妃候補筆頭は私だって。


敬うべき一国の国王を相手に、勝手に弟みたいとか思って接したり、余計なお節介をかけたりするから、変に勘繰られるんだ。


「……確かに、そういう噂が立っているのは事実だ」


やっぱりそうなんだ……。


レオンの表情も険しい。


「だが、それはあくまでも噂であって、陛下本人は鼻で笑っていたし、ルリがそれを望んでいるとも思っていない」


鼻で笑って……って。


『あんなのが俺の相手など、冗談じゃないな』とか言ってたんだろうな……。


「?微妙な顔をしてどうした?」


「や、今脳内に陛下にバカにされた映像が浮かんで……」 


騒ぎばかり起こすヤツだと思われてそうだし。


いや、実際そうなんだけどさ。


軽くヘコんでいると、ぷっと吹き出す声が聞こえた。


隣を見ると、レオンがぷるぷると震えている。


多分本物の陛下も、そういうことを言っていたに違いない。


「ほらね、私は王妃様の器じゃないもの」


トラブルメーカーを王妃になど、考えるものじゃないわよね。


胃が痛くなるだけで、ちっとも癒やされない嫁だなとか言いそうだし。


自分でも分かっているけれど、なんとなく釈然としない。


こんなことならお酒飲みながら話すべきだったかしら。


ヤケ酒になること間違いなしだけど。


「笑ってしまってすまない」


はあっとため息をつくと、優しい手に体を引かれ、ふわりとレオンに抱きしめられた。


「!?れ、レオン?」


「ふたりの仲を疑っていた訳ではないが、あまりにも心配がないので可笑しくなってしまった。それで、つい」


きゅっと少し力を込められ、頬がレオンの胸に密着する。


温かくて、いい匂い。


「ルリは、俺の恋人だ。変に面白がって俺にルリとの関係を聞いてきた連中には、ちゃんと説明しておいた」


説明って……一体何を言ったのか。


「ああ、それと。今の話の中でひとつだけ聞き捨てならないものがあったな」


「?リアムさんのことなら、もう私は何も思ってないよ?」


心当たりがなくて首を傾げると、にこりと至近距離で微笑まれる。


うっ……!これは、ちょっと怒っている時の顔だ。


「視察中にルリに迫ったという身の程知らずは誰だ?名前を聞いておこう」


「へ?あ……」


そういえば最初にちょろっと、リアムさんに助けてもらったんだって話したっけ。


「管理者候補だったなら、名前や経歴など、分かるのだろう?リレキショ、だったか。ルリは何も心配しなくて良い。名前だけ教えてくれ」


「あ、えーっと、それは……」


「ルリ?」


え、笑顔が恐いーーー!!


オリバーさん、ごめんなさい。


頑張って逃げて……。

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