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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第五章

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和解

リアムさんの話を聞いてまず思ったこと、それは。


「リアムさんって、ご家族の方に優しくしています?」


「……はい?」


家族は可愛がってくれたと言っていたし、聞いた感じでは、リアムさん本人も好ましく思っている気がする。


それなのに、遠慮して、自分から距離を置いて、それって家族の方たちは寂しくないのかな?


「……もっと頻繁に帰ってきて欲しいとは、よく言われますね」


ほら、絶対寂しいと思ってるって。


幼児期の教育の大切さに気付いてくれたことや、あまり好きじゃない私がいるのに、領地の未来を思って応募してくれたことは、とても嬉しい。


それに先程助けてくれたことも、感謝している。


だけど、ひとりで何でも判断して、あれこれやろうとするのは違うんじゃないかな。


「もっと家族に甘えれば良いのに。ひとりで抱え込まずに、相談することも大切だと思いますよ?」


「相談……考えたこともありませんでした」


まあ私もリーナちゃんに教えてもらったんだけどね。


レオンを頼って甘えれば良いって、その一言で心が軽くなった。


「そうやって、家族のことを思って遠慮するのはとても美徳だとは思いますが、ご家族の方からしたら、寂しいんじゃないかなと」


あともうひとつ。


これだけは譲れないから、ちゃんと言っておく。


「それと、陛下と紅緒ちゃんのことですが、私が色目を使っているとか、そんなことは絶っ対にありませんから!そう見えてしまうように振る舞ってしまった私にも落ち度はありますが、リアムさんの考えでは、陛下や紅緒ちゃんに対しても失礼ですよ」


陛下はそんな色目を使うような女に騙されるような方ではないし、紅緒ちゃんだって謙虚だけど泣き寝入りするような弱い人間じゃない。


事情も知らないのに、勝手に判断するのは良くない。


リアムさんは賢いからそうやって色んなことに目がいくし、頭も回るのだろうけれど、それっていつの間にか誤解が増えるだけだ。


「ついでに言わせてもらえば、公園の管理者になりたいのならば、もっと笑って下さい。そんな仏頂面じゃ、子どもたちが逃げちゃいます」


これは余計なお世話だと言われるかもしれないが、本当に直してほしい。


管理者の仕事は、遊具の点検などの環境を整備するだけではない。


子どもたちに寄り添って、よりよい環境を提供するためにはどうしたら良いかを考えることも大切なのだ。


そういう意味では、リアムさんの起用は難しい。


「ご家族ときちんと腹を割って話して、その眉間の皺を伸ばしてから、また来て下さい」


自分がどれだけ家族を、領地を大切に思っているか。


その場所を守るために、自分がやろうとしていることは何なのか。


応援してるよって、背中を押してもらってから、また。


「……随分と遠慮のない“癒やしの聖女様”ですね。まさか叱られるとは思ってもみませんでした」


「それこそ、誰かが勝手につけた評価(レッテル)だわ。私は私だもの」


ぷうっと頬を膨らませてそう言えば、ははっとリアムさんが笑った。


なんだ、ちゃんと笑えるんじゃない。


「そうでしたね。あなたを恋人にしたラピスラズリ第二騎士団長に、とても興味が湧きましたよ」


口元に手をあてて、どうやら笑いを抑えようとしているようだが、全然抑えきれていない。


そんな彼に、全く……とため息をつきながらも、少しだけ距離が近付けたような気がして、嬉しくなる。


――――今、なんだかすごくレオンに会いたくなっちゃったな。


いつも難しい顔ばかりしていたリアムさんの笑顔は、少しだけ幼くて、花が綻ぶように素敵だった。






それからしばらく何でもない話をして、リアムさんとは別れた。


もう少しして休暇が取れたら、領地に帰って家族と話してみますと約束をして。


「今回もまあ見事に落とされましたね。流石です」


ベンチでふうと一息ついていると、アルがやって来た。


そのにこにことした顔に対して、胡乱な目を向ける。


「アル、わざとでしょ」


「おや、言っている意味が分かりませんね」


また笑顔で誤魔化そうとしてるわね。


別に良いけど、結果的には良かったし。


何がというと、先程オリバーさんに絡まれた後、ちょっぴりあれ?って思ったのだ。


いつもなら、不穏な気配を察してすぐに助けてくれるアルが、どうして今日は……。


たぶん、リアムさんが私を気にかけてくれているのに気付いて、少しだけ様子を見ていたんじゃないかな。


「あと三秒遅かったら、私が直接手を下していたのですが。奴は運が良かったですね」


うわ、笑顔が黒い。こわいこわい!


「それと彼も。素直に話を聞いて、謝れる人物で良かったです」


うん、それには私も同意する。


最後なんて偉そうに説教までしてしまった私を、あんな風に笑ってくれた。


やっぱり、悪い人じゃなかったな。


「まあこれ以上難癖つけるようでしたら、私にも色々と考えがあったのですが」


「……考えるのも程々にね」


相変わらずアルは私に甘い。


こんな過保護にされて、私がいい気になって、本当に悪役聖女になってしまったらどうするのか。


「あなたは大丈夫ですよ。ラピスラズリ団長がいてくださるのですから」


凪いだ表情でアルが答える。


レオンがいてくれるから?うーん、確かにそれもそうだけど……。


「何でレオンだけ?それを言ったらアルもだし、ラピスラズリ家のみんなも、紅緒ちゃんや黄華さん、シーラ先生たち王宮のみんなだってそうじゃない?」


受け止めてくれる人、諌めてくれる人、怒ってくれる人、きっと反応は様々だろうけど。


私が悪役聖女になりかけても、みんなが引き戻してくれそう。


それなら、私は大丈夫かも。


「ふふっ、シーラ先生なんて頭(はた)いてきそうだわ。気をつけなくちゃ」


想像したら、笑ってしまう。


そうだ、夜にでもレオンに近々会えないか通信してみよう。


遅くまで仕事してないと良いな。


たくさん、話したいことがある。


そうそう、リアムさんに誤解されてしまうような行動をしたことも、謝らないと。


「そろそろ行こうか、アル」


ベンチから腰を上げると、秋風が吹いて、木々を揺らした。


「……あなたなら、大丈夫ですよ」


「え、何か言った?」


いえ別に、とアルが答える。


?何か話したように思ったんだけどな。


「涼しくなってきましたし、そろそろ時間ですね。戻りましょう」


そう言って微笑むアルと隣り合って、私はシトリン伯爵の元へと歩き出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 笑顔は大事です。子供に好かれる笑顔が自然と出るようになれば、多少性格が奇人変人だろうがある程度はカバー出来るのです(経験談) そしてリアム何気に危険が首の皮一枚のところまで迫っていた。
[一言] リアムという人は悪い人ではないのかもしれないけど、正直自分のやりたい事が迷走してるように見えました。瑠璃も言ってますが家族と話し合ってやりたいことを探すと良いと思います。 …正直公園の管理…
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