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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第五章

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見送り

廊下に出ると、ウィルさんと宰相様が待っていてくれた。


「悪かったな、レオン。急に呼び出して」


「いや、まあ仕方がないだろう」


ウィルさんの謝罪に、レオンはそう返すものの、どことなく落ち込んでいるように見えるのは、私だけだろうか。


いや、ウィルさんも何かを察したのかレオンにもう一度謝っている。


私は……うん、ちょっぴりほっとしたけど、やっぱり残念だった、かも。


残念だったって伝えたら、レオン、どんな顔するかな?


い、いやさすがにそれは恥ずかしすぎて言えないや。


「ルリ様も、こんな時間に申し訳ありませんでした」


「ええ。しかし、助かりました」


「あ、いえ。良かったです、お役に立てて」


申し訳無さそうに謝ってくるウィルさんと宰相様にそう答える。


それほど遅い時間でもないし、陛下が倒れたって聞いてびっくりしたけど、ゆっくり眠れば大丈夫そうだから良かった。


帰ろうとレオンが言ってくれたので、私達はここで失礼することにした。


帰りも二人乗り、だよね。


行きはまだ急いでたし、緊急事態だったからそんなに会話もしなかったけど……。


帰りは先程の比ではないくらい、レオンの体温を意識してしまいそうだ。


ううっ、私、耐えられるかしら……。


そんなことを考えながら、ウィルさんと宰相様に挨拶をし、私達はフレイヤの待つ厩舎へと向かった。





******


「陛下はすっかりおやすみのようですね」


「ええ、レオンとルリ様のおかげですね」


レオンハルトと瑠璃を見送った後、ウィルとシリルはカインの穏やかな寝顔を確認して、ほっと息をついた。


普段こんなに遅くまで仕事をしないウィルだが、ラピスラズリ邸に行くというレオンハルトの為に、今日は仕事を少しばかり引き受けていた。


それがまさか、倒れたカインを発見することになるとは……と、早めに気付いて良かったと思う一方で、慣れないことをして疲れたなとも思っていた。


「では、私もこれで失礼します」


早く片付けて帰ろう、とウィルがその場を去ろうとした時、ああ、とシリルから声をかけられた。


「そういえばあのふたりは恋仲だという噂でしたね。ですが、あなた方の会話を聞いていると……一線は、越えていらっしゃらない?」


宰相ともあろう人が、他人の色恋などに興味が?と意外に思い、眉を上げる。


しかし、友人のそのような話を気軽に口にするウィルではなかった。


「……さあ。しかし、想い合っているのは確かでしょうね」


当たり障りのない返答だが、しっかりと事実は伝える。


今は割と落ち着いているが、異性から人気のあるふたりだ。


変に横槍を入れたりはしないでほしいと、ウィルは思っていた。


「……成程。ああ、すみません呼び止めて。お疲れ様でした」


一瞬、シリルが冷たい目をしたように思えたが、すぐにその表情は笑顔に変わり、するりとウィルの脇を通り抜けて去っていった。


そのうしろ姿を見つめ、ウィルはため息をつく。


「嫌な予感がするな。……しばらく大人しかったが、狸親父ぶりは健在ということか」


気をつけろよレオン、と、ウィルは誰に聞かせるでもなく、独りごちた。


******






そして、遠征出発日。


この頃はずいぶん眠れるようになった陛下も、遠征に参加できることになったらしい。


目的地がそれほど遠くないし、もともと二泊三日の予定でそこまで過密スケジュールな行程でもないからと侍医さんからの許可も下りたらしい。


まあ陛下の回復力のすごさ故ってのもあるよね。


まだ21歳だっけ?


若いって素晴らしい。


紅緒ちゃんと黄華さんのことも心配だから、今日はこうして見送りに来たんだけど……。


やっぱり紅緒ちゃんと陛下はどこかよそよそしい。


まだ話してないんだろうな。


紅緒ちゃんに聞いたら、体調も悪そうだったし、この遠征が終わったら、時間をとって欲しいと言うつもりだそうだ。


陛下だってこのままで良いとは思っていないだろうから、ちゃんと話してくれると良いな。


……黄華さんの圧力のこともあるから、時間くらいは取ってくれるだろうし。


そうして、ふたりやルイスさんなど顔なじみの騎士さんと話をしていると、出立の時間になった。


「ふたりも、気をつけてね。何かあったら、黄華さんの通信魔法でいつでも呼んでね。紅緒ちゃんが転移魔法で迎えに来てくれれば、飛んでいくから」


「ありがとうございます。通信魔法って本当に便利ですわね」


「ポーションもあるから大丈夫だとは思うけど、もしもがあれば、迎えに来るわ。悪いけど瑠璃さん、お願いね」


その言葉に頷き返し、ちらりと陛下を見ると、アーサー君とヴァイオレットちゃんの頭を撫でている。


きっとポーション作りを頑張ったことを労っているのだろう。


お兄ちゃんに褒めてもらえて、ふたりも嬉しそうだ。


そう、ふたりの働きもありポーション研究は順調、十分な量を確保できた。


多少戦闘があって怪我人が出たとしても、前回のウィルさんのような重症でなければ回復できるはずだ。


調査が主な目的だと言うし、大丈夫だとは思うけど、やはり心配はしてしまう。


無事で帰って来てねと気持ちを込めて、紅緒ちゃんと黄華さんの手をきゅっと握り、見送る。


騎士さん達もそれほど固い顔をしてなかったし、大丈夫、だよね?


「大丈夫ですよ、陛下はお強いですし、アクアマリン副団長やルビー団長もついていらっしゃいますから」


隣に立つアルが優しく励ましてくれる。


「さあ、シトリン伯爵との打ち合わせの時間になりますよ。急ぎましょう」


うん、そうだよね。


私は私で、やらなくてはいけないことがある。


「さ、今日は面接ね!」


子どもたちのことを考えて働いてくれる、良い人が来てくれると良いな。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 宰相が悪の黒幕、はっきり分かんだね。 古来より続く物語のお約束パターンですな。 [一言] 瑠璃が面接官…大丈夫ですかね? 瑠璃はお人好しだからなあ。 人の悪意を見抜ける黄華さんが同席し…
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