表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

219/283

研究室

お披露目会から数日後。


「へぇ。アメジスト子爵家のクレア嬢といえばマナーやダンスの講師として名高い一方で、かなり厳しいって噂だけど、本当だったのね」


「そうですね、私達みたいな素人にはなかなか大変でした。でも、すごく熱心に指導して下さったんです。クレアさんじゃなかったら、間に合わなかったかもしれませんね。あ、アーサー殿下、それどうでした?」


「ええ、とても素敵に踊っていらっしゃいましたよ。一応作れましたが、味はダメですね。この薬草のポーションは美味しくありません。魔術師団長殿、効果はどうですか?」


「ちょっと待って下さいね。“鑑定”。…………うーん、効果はあるみたいですね。命を懸けた戦場でなら、騎士達も飲むでしょう。“良薬口に苦し”ってやつですよ」


そう、今日はポーション製作のお仕事に来ている。


ポーション研究部なる部所が魔術師団内に設置され、広い研究室まで与えられた。


希望者が殺到、と人気だったらしいこの部所で働く人々を見ると、みんな喜々としてポーション作りを行っている。


研究職って好きな人は好きだもんね。


実際に目の前でポーションを作っているアーサー君もどことなく楽しそうだ。


ちなみにアーサー君は、色々な薬草で効果の違いを測る研究をしている。


二種類、三種類でも変わるし、ブレンドする種類によっても相性の良し悪しがあるので、それを調べるのが楽しいらしい。


「私もここに入り浸りたいんだけどねぇ。それはダメだって陛下に釘刺されちゃったわ」


むう、と頬をふくらませるシーラ先生は、鑑定が使えるので時々こうして出来たポーションの効果を判定しに来てくれている。


魔術師団長さんだからね、その他のお仕事も頑張って下さい。


鑑定を使える人自体なかなかいないので、本当は常時いてほしいみたいなんだけど……なかなか難しい。


私も使えるけど、やっぱり常時は無理だしね。


そう考えると、なにげに私の周りってすごい人が多いよね。


紅緒ちゃんや黄華さんは言うまでもないが、第二騎士団長のレオンも複数の属性魔法が使えるし、リーナちゃんやアルだって稀少な光魔法が使える。


ちゃんと聞いたことはないけど、シーラ先生だって鑑定が使えるし、魔術師団長だからきっと複数の属性持ちで魔力も高いはずだ。


アーサー君やヴァイオレットちゃんは魔力が低いと嘆いていたけれど、それだって平均くらいだっていう話だし、周りにいるのがすごい人ばっかりでそう思い込んじゃったんだろうなぁ。


私達はこの世界に来たときから、周りがそんな人ばっかりだったから、麻痺しちゃってるけど。


「あれ?そういえばヴァイオレット殿下はどこにいるんですか?」


「ああ、彼女は遠征のためのポーション作りをしているわ。また近いうちに行われるから」


キョロキョロとヴァイオレットちゃんの姿を探すと、シーラ先生が教えてくれた。


そうか、お仕事頑張っているんだな。


それにしてもまた遠征か……。


「それって、また第二と第三が合同で?」


「ええ、今回はルリはお留守番みたいだけどね。ああ、それと今回は陛下も行くみたいね」


そうなんだ……。


レオンやイーサンさんはまた行くのかな?


それに今回は陛下もってことだけど、紅緒ちゃんは行くのかな?


今度はあんまり危険なことが起きないと良いな……。


色々なことをぐるぐると考えていると、大丈夫よとシーラ先生が励ましてくれた。


「今回は調査が主な目的だから、前回のようなことにはならないと思うわ。だから陛下も一緒なんだもの」


そっか、明らかに危険な遠征だったら、国王である陛下が一緒に行くことはできないもんね。


だけど、だからと言って必ずしも無事に帰って来れるとも限らない。


“絶対”なんて、ないのだから。


そして、少しでもその不安を減らすために、私が出来ることは。


「では、私も出来るだけたくさんポーション作りますね。効果の高いものも」


私が作れば、回復量が増える。


「ええ、お願いね。ポーションがあれば、帰りを待つ騎士たちの家族も、少しは気が楽になるだろうから」


シーラ先生の言葉に、私はしっかりと頷く。


そのためにポーションを作ることにしたのだから。


「僕も、それまでに出来るだけ高い効果のポーションが作れる組み合わせを探しますね」


アーサー君の口からも、頼もしい言葉が出てきた。


十日後に行われるという遠征のために、私達はその日、ポーション作りに勤しんだのだった。






「では、叔父上は遠征に参加されないのですか?」


「ああ、今回は責任者として第三の団長であるイーサンと、第二(うち)からは、ウィルが行くことになった。あとは、ルイス=アメジストもメンバーに入っていたな。ああ、魔術師団からは本人の強い希望でカルロス=カーネリアンも参加するらしい。」


その日の夜、次の日が公休日ということもあり、レオンがラピスラズリ邸に泊まりに来てくれた。


そうか、今回はレオンもお留守番なんだ。


そしてメンバーの名前を聞くと、黄華さんの顔が思い浮かぶ。


多分そうだろうなぁと思って聞いてみれば、やはり紅緒ちゃんと黄華さんのふたりも参加するらしい。


うーん、黄華さんをめぐって色々ありそう。


特にカルロスさん、本人の強い希望って、絶対私情入ってるよね。


あとは陛下と紅緒ちゃんだけど……。


「赤の聖女様と話したかどうか?いや、そういった話は聞いていないが」


レオンに聞いてみたが、まだ話していないのか、知らないだけなのか、首を振られてしまった。


「ああ、黄の聖女様と話したということは聞いたな。何やら苦い顔をしていたが……」


あ、黄華さんは早速圧力かけたみたい。


「そ、そうなんだ〜?なんでだろうね?」


思い当たる節があるものの、レオンには話せない私なのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ