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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第五章

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誰を選ぶ

******


「絶対ルリ様だわ!」


「いいえ!オウカ様よ!」


「あら、ベニオ様に決まってるわ!」


聖女達の仕度が終わった後、侍女達の集まる休憩室では、自分達の手掛けた聖女が一番綺麗なはずだと競り合っていた。


「ドレス姿のルリ様を見ていないからそんなことが言えるのだわ!しかも気さくで料理上手で、回復魔法まで使える、まさしく聖女様!ラピスラズリ団長との噂も素敵ですわ!!」


「あなたこそ、オウカ様のあの洗練な姿を見てないじゃない!それにオウカ様だって、聞き上手で王宮一の相談役とまで言われていて、密かに想いを寄せる文官も多いと専らの噂よ!」


「いいえ、ベニオ様のあの可愛らしさったら……。ドレスのデザイナーはさすがだわ!訓練の際は凛々しくて、サッパリした性格でいらっしゃるのに、時折お見せになる照れた顔の可愛いこと……!ギャップ萌え、ですわ!!」


「いいえ!ルリ様だって……」


やいのやいのと侍女たちが自分達の推しの聖女を褒めちぎっている。


その様子を、瑠璃の仕度係だったサラはじっと見つめていた。


人間、目立つ存在、つまりアイドル的な存在がいると、必ず自分好みの者を応援してしまうものである。


例によって聖女達もそのような存在となり、所謂〇〇派、〇〇推し、というものができてしまっているのだ。


侍女の中では、三人共に対して好意を持っているものが多いが、その中でも特に〇〇様が!と推しを作っているらしい。


ちなみに今回の聖女達の仕度役、数多くの希望者が出て、それはもう決定に苦労したとは女官長の言だ。


「サラ様は全員のお姿を拝見したのですよね?いかがでした!?」


「あら、サラ様はルリ様推しですもの!公平ではありませんわ!」


矛先が自分に向いたことに、サラは苦笑する。


確かに自分は三人揃った姿を見ている。


ただ、やはりルリ様が一番だったとしか言えない。


なぜなら自分もまた、ルリ様を推している一人なのだから。


「そうですわね……。ふふ、やはりルリ様が一番としか。私ったら、またルリ様への好感度が上がってしまいましたわ」


仕度を始めてから会場へと送り出すまでの、瑠璃の姿を思い出して、サラは笑みを零した。


アルフレッドやウィル、それにルイスといった男性陣に褒められた時と、紅緒やクレアに褒められた時との反応に差がありすぎて、思わず吹き出してしまいそうになった。


普通、女性に褒められてもお礼を言う程度で、見目麗しい騎士達に褒められると頬を染めるものだが、彼女は逆だった。


それなのに恋人と噂されているレオンハルトからの褒め言葉には恥じらうというのもまた、微笑ましく思う。


それと驚いたのは、アーサーやヴァイオレットと思っていた以上に親しげだったことだ。


ハーブティーなどを差し入れる時点で完全に特別扱いなのだが、それも半ば信じられずにいた。


しかし、実際の様子を見てみれば、まだ幼く気難しいと評判のふたりが心を開いているのが良く分かった。


そして何よりも衝撃だったのが、カインとの関係だ。


軽口を言っても咎められることもなく、互いに自然体で話している。


瑠璃が一国の王であるカインを後回しにして、アーサーとヴァイオレットを優先したことも驚きである。


とまあ、男性や権力者に媚びることなく、それぞれを一人の人間として接している瑠璃を、サラはまた好ましく思ってしまったのだ。


(ふふ、このことをみんなに言ったらどうなるかしら?)


目の前で繰り広げられている舌戦を止め、新たな話題を提供すべく、サラは口を開いたのだった。







「いや、聖女様方はずいぶんこの国に馴染んで下さっているようですな」


「ああ、それに魔物討伐や教育推進、ポーションの開発など、国のためにとてもよく働いて下さっている」


「聖女様々ですなぁ」


はははと、夜会会場ではそこかしこで聖女達の噂話が飛び交っていた。


女性・男性ともに好感を持つ者が多く、聖女様がいらっしゃればこの国も安泰だとの声も上がっている。


「その上、お三方とも美しく、お若い。確か未婚でいらっしゃるとか?」


「ああ、これは……と思う者も多いのではないか?」


そう発言した男は、男爵という低位貴族の地位にいるため、自分には関係のない話だがと軽い気持ちでそう発言した。


しかし、周囲にいた高位貴族達は、その言葉に敏感に反応した。


「まあ、まずは陛下が先ですか。聖女様のどなたかを、という話になるでしょうな」


「国を思えば、そうなるでしょうな」


貴族たちは挨拶に応じているこの国の国王陛下を見やった。


後継者や結婚どころか、婚約者すらいない若い国王。


優れた魔力や異世界の知識を持つ聖女をその隣に、と考えるのは自然な事だった。


「すると、どなたを?」


「まあそうだな、私は――――様が良いと思うが……」


「ああ、あの国王の妃となるなら、彼女が最適かもしれませんな」


「ふーむ、私ならば……」


いつしか、会場での話題の中心は若き国王の伴侶はどの聖女になるか、というものになっていた。


「さて。国のために、カイン陛下は誰を選びますか?」


ひとりの男は、高い位置で顔を顰めて座る若き国王を見つめ、そう呟いたのだった。


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