プロローグ2
「はぁ…今日もお疲れ様、私!」
仕事を終え帰宅し、夕食を前にして呑むこの一杯は、最高の贅沢だ。
和泉 瑠璃、26歳。
短大を卒業し、保育教諭として就職。
可愛いだけじゃない子ども達の成長を伸ばすために頑張ってきて、六年目。
やっと一人前らしくなってきたと先輩達に認めてもらえるようになった。
さてそろそろ自分の子どもの事も考えようね?って親には言われるけども。
…出来るものなら産みたいさ、そりゃ。
でもね、その前に恋愛して、結婚しなきゃでしょ?
特に偏見はないつもりだけど、自分は順序踏んで出産までいきたい派だ。
でもね?この業界、持ち帰りの仕事なんて当たり前なのよ。
行事前なんて特に。
そしてね?一年のうち、行事ってどれくらいあると思います?
…何もない暇な期間なんて、ほとんど無い訳よ。
独り暮らししてれば、家事もしなくちゃいけない訳で。
新人だから、今は生活する事と仕事に集中!…って思ってたら、いつの間にかアラサーです。
みんないつ恋愛してるんだろう?
「ま、まあだいぶ仕事にも余裕持てるようになったし、これからよね、これから!」
そう誰に言うでもなく、言い訳を溢してアルコールの低い缶チューハイを飲む。
そんなにお酒に強いわけじゃないんだけどね。
独り暮らしで料理にハマったら、それに合わせて、少量だけ呑むのが好きになったのだ。
「今日は作って冷凍しておいた餃子!そろそろ焼けたかな~?」
ワクワクしながらフライパンの蓋を開く。
と、突然足元から強い光が発せられた。
「えっ!?な、何!?」
更に光は広がり、私の身体を包み込む。
そのあまりの眩しさに、目をつぶると蓋を落としてしまった。
しまった、蓋が足元に!
だが、予想していた熱さが感じられなかったことを不思議に思い、恐る恐る目を開くと、眩い光は消えていた。
ーーーというか、目の前にあった餃子も、フライパンも、何ならキッチンすら、消えていた。
そして周りを見渡すと
「…ここ、何処?」
私はこの時まだ、自分が異世界転移したことなんて、気付いてなかった。