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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第四章

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祝福の聖女

「くっ……」


「おいおいこりゃあ……ちょっとヤベェな」


先頭に立つ団長ふたりの手一杯な姿に、騎士達にも焦りが見え始めた。


何しろ戦闘となれば我先にと飛び出し、指示を出しながらも次々と敵を屠っていく団長達だ。


いつもなら余裕すら見えるふたりの、そんな姿にまさかという気持ちがチラついてしまうのも、仕方がなかった。


それほどまでに、魔物はダークウルフやゴーレム、サイクロプスなど高ランクのものばかりで、その上数も多い。


精鋭と言われる騎士団の騎士達でも、一人で倒せるのは高くてCからBランク。


しかし、今対峙しているのはBからAランクの魔物達だ。


数体ならまだしも、この数を相手にするのはかなり厳しい。


そして、恐らく奥の()()はSS、いや、ひょっとしたらSSSランクに相当するかもしれない。


オルトロス、蛇を背負う双頭の魔犬。


そんな魔物がいるということは知識として知っていたが、実際に対峙するのはレオンハルトやイーサン、ウィル達も初めてだった。


(周りの魔物だけでも手こずっているのに、情報のないアイツを何とか出来るか?)


レオンハルトはちらりと戦いの合間にオルトロスを見たが、なかなかに禍々しい姿をしている。


初めての、しかもかなりの強敵を相手に、どこまで被害を最小限に抑えられるか。


そして体力を消耗した後で、ヤツを仕留められるだろうか。


そんな疑念が頭を掠める。


(とりあえず、まずはこいつらを何とかしないとな)


余計な戸惑いは騎士達の不安を誘うだけだ、今は目の前の敵に集中しなければと思い直し、レオンハルトはまた一体、ダークウルフを斬り倒した。







一方、後方では紅緒が複数の攻撃魔法を繰り出し、騎士達を助けていた。


「もうっ!次から次へとキリがないわね!それに奥のアイツ、あんなの初めて見たし講義でも習ってないんだけど!?」


「そうですね。周りの敵が落ち着いたら、ふたりで鑑定をかけてみましょう。恐らく珍しい魔物のはずです。耐性や弱点を探れば、戦いやすくなるでしょうから」


黄華もまた、騎士達の動きを見ながら支援魔法をかけていた。


随分魔物の数は減ってきた。


しかし、ある程度節約している自分はともかく、次々に攻撃魔法を繰り出している紅緒や、魔術師達のMP消費量が心配になる。


(最後までもつか……心配ですね)


奥で他の魔物に指示を出しているように見えるオルトロスを見て、黄華は眉根を寄せる。


随分手下の数が減ってきたのならば、体力と魔力、そして気力が残っているうちに、あいつを狙ったほうが良いのではないだろうか?


「このままでは埒が明きませんね。そろそろ親玉を狙うべきでは?」


「そうだよねー。正直、オレもちょっとMPやばい」


ウィルやカルロスも同じことを考えていたようだ。


「では、私と紅緒ちゃんであいつに鑑定をかけてみます。しばらく集中できるように、護衛をお願いしてもよろしいですか?」


勿論ですとリオやアルバート、ウィルやカルロスも頷く。


そうして守りを固めてもらったのを確認すると、ふたりでオルトロスを鑑定する。


「――――あいつの耐性は闇と火ね。かなり物理攻撃力が高いみたいよ」


「弱点は氷ですね。水属性を得意とする第二の団長さんが相手をされると良いかと。あとは、紅緒ちゃんも水属性のレベルが高かったですよね?第三の団長さんの剣に魔力をまとわせると良いのではないでしょうか」


氷魔法を使えるのは、水属性のレベルが高い者だけ。


使える人間は限られている。


(あと弱点に“光”も出ていますが……。以前紅緒ちゃんが言っていた光の攻撃魔法、周りに被害なく使える自信は無いですね……)


多少の練習はしたものの、いきなり実践で使える気はしない。


不確定なことはするべきでないと、その情報は黙っておくことにした。


「レオン!このままではジリ貧だ。ヤツを狙おう。耐性は闇と火、弱点は氷、そして物理攻撃に気を付けろ!ルビー団長も、ベニオ様が補助して下さるので、こちらにお願いします!」


「そうだな、随分数も減った。おい、イーサン行くぞ」


「ああ、さっさとアイツをやるに限るな。お前等、ここは任せたぞ!」


周りの魔物は他の騎士達に任せ、レオンハルトとイーサンはオルトロスへと向かう。


ふたりが自分に向かってくるのに気付いたオルトロスは、ここで初めて動きを見せた。


「グゥォォーーーーッ!!」


咆哮すると、勢いよく飛び掛かってきた。


氷水晶(アイスクリスタル)!」


ふたりは素早くうしろに飛び退くと、レオンハルトの詠唱でオルトロスの着地点に氷の華が咲く。


そして一瞬動きが止まったのを見逃さずに、紅緒がイーサンの剣に氷の魔力をまとわせた。


「氷剣乱舞」


「こいつはすげぇ。嬢ちゃん、やるな!」


「だから嬢ちゃんって呼ぶな!!」


軽口を叩きながらも、内心でイーサンは感心していた。


自身の大剣にまとう冷気は、氷魔法を得意とするレオンハルトに勝るとも劣らない。


聖女の名は伊達ではないなと笑った。


そしてオルトロスに重い一撃をくらわせる。


それに続くようにレオンハルトもうしろに周り込み、蛇の絡み合う背中を狙う。


それを見て、黄華はレオンハルトとイーサンに向かって呪文を唱えた。


攻撃力上昇(ブレイブアップ)


タイミング良くかけられた魔法により、ふたりの攻撃がオルトロスに重く入る。


苦痛の雄叫びを上げたオルトロスは、まずイーサンにカウンターを仕掛けた。


防御壁(バリア)


それを見てすかさず黄華が防御魔法を唱える。


思うように攻撃できずにイライラした様子のオルトロスに、紅緒やレオンハルトも氷魔法の詠唱に入る。


魔法攻撃力(マジカルブレイブ)上昇(アップ)


そこへまた黄華が魔法をかける。


「すごい……!攻撃力を上げる魔法なんて初めて見た……」


「リオ、しっかりオウカ様を守れ。今この場の最重要人物は間違いなくあの方だ」


黄華の冴えわたる支援魔法に、リオは感嘆の声を上げ、ウィルは再度気を引き締める。


「はは、間違いなくオウカは“聖女”だね」


そしてまた、カルロスも称賛の言葉を贈る。


周りで魔物と戦う騎士達もまた、その金の瞳の聖女の輝きに目を奪われるのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 黄色さんのバフまじすげぇ。 紅ちゃんは特攻で! 基本的には更に後方に回復術師がいて、つねに回復させるのが理想かな?
2021/05/17 06:26 退会済み
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