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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第四章

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感謝

さて、まずはシシ肉?ボア肉?の下処理だ。


塩水で数回洗い、酒に漬け込んでおく。


血抜きは恐らく完璧。


でも、この処理をきちんとすればさらに臭みを取ることができる。


騎士さん達が手伝ってくれたので、量は多いがすぐに処理を終えることができた。


さて、漬け込んでいる間に唐揚げの下準備をしよう。


こちらも一口サイズ……よりも男性向けに大きめに切っておき、塩や酒、醤油、ニンニクに生姜を加えて漬け込む。


こちらは揚げたてを振る舞えるように、夕食前までこのままにしておく。


味もしっかり馴染んで美味しくなるはずだ。


次に野菜を適度な大きさに切る。


やっぱりシシ肉ときたらぼたん鍋だよね!


具沢山にしたいところだけど、野菜は節約して鍋と言うより味噌汁に近いものにする。


出汁が出て、汁だけでも十分美味しいはずだしね。


大鍋にたっぷりのお湯を沸かして控えめだけど野菜を煮込む。


あとはみんなが帰ってくる一時間前くらいに、ボア肉も入れて灰汁を取り、味噌を溶かせば完成だ。


あ、そうだ。


念の為、処理後のボア肉を鑑定してみようかな。


処理が上手くいってるか気になるし。


「鑑定」


************

*ビッグボアの塊肉*


Cランク魔物、ビッグボアの処理後の肉。


食用可。臭み微量あり。


猪肉風味で弾力があり、煮込むほど美味しくなる。


効果:HP回復中程度


************


よし、臭みは微量になってるから美味しくなりそう!


それに検証も成功のようだ。


そんな私の様子を見て、アルもにこりと笑った。


「その顔は、どうやら上手くいったようですね」


「うん!処理は上手くいったみたい。まあ、またやっちゃった感はあるけど……でも、絶対これからの為になるしね」


「勿論ですよ。貴女は突拍子もないことをさらりとやってのけるので、驚かされてばかりですが、いつだって誰かのためにやっているし、結果そうなっていることも、ちゃんと分かっています」


まあ、護衛としては少しは自重して欲しいと思いますがね、と言われてしまった。


うん、私もアルにいつも苦労かけてるのは分かってるんだけどね?


……だから、少しでも力になりたいって思うんだけどね。


エリーさんのこと、本当は聞きたい。


でも、下手に首を突っ込んで良い問題じゃないことも分かってる。


それなら、私は少しでもアルを笑顔にできるように、努力したい。


「私も、いつもアルがたくさん助けてくれてること、ちゃんと分かってるよ」


それに、いつも私のことを考えて動いてくれていることも。


「ありがとう。アルが私の護衛騎士で良かった」


心を込めて感謝を伝えれば、アルも笑顔を返してくれた。


その微笑みは、いつもより少しだけ優しくて、嬉しそうだったのは、気のせいだろうか。






「あ、帰って来た!みんな、お疲れ様ー!」


夕方。日が落ち始め、いつも通り森が薄暗くなってきた頃に、続々とみんなが帰って来た。


今日も見た感じ、多少の傷はあるものの、重症な様子の人もいなかったし、順調に進んでいるみたい。


さて、じゃあ始めますか!


ぼたん鍋は一時間程前からしっかり煮込んでいる。


ちょっと味見してみたけど、……控えめに言って最高。


臭みも全然気にならないし、出汁がしっかり出ていてすごく美味しかった。


魔物なんてきっと誰も思わないだろう。


ぜひ紅緒ちゃんと黄華さんにも食べてもらいたいものだ。


ということで、唐揚げも食べずにはいられない出来にしないとね!


まずは下味をつけておいた鶏……じゃなかった、バード肉に片栗粉をまぶす。


ぽってりとして、表面がお肉の水分でベタつくくらいでOKだ。


薄力粉はその後、しっかりまとわせる。


今回は量が多いので難しいけど、本当は一切れずつしっかり薄力粉をつけた方が良いんだって。


私は面倒くさいので、いつもポリ袋に肉と粉類をざーっと入れて揉み込んでいたが……やっぱり丁寧にするとカリカリ度は増すだろう。


アルやお手伝いしてくれる騎士さんにも教えて、この工程をやってもらう。


さあ、では私は揚げていこうかな!


温めておいた油にそっとバード肉を入れると、ジュワッと良い音がしてきた。


うーん、この音、食欲出てくるわぁ!


時々ひっくり返して、2分程揚げる。


揚がったらバットに出して、しばらく予熱で火を通す。


その間に次のバード肉を揚げる。


そう!今日は二度揚げしちゃいますよ〜。


大量の肉が揚がったら、もう一度油の中へ投入!


勢いよく揚がる音がまた、期待を膨らませるわよね〜。


今日は大きめサイズなので4、5分程揚げると良いかな?


「瑠璃さん、ただいま。今日は……やったぁ!唐揚げだ!」


「まあ、美味しそうな匂いと音ですねぇ。お腹ペコペコです」


「紅緒ちゃん、黄華さん、おかえりなさい!もうすぐ出来ますからね」


楽しみー!とワクワク顔の二人だが、ここで事実を伝えなくてはいけない。


「あら?でもまだそんなにお肉残っていたんですの?鶏肉なんてあったかしら……?」


はい、黄華さんよくお気付きで。


「えーっと、今日のお肉は……ごめんね、魔物です」


「「……………」」


「「えええええーーー!?」」


だってお肉もう少ないし。


てへ、と首を傾げてみたが、多分全然かわいくないので効果はないだろう。


それでもぜひこの味を食べてもらいたいので、説得にかかる。


「で、でもすごく美味しいんだよ?ほら、調理後だから見た目は普通の唐揚げと変わらないし。一口だけでも、どうかな?どうしても無理なら、パックのチキンで照り焼きチキンサンド作るから」


難しい顔を見合わせるふたりを、ドキドキしながら見つめる。


しばらく考えていたふたりだが、意を決したように紅緒ちゃんが口を開く。


「……まあ、確かに見た目は普通だし、食べてみようかな」


「そうですね、せっかく作って頂いたし、それに瑠璃さんが作ったものなら美味しいはずですものね」


や、やったーー!


「ありがとう!あ、無理だったら遠慮なく言ってね!代わりのもの作るから」


よし、じゃあ盛り付けてみんなで食べましょう!


「みんな、ご飯できましたよ!」


今日も一日、お疲れ様です。

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