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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第四章

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彼の事情

森に着くと、入口付近にギースさんたちの姿が見えた。


今のところ異状はなく、魔物達も出て来ていないとのことだ。


しかしイーサンさんは、恐らく森の奥深くに強い個体と、おびただしい数の魔物がいるはずだと言う。


町に来たのは比較的弱い魔物だったらしく、その魔物たちでは、イーサンさんたち第三騎士団に歯が立たなかったため、奥で力を蓄えているのではないかとのことだ。


もしそれが本当なら、奥に進むにつれて強い魔物が出るようになる、ということだろう。 


短い期間でも回復魔法の特訓をしておいて良かったと思う。


もしかしたら、この力を多用することになるかもしれない。


使わずに済むならそれが一番良い。


だけど、心積もりはしておいた方が良さそうだ。


私はもう一度気を引き締め、森へと足を踏み入れた。






まずは昨日レオン達が見つけてくれた開けた場所を目指す。


私のような回復役の人が待機したり、怪我人が休むところだ。


そこを中心にして、隊ごとに分かれて森の散策と魔物の討伐を行う。


そして少しずつ奥へと進むのだ。


今まで起きたスタンピードも、奥にボスのような強い個体がいたらしいので、慎重に進むつもりだと言われた。


一体、森の奥では何が起こっているのだろう。


「意外と静かですね。昨日粗方倒していたとは言え、もう少し魔物に襲われるかと思っていました」


私が考え込んでいると、アルが不思議そうにそう言った。


「本当ね。いくら私達が後方にいるとは言え、もっと魔物を見かけても良さそうだけど……」


「恐らく聖女様の力かと。昨日も、赤と黄のおふたりがいた隊は、ほとんど魔物と遭遇しませんでしたよ」


近くにいたウィルさんが答えてくれる。


レオンやイーサンさんは最前列で指揮を取っているため、副団長のウィルさんが後方に配置されているようだ。


「実際、貴女たちが召喚された後は、国中で魔物がかなり減りましたからね。その力が作用しているのではないかと」


そういえばそんなこと言ってたっけ。


理由の一つとして、そのために喚ばれたんだったよね。


「ただ、油断しないで下さいね。確かに我々後方や今向かっている拠点とする場所は、魔物が少ないでしょうが、だからといって必ずしも出ないとは限らない」


「その時は私が必ずお守りしますよ」


アルがすかさず答える。


ウィルさん相手に、やはり少し棘があるように聞こえるのは、気のせいではないだろう。


「ああ、頼んだ」


対してウィルさんは、以前とは違いかなり冷静だ。


言われなくても、というアルの態度に苦笑を零している。


うーん、これはやっぱりふたりの間に何かあったんだろうなぁ。


少しだけギスギスした空気の中、私達は歩みを進めた。







「ああ。あのふたりのことは、そっとしておいた方が良い」


「やっぱり、何かあるんだね」


拠点地に着いた私達は、丁度昼時だったため、簡単な昼食をとっていた。


元々昼食の習慣がない世界なので、普段はお昼は少しつまむくらいらしいんだけど、これから戦闘になるから、ある程度しっかりしたものを食べてもらいたいと思ったのだ。


レオンと隣り合い、具沢山のスープとパンを食べながら先程のやり取りを話すと、難しい顔をされてしまった。


チラリと少し離れたところで昼食をとるふたりを交互に見る。


こうして見ると、普段と変わらないけれど……。


「まあ、ルリには知っておいてもらった方が良いかもしれないな。……実は、アルフレッドの異母姉は、ウィルの婚約者だったんだ」


「え!?」


まさかの事実に、思わず声が漏れた。


「小声で頼む。知っている者が多いとは言え、あまり聞かれたくない話だからな」


こくこくと頷く。


それからレオンはつらつらと彼らの事情を話してくれた。


アルの異母姉は、エリーさんといった。


()()()と言うのは、もう亡くなっているから。


「サファイア家は子沢山なんだ。アルフレッドも三男だったか?他に、下に男が二人、女は四人いる。まあ、父親がかなり女性に人気がある人物でな」


どうやら奥様が複数いるらしい。


それでもお父様はどの奥様や子どもにも優しく、特にわだかまりもなく大家族で仲良くしているらしい。


……現代日本の考えだとなかなか受け入れられない話だけれど、仲良くしているならまあ、良いのかもしれない。


エリーさんのお母様は平民出身で、そのこともあり、公爵家ではかなり控えめにしている。


その娘のエリーさんもあまり公爵令嬢らしくはなく、なんと魔術師団に所属していたようだ。


今回のように騎士団と一緒に仕事することも多く、ふたりは出会った。


そんな時に、婚約の話が持ち上がった。


「母親の身分が低いから、公爵家からアクアマリン伯爵家に嫁ぐことに何ら反対はなかった。互いに恋愛感情を持っていたかは分からないが、仲は良かったし、ふたりも納得していたんだ」


芯の強い、穏やかな人だったという。


「でも、どうしてエリーさんは亡くなったの?」


「……一応、殉職ということになる」


殉職――――仕事上での事故死ってこと?


思いがけない事実に、私は口を開いたまま、何も言えなくなってしまった。

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