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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第四章

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聖女会議8

リーナちゃんとそんなやり取りをしてから数日後。


私は今日も王宮にいた。


最近めっきり王宮に通う日が増えているのは、気のせいではないだろう。


公園事業も順調だし、魔法の講義や訓練に混ざっての実技もずいぶん成長が見られる。


元々聖属性魔法のレベルはMAXだったんだけど、やっぱり練度とかタイミングとかで、実践で使えるかが変わってくる。


今のところ回復魔法は治療(ヒール)しか使ってないけど、随分発動までの時間も短縮できるようになってきた。


「んーここだけの話だけど、瑠璃さんなら範囲回復魔法も使えそうよね」


のんびりとお茶を口にしながら、紅緒ちゃんが爆弾を投下した。


「……ちょっと待って、聞かなかったことにしても良い?」


毎度お馴染みこの流れ、今日は交流会から始まるんですか?






どうやら陛下の配慮らしく、訓練や講義の合間に時々私達聖女の交流会も挟んでもらっている。


この女子会とも言える時間は、忙しい毎日のちょっとした癒やしだ。


それなのに、また何やら陛下やアルにため息をつかれそうな、紅緒ちゃんのこの発言。


「シーラ先生に聞かれたら、喜々として練習させられそうなんだけど……」


「うん、そうよね。だから私達だけの時に言ったの。ほら、討伐に出ることになったら、その……“もしも”があるかもしれないじゃない?」


「ああ、なるほど」


紅緒ちゃんの言いたいことが分かったのだろう、黄華さんが頷く。


「今までは軽いケガとかしか見てこなかったけど、ひょっとしたらたくさんの魔物に囲まれて……なんて場面に遭遇する可能性もあるもの」


紅緒ちゃんの心配はもっともだ。


確かにそうなった時、一人ひとり治療(ヒール)をかけていくよりも、たくさんの人を一度に回復できる方が効率が良い。


しかし、それではますます私のチートが浮き彫りになりそうだ。


まだ出来るかどうか分からないが、治癒(キュア)の件と同じく、必要に迫られるまでは秘密にしておこう。


「うん、念の為練習しておくよ」


私が了解したので、紅緒ちゃんがほっとした表情を見せた。


それからも話を聞いていくと、紅緒ちゃんは元の世界でゲームが好きだったから、それを生かして色んな魔法を真似てるんだって。


だから紅緒ちゃんが操る攻撃魔法は多種多様。


かなり討伐で期待されているらしい。


因みにふたりも私と同じで、頭の中に呪文が思い浮かぶタイプなんだって。


私だけじゃなくて良かった、と思う。


「ゲームの知識があると、魔法もイメージしやすいから、確かに良いですね。因みに私が出来そうな魔法はありますか?効果が高いとは言え、私が使える魔法は、この国の魔術師さんに教えてもらったものばかりなので、あまり多くないんですよ」


おお、黄華さんも新しい魔法を覚えるのに乗り気だ。


期待の眼差しで見れば、そうねえ……と紅緒ちゃんも考える。


今黄華さんがよく使っているのは、いわゆるバリア系の魔法。


物理と魔法、両方だ。


「支援系の魔法なら、攻撃力や魔法攻撃力を上げたり、物理防御力や魔法防御力を上げたりかな。でもそれは魔法よりも装備品で上げ下げするゲームが多いからなぁ。魔法でできるかは分からないわ」


「攻撃力と防御力の上昇、ですか」


黄華さんが考え込む。


うーん、魔法って、イメージが大切だって教わったけど、能力値の上昇ってイメージしにくいよね。


バリアならイメージしやすいけど、能力値は目に見えないものだから、尚更。


「あ、光属性魔法と言えば、光線の攻撃魔法もあるわよ。こう、レーザービームみたいなのが空から降ってくる感じ?」


閃いたとばかりに紅緒ちゃんが提案する。


そ、それはかなり強そうかも。


空からって……天罰みたい。


「へえ。まあ、色々考えてやってみます」


黄華さんがにこりと微笑む。


……なんか黄華さんならやりそう。


その面白そうな笑みがちょっぴり怖く思ったのは、私だけだろうか。


やれやれと思いながらも、黄華さんが前向きな様子を見せてくれたのに安心したのだった。






交流会の帰り道。


いつものようにアルと廊下を歩いていると、庭園の前を通ったところで、ひとりの女性の姿が目に入った。


日陰のベンチに座っているが、その顔色が少し悪い気がする。


アルに目線を配ると頷いてくれたので、そっと女性の方へと歩み寄った。


「大丈夫ですか?」


声をかけると女性は顔を上げ、頼りなさげに微笑まれた。


視線を下げると、それほど目立たないが、お腹がふっくらとしている。


どうやら妊婦さんのようだ。


「大丈夫です、少し疲れてしまったみたいで。しばらく休めば楽になりますから」


そうは言うが、やはり顔色が良くない。


「あの、少し横になっては?私の膝で良ければ、使って下さい」


女性は戸惑いを見せたが、半ば強引に横になってもらう。


膝枕の形になり、少し照れるがこれも人助けだ。


「ゆっくり、目を閉じて力を抜いて下さいね」


そうして、子守唄を口ずさむ。


そう、リーナちゃんを寝かしつける際によく歌っていたやつだ。


“癒やしの子守唄”のスキルなら、少しでも女性が楽になるのではと思ったのだ。


しばらくすると、女性の体から力が抜けたのが分かる。


「眠りましたか?」


「うん、しばらくこうしてあげても良いかな?」


アルがそっと顔を覗いてきたのに、そう答える。


今日はこれから何の予定も無いので、少しなら大丈夫だろう。


それにしても、妊婦さんというのは本当に大変だ。


自分は体験していないものの、先輩の先生が何人か妊婦さんとして働いているのを見てきたので、その大変さと苦労は目にしている。


書記官の服装をしているこの女性も、働く妊婦さんなんだろうな。


「お疲れ様です」


そろりとそのお腹を撫でて、赤ちゃんが元気に産まれますようにと願いを込める。


恐らく休憩に抜けて来たのでしょうとアルが言うので、あまり長く寝かせてあげない方が良いかもしれないと思い至る。


多分、妊娠してからも仕事をしている人は、その仕事に誇りを持っているだろうから。


その代わりと言ってはなんだが、こっそり治癒(キュア)をかけておいた。


アルにも周囲を警戒してもらったので、誰にも見られていないはず。


そうして20分程して、私達は女性を起こすことにした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 範囲回復、これは欲しいですね。1秒でも時間を争う戦場では大変役に立つと思います。 でも敵と味方の区別をつけて回復させるのは難しそうです… [気になる点] 範囲回復も欲しいけど、もっと欲しい…
[良い点] なんか色々フラグが立ちまくった気がする、、、
2021/04/24 09:25 退会済み
管理
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