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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第一章

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優しい時間

本日2話目の投稿です。

一応マリアさんと私にも水の膜を張る。


さあ、まずは土づくり。


用意してもらったスコップで土をならしていく。


肥料も混ぜたら出来上がり。


「リーナちゃん、上手だね!」


「ん、いつもあるとおじいちゃんやってるの、みてる」


おお、ひょっとしたら嫌がるかなぁと思っていた工程だったが、結構楽しそう。


ワンピースだからちょっと動きにくそうだけど、汚れる心配がないのは良いよね。


「よし、じゃあ種を入れる穴を空けるよ。指でこうやって…できたら、種を二・三粒入れてね」


「では、わたしはトマトを」


「なす…きらいだけど、やってみる」


嫌いなものこそだよね。


リーナちゃん、えらい!!


そういう事こそしっかり褒めないとね。


褒められてさらにやる気になったリーナちゃんは、次々と種蒔きを終え、水やりも率先してやってくれた。


「はい、じゃあ仕上げに…大きくなーれ、美味しくなーれってお祈りしようね」


「うん!おいしくなってね、みずやり、がんばるからね」


植物って話しかけると成長が良くなるって説、あったよね?


まあそれがなくても、育てている物への愛着が増すという意味でも、是非子どもにはやってもらいたいと個人的に思っている。


「さ、じゃあ今日はここまで。お腹も空いたでしょう?そろそろお母様とお茶の時間だよ。野菜の種を蒔いたこと、教えてあげよう?」


「うんっ!」


いやー良い笑顔だよ。


なかなか笑わないって言ってたけど、リーナちゃん、私には結構笑ってくれるよね?


マリアさんに聞いたら、それだけルリ様に心を開いているのでしょうね、と言われた。


いつか、そうやって笑顔を向ける人が増えると良いな。







「へえ、リーナが自分で?すごいわね」


「あのね、まいにち、おみずあげないといけないの。そうしないと、おおきくならないんだって」


「そう、じゃあリーナはお野菜たちのお母様ね。しっかり育ててあげてね」


「おかあさま?」


「そうよ。リーナがお世話しなかったら、お野菜にはなれないの。美味しく育つか枯れちゃうかは、リーナ次第よ」


エレオノーラさん、良いこと言う!!!


侯爵夫人様だし、土いじりなんて!と言う人も多いだろうに…。


リーナちゃんの責任感を育てるには、とっても良い話だったよね。


リーナちゃんもキラキラした目をしてる。


「さあ、お腹も空いたでしょう?サンドイッチ、食べる?」


「うん!」


お茶の時間、と言ったが、この世界で貴族の人達は昼食=お茶の時間という認識らしい。


サンドイッチのような軽食を中心に、ケーキやクッキーなども食べるらしい。


まあ、貴族でも官僚さんとか庶民は軽食だけらしいけど。


そりゃそうよね、国政に携わる人が仕事中優雅にティータイムとかあり得ない。


因みに3時のおやつは子どもだけ。


…やっぱり子どもにとって優しい食生活じゃあないわよね。


それについては追々だと思ってる。







そんな感じでエレオノーラさんとのティータイムは和やかに終わり、リーナちゃんのお昼寝の時間だ。


今日は素話の後の子守唄。


素話は、絵本や紙芝居なんかの小道具に頼らず、声のみでお話すること。


これはこれで絵に影響されず、聞き手が自由に物語の情景をイメージできるので、想像力を豊かにするのに有効だとされている。


絵がない読み聞かせはイメージつきにくいとか色々言ったけど、結局のところ、愛情がこもっていれば、子どもにとっては良いことなのよね。


私たち話し手にとっても、既存のお話を自由にアレンジしたり、声の抑揚をつけて誇張したりして楽しめるから、やっていて楽しい。


今日は覚えたばかりのこの世界の童話を、私なりにアレンジしてお話してみた。


リーナちゃんも楽しんでくれたみたいだし、良かった。


「さあ、じゃあそろそろお休みなさい。歌うね」


「ん…おや、すみ」


午前中たくさん体を動かして疲れたのだろう、歌い始めるとすぐにリーナちゃんは眠りについた。


「今日もお見事ですね。でも分かるわ。ルリ様の歌、本当に癒されますもの。他の使用人達の中にも、お嬢様のお部屋の近くを通った時に歌が聞こえて、不思議な旋律に何だか心が洗われた、なんて言う人もいるくらいですから」


"癒し"と聞くと、ドキッとする。


私が聖女だということは、自分自身、まだ信じきれていないのだ。


でも、こんな言葉を聞くと、自分が確かに人に影響を与えているのだと思い知る。


「…気のせいですよ。聞き慣れない曲だからそう思うだけで。」


「ふふ、そうかも知れませんね。でも、実際こうしてお嬢様がすやすやと眠って下さるし、それに昨日今日ととても楽しそうで、私も嬉しいんです!ルリ様、この屋敷に留まって下さって、ありがとうございます」


明るい笑顔でそう言ってもらえると、救われる。


思い悩んでいても何も変わらないし、私は私の出来ることをしよう。


「それなら、良かったです。でも私だって、マリアさん達にとても良くしてもらってるんですから。お礼を言うのはこちらの方です。ありがとうございます。あと…せっかく同い年なんだし、お互いに敬語止めない?」


「あら。ルリ様が宜しいのなら、是非。これからもよろしくね、ルリ」


私達は、顔を見合わせてくすくすと笑い合った。


こんな、何気ないことが嬉しい。


こうやって、少しずつ、嬉しいことが見つけられると良いな…。

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