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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第四章

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安堵

「ルリ?ぼおっとして、どうかした?」


「あ、ごめんなさい。喜んでもらえて良かったなぁと思って」


そう?とエレオノーラさんが安心したように微笑む。


この家の人達はみんな優しいから、すっかり甘えてしまっているけれど、すごく幸せなことなんだなと実感する。


うん、やっぱり私はーー。







「やはりルリは料理が上手いな。サラダもデザートも、とても美味しかった。料理人達が争うのも分かる気がするな」


「もう、本当に大変だったんだから。でも、ありがとう。大したものじゃないんだけど、口に合ったみたいで良かった」


食後、部屋にレオンを招き、私は紅茶を淹れていた。


マリアが用意してくれたそれは、今日もとても良い香りで、お湯を注ぐとふわりと優しく鼻をくすぐった。


ちなみにフルーツケーキもオレンジゼリーもとても好評で、エドワードさんが目を輝かせて口に運んでいた。


もちろんお子様用はブランデーなしなので、レイ君も同じくキラキラした目でケーキを頬張り、ゼリーを味わっていた。


そんな二人を、エレオノーラさんとリーナちゃん、レオンも笑って見つめていた。


「それで?相談とは何だ?」


レオンの向かいのソファーに腰かけると、早速本題に入られた。


ちょっぴり不安だけれど、目の前のレオンの目がとても優しかったから、情けない私のことも受け入れてくれるような気がして、そっと口を開いた。


それからぽつぽつと、起こった出来事と私の気持ちを言葉にしていく。


シーラ先生やカルロスさんと練習したこと。


治療(ヒール)はすぐに使えたが、やはり回復量が多そうで、切り傷どころか古傷まで治してしまったこと。


それどころか治癒(キュア)なんて誰も知らない回復魔法が使え、多分それは病気に効く魔法であること。


人よりも魔法の効果が高いのは分かっていたけれど、誰も知らない未知の力に、自分のことながら怖くなってしまったこと。


みんなには治癒(キュア)の存在は取りあえず隠した方が良いと言われたが、多分、目の前に苦しんでいる人がいたら、私は魔法を使ってしまうだろう。


だけどそれは、周りの人達に少なからず迷惑をかけてしまうし、自分が傷付くことだってありうる。


「ーーそれでも、この力を使う覚悟があるかと、カルロスさんに問われた気がしたの。情けないけど、私、答えられなかった」


カップを置く手が、震える。


少し落ち着いたかなと思っていたけれど、こうして言葉にするとやっぱりまだ怖い。


「ルリ」


それまで静かに聞いていてくれたレオンが、突然私の名前を呼んだので、弾かれたように顔を上げる。


「こっちにおいで」


そう言ってレオンがポンポンと自分の隣に座るよう促す。


いつもなら恥ずかしくなるところだけれど、今日は不安の方が強くて、誘われるがままにレオンの隣に腰掛けた。


それでも少し遠慮して間を空けたのだが、すぐにその距離を詰められる。


足が密着して、ぽっと顔が赤くなるのが分かった。


それだけでなく、レオンは私の膝の上にあった手に自分のそれを重ねて、きゅっと優しく握ってきた。


「手、冷たいな。それに少し震えている。ーールリ、すまない」


どうして、謝るの?


理由が分からなくてレオンの瞳を見ると、少し困ったように微笑まれた。


「全く貴女は、どこまでも優しくて困る。この世界のためにそうまで悩んでくれるのは、有り難いことではあるが、そんなに一人で抱え込まなくて良いんだぞ?」


思いもよらない言葉に、目をぱちくりさせる。


「だいたい本来は私達ーーこの国の者で解決しなくてはいけない問題だ。陛下も言っていただろう?貴女達が望むのなら、緊急時以外は国政に関わらずに普通に暮らしてくれて良いと」


そういえば、私が聖女だってバレて初めて王宮に招かれた時、初めて会った陛下にそんなことを言われた気がする。


あの後、リーナちゃんにいなくならないで!って大泣きされたんだっけ。


何だか懐かしいな。


「それなのに貴女達ときたら……。誰も知らない大きな力を怖く思うのは、普通のことだ。情けなくなんてない。むしろ力を隠して当然とも言える。それでもその力と向き合って、国のために悩み動こうとしてくれるその心は、とても清らかなものだと思うがな」


優しい声に、ぽろりと雫が頬を伝う。


「迷惑などと考えずに、ルリはルリのしたいようにやれば良いんだ。それを支えるのが俺達の役目だ。ルリは誰よりもお人好しだからな。言っておくが、稀代の悪女には決してこんなこと言わないぞ?」


冗談めかしたレオンの言葉に、ぷっと笑いが零れる。


「そんなこと言って。結構私、自分勝手だよ?悪い女だったらどうするの」


「そうだな。ルリになら、唆されてみるのも悪くないかもな」


くすくすと笑う私の頬に、レオンの手が掛かる。


「怖いときは怖いと言えば良い。辛いときは一緒に悩む。何なら、カルロス=カーネリアンに治癒(キュア)とやらを使えるように特訓してやれば良い。ああ、リーナも率先して学びたがるかもな。俺達にも、ちゃんと貴女を守らせてくれないか?」


こんなちっぽけな私を受け入れてもらえたことが嬉しくて、また涙が溢れる。


「ーーうん」


そう返事をすると、レオンは温かい微笑みを浮かべ、そっと私にキスをした。


いつの間にか背中に回ったレオンの腕に、しっかりと抱き締められる。


あったかい……。


おずおずと私も腕をレオンの背に回すと、レオンがふっと笑った気配がした。


重なった唇から、熱い息が零れる。


「大丈夫、貴女は一人じゃない」


また涙が頬を伝い、レオンの唇が優しくそれを拭ってくれたーー。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 愛されてますなあ瑠璃さん(*´ω`*) [気になる点] でも守るなら貞操も…と言いたいところですが、瑠璃の迷いを吹っ切るために最後までいってもいいのかもしれません(何が [一言] レオンハ…
[一言] >本来は私達――この国の者で解決しなくてはいけない問題だ >迷惑などと考えずに、ルリはルリのしたいようにやれば良いんだ。それを支えるのが俺達の役目だ ホントこれ レオンがブレてなくて良かっ…
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