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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第四章

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懺悔

「やってくれたな」


「やってくれましたねぇ」


「ルリ…」


「だ、だって私もそんなつもりじゃ…。ちょっと陛下!そんなあからさまに溜め息つかないで下さい!!」






…ということで。


王宮、しかもカイン陛下の元に呼び出されました。


と言っても謁見の間ではなく、応接室みたいな部屋だ。


メンバーも陛下にシーラ先生、レオンに私と少人数な為、そこまで畏まった雰囲気ではない。


国王陛下相手に畏まらないのもおかしな話だが、公の場以外では普通に、と言われているのでそうさせてもらっている。


まあ、こうして話してみると年相応な感じだし、初めはちょっと緊張したけど、慣れると意外と普通に話せる。


なんと年下、二十歳らしい。


二十歳であの威圧…じゃない、威厳はすごい。


「まったく…。おい、レオン。ちゃんと見張っておけと言っただろう」


「しかし、今回はルリも知らない力だった訳ですし…」


「そうね、想定外だったから仕方がないわよ」


レオンとシーラ先生がフォローしてくれるが、ごめんなさいとしか言えない。


あんな人前で、しかも公の場だ。


目撃者だってたくさんいる。


誤魔化せたり…は、しないよね。


「それで?その"祝福"とやらの効果は?」


「見た目はそう変わっていないと報告を受けていますが…土の成分などは、かなり良質な物に変化しているようです。うちのルイス=アメジストが実際に出向いて調べたので、間違いないかと」


「助っ人に出したうちの魔術師も同じことを言っていたわ。植樹したばかりの木も、早々に蕾をつけたと。植物の成長促進効果もあるみたいね」


「その上、聖女が祈って女神の祝福を受けた公園、か。これは話題にならないはずがないな」


「わ、わーい、やったぁ」


重い空気に耐えきれずへらりと笑ってみせたが、シーラ先生から苦笑を返されただけだった。


陛下は頭を抱えている。


因みにレオンには頭を撫でてもらえた。


「お前、自分で言ったことを忘れているのか!?なるべく目立ちたくない、穏やかに過ごしたいと言うから俺は……!!!」


「ひっ!ご、ごめんなさい!!」


胸ぐらを掴まれそうな勢いで怒られたが、まあまあとシーラ先生が間に入って陛下を宥めてくれる。


そういえばこの二人、従姉弟なんだっけ。


やり取りを見ているとかなり気安い関係のようだ。


「まあルリ本人がやったことだもの。目立っちゃっても自業自得だから、カインが気にすることじゃないわ。いっそのことぱーっとお披露目して国の役に立ってもらう?」


はい!?


「シ、シーラ先生それは…」


「あら、だって本人がやらかしてるんだから、不可抗力よー。」


ぎゃふん。


「それくらいにしてやってくれ、シーラ。ルリが涙目になっている」


何も言い返せず、ぷるぷるしている私に救いの手を差し伸べてくれたのは、やはりレオンだった。


「でもねえ、結局ルリはどうしたいのって話よ。話を聞いていると、この国のために私達に協力したい、出来るだけのことはしたいって思ってくれているのよね?だけど、貴女が考えているよりもずっと、貴女の魔力も知識も大きなものよ。目立たずに最大限やりたい、なんて不可能だわ。むしろ、変に隠そうとすると、その力を利用しようとする輩が出てきても不思議じゃないわよ」


シーラ先生の真剣な眼差しに、以前紅緒ちゃんや黄華さんと話したことを思い出す。


『いつかそうした場に出なくてはいけない時は来るでしょうね。聖女として生きると決め、国に守られている私達には、その義務があります。』


「…私、あの頃は覚悟が足りなかったんです」


だから、その言葉は自然と口から零れた。






「…良かったの?あれで」


未知の力の事を話し合うために、私とシーラ先生は別室で二人きりだった。


「シーラ先生がそれ言います?あれだけ焚き付けておいて」


心配そうな眼差しに、苦笑を返す。


良いんだ、以前陛下と話をした時の私とは違う。


あの頃はまだ…聖女なんて嘘みたいに思っていたし、元の世界への未練もタラタラで。


「本当は、今でも目立つのなんて苦手だし、聖女様なんて呼ばれるのも違和感あるんです。でも、私はもう選んでしまったから」


この世界で、生きることを。


レオンを好きになって、一緒に生きていきたいと思った。


大切な人が増えて、私も力になりたい、この国の子ども達のために教育に関わっていきたい、助け助けられて一緒に幸せになりたい。


そう、思ったから。


「…貴女、お人好しよね。私の事も、責めたりしなかった」


シーラ先生の声が沈んだ気がして、そっと視線を向けると、悲しそうな目をしていた。


「…そんな事ないですよ。先生に会ったのは随分精神的に落ち着いてからだったし。帰れないって知った直後だったら、掴みかかってたかも」


「それくらい、やって当然よ」


歪んだ顔が、無理をして笑う。


「確かに、私は望んでこの世界に来た訳じゃない。聖女にだって、別になりたかった訳じゃない。泣いた事だってたくさんあります。でも、この世界で私が受けた優しさは、どれも本物でした。同情からじゃない。聖女だからでもない。ただの"ルリ"としての私に、笑いかけてくれたんです。その優しさに応えたいと思うのは、別に変なことじゃないですよね?」


私の静かな声に、シーラ先生は俯く。


「…では聞きます。先生は、気紛れで私達の召喚を行ったんですか?召喚した事を、後悔していますか?私達の心など、どうでも良いと思っていましたか?ーーーこの国の為ならば、私達を利用することなど些細な事だと思っていますか?」


「…どれも、"いいえ"よ」


ぎゅっと瞑った目には、涙が溢れていた。


その肩は、震えていて。


「では、私は先生を信じます。こんなに人の為に、国の為に心を砕き、涙を流せる貴女を。きっと私達の幸せの為に動いてくれる、そう信じています。だから…もう苦しまないで下さい」


さらに深く俯いて見えなくなっていたが、シーラ先生の瞳からは、ぽた、ぽた、と雫が落ちてきた。


唇を噛み締めて、嗚咽を漏らさないように耐えるその背中に、そっと腕を回す。


「一緒に、幸せになりましょう?」


抱き締めた頭を肩に預けると、温かい涙が滲み、か細い声で「ありがとう」と呟く声がした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これでシーラも救われましたかね。 自分のやったことと前世のことを考えれば気に病むのは仕方ないですが、瑠璃から救いの言葉があったのは良かったと思います。 [気になる点] むしろ許してくれない…
[良い点] シーラさん… 男だったとは思えない細やかな気配り。
2021/02/27 08:27 退会済み
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