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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第一章

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友達の定義

しーーーーーん。


リーナちゃんの一言に、みな氷となった。


だ、だれか、答えてあげて…。


ちらりと保護者(エレオノーラさん)を見る。


…笑顔で固まっていた。


レイ君は!?


…目を逸らされた。


君、友達少ないな?


最後に使用人さんズを見たが、そっと掌で目元を覆って俯いていた…。


「るり?」


わ、私ですか!?


しかし、これは深い質問だ。


適当に答えてはいけない、気がする。


「そうですねぇ…」


うーんと暫く考える。


友達、か。


「…一緒に遊んだり、お喋りしていると楽しくて、時々ケンカをしてしまうこともあるけれど、嬉しい時は一緒に喜んでくれて、悲しい時は一緒に泣いてくれる人、かな。あとは、一緒に勉強したりもするよ」


「たのしい…」


「うん。リーナちゃんはどう?お友達、ほしい?」


リーナちゃんは、紙芝居の最後の場面で、嬉しそうに笑っている女の子を見つめる。


「おともだち、ほしい」


やった!


リーナちゃんの言葉に、皆が驚いた後、嬉しそうに笑った。


「そうね、お母さまもお友達と一緒だと楽しい気持ちになるから、リーナにもお友達を作ってほしいわ」


特にエレオノーラさんは、今にも泣き出しそうなくらい目元を潤めてそう答えた。


「そうなると母上、年の近い御令嬢を集めて、茶会でも開きますか?」


「そうねぇ…でも、いきなり大勢呼んではリーナが戸惑わないかしら?」


確かに…と皆、頭を抱えてしまった。


「あの、マリアさんのお子さんは、ダメなんですか?」


思わずそう聞いてしまう。


「ええっ!?そ、そんな。うちの子がお嬢様となんて…恐れ多いです!!」


あれ?貴族の子と使用人の子は仲良くしちゃダメなの?


でも乳兄弟とかって言うよね。


この世界にはないのかな?


「でも、マリアは一応男爵家の三女だし、旦那様も男爵家の次男でしたよね?」


「一応貴族、っていうだけですよ!侯爵家のお嬢様と比べてはいけません!!」


「因みに男の子ですか?女の子ですか?」


「…女の子です」


丁度良いよ。


いきなり男の子は、リーナちゃんにはハードル高い。


「決定で良くないですか?」


「私は良いと思うのだけれど…。マリア、嫌かしら?」


あっ、これ断れないやつだ。


エレオノーラさん、本当にイイ性格してる。


案の定、「い、いいい嫌だなんてそんな!!」とマリアさんも真っ青だ。


このままだと無理矢理感があるので、フォローすることにする。


「あの、私の国の言葉に、乳兄弟っていうのがあるんです。同じおっぱいを飲んで、一緒に育った、兄弟みたいなものだって事なんですけど、その子達は大きくなっても、互いに信頼し合っていることが多いんです。リーナちゃんとマリアさんのお子さんにも、是非そんな関係になって欲しいなと思うのですが…どうでしょう?」


マリアさんの顔色が徐々に戻ってきて、じっと見つめられた。


「アリスが、私の子が、リリアナお嬢様と?」


「はい、決めるのは本人達ですが、ひょっとしたらアリスちゃん?が、リーナちゃんに仕えたり、どこかに嫁いでも仲良くお茶会したりする未来もあるかもしれませんよ」


自分の子どもの未来に想いを馳せているのだろう、マリアさんは暫く黙って考えていた。


「私…アリスにも、リリアナお嬢様を好きになってもらいたいです」


「はい!でもまあ、決めるのは子どもたちなので。とりあえず会わせてみて、友達になれたら良いな~くらいに思いましょう?」


ニコリと笑って返すと、マリアさんも笑ってくれた。


話は纏まり、近いうちに二人を会わせてみることに。


因みに当のリーナちゃんは、いつの間にかエレオノーラさんの膝の上で夢の世界に旅立っていた。


おやすみ、また明日ね。







「へえ、そんなことが」


「貴方にも見せたかったわ。帰るのが遅いんだもの」


リリアナが眠り、静かに解散となった後、この屋敷の当主、エドワード=ラピスラズリは、王宮から戻ったところを妻であるエレオノーラに部屋へと連れ込まれていた。


「通信魔術で粗方聞いていたが、なかなか良いお嬢さんのようだ。それに、面白いことを考える」


エドワードにとっても、リリアナへの評価、カミシバイの作成、チキョウダイの関係など、興味を惹かれることばかりだった。


またその人柄に、普段滅多に他人に本心を見せない目の前の女性が、あっさりと心を許したことの重大さを、エドワードは分かっていた。


「私は、リーナは君似だといつも言っていたね」


「処世術の一つよ。でも、あの子には調子を崩されちゃってね。それなのに、ちっとも嫌じゃないの」


膝の上の、柔かな温かさを思い出して、エレオノーラから自然と笑みが溢れる。


「君にそんな顔をさせるなんてな。嫉妬してしまうよ」


「あら、またそんなこと言って。でも、絶対貴方も気に入るはずよ。私、何がなんでもルリに家庭教師になってほしいわ」


「はは。これは逃げられそうもないな。ルリ嬢に同情するよ」







「まさか、あんなに喜んでもらえるなんて」


今まで眠ったことのないような大きなベッドに入って、呟く。


「家庭教師、かぁ…」


明日は、侯爵様にご挨拶しないと。


こうして異世界に来て初めての夜は更けていった。

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