これからの私達
アメリアとオリビアとはまた会う約束をして、トパーズ子爵邸を後にした。
そう、二人とも年下だし友達になったのだからと、さん付けは無しで良いとの事で、名前で呼ばせてもらうことになり、敬語も無しになった。
これだけで親しくなった感じするよね。
うん、新しい友達、嬉しい。
それと、もう一つ。
「…早く、話したいな」
レオンに会って、伝えたい。
その晩、やはりレオンは少し遅めにラピスラズリ邸にやって来た。
と言ってもギリギリリーナちゃんが寝る前だったので、レイ君とリーナちゃんの二人とはちゃんと会うことができたんだけれど…。
「レオンおじさま、ちょっとこっちきて?」
何故か三人で内緒話を始めてしまった。
何だかのけ者にされたみたいでちょっと寂しい…。
でも三人とも表情は明るいし、レオンが二人の頭を撫でているから、変な話ではないのかな?
あ、レイ君照れて怒ってる。
そんなお年頃?
リーナちゃんは凄く嬉しそうだな。
あー二人とも本当に可愛い。
楽しい内緒話なら、まあ良いか。
少し遅めの夕食も終え、私達は二人で話をするために自室へとやって来た。
レオンにはソファーに掛けてもらい、マリアが用意してくれたお茶をテーブルに置いて向かいに座ると、まずは一つ目の大切な話を切り出す。
「レオン、お疲れ様。今日来たのは、やっぱりリーナちゃんの事、だよね」
「ああ、兄上と義姉上に報告してきた」
そう、リーナちゃんが聖属性持ちではないかという話だ。
あくまでシーラ先生の予測だけど、多分間違っていない気がする。
「驚いていたが、あの子なら大丈夫だろうとも言っていた。…ルリ、貴女がついているから」
「私?」
「ああ。身近に聖属性魔法の遣い手がいて、しかもそれが慕っている人で、それを正しく使おうとしている見本のような女性がいるんだ。何の心配もないとさ」
「…私、そんな立派な人間じゃないよ?結構自分の事でいっぱいいっぱいだし、迷惑かけたり、間違ったこともしちゃうし」
「ああ、それで良いんだ。一緒に悩んで、考えて、助け合えるからこそ、みんなルリの事が好きなんだ。それに、一度間違えた事を貴女は繰り返さないだろう?」
「…うん」
レオンの言葉がジンと胸に響く。
こんな私を好きだと言ってくれる人達がいることが、とても嬉しい。
「リリアナに聞いてからだが、近々王宮に出向いてシーラの鑑定を受けるつもりらしい」
シーラ先生の鑑定を受けるということは、聖属性持ちであることを国に申請するという事。
「私、私もリーナちゃんの為に、リーナちゃんを守れるように、頑張る」
レオン達、みんなが私を守ってくれているように。
「ああ、そう言ってくれると心強い。ありがとう、ルリ」
ふるふると首を振る。
そんなの、今まで私が受けた優しさに比べたら些細な事だ。
「…あのね、もう一つ私からも話があるの」
「うん?どうした?」
レオンが私の隣に座り直す。
優しい声が近くから聞こえるのが、ドキドキするのに落ち着く。
「今日、トパーズ子爵邸にお邪魔して来たの。そこで、アメリアに聞いた。…話したんだってね」
そうか、とレオンが苦笑する。
きっと、私が聞かなかったら話さないつもりだったんだろうな。
「アメリア、凄く優しい顔してた。レオンにありがとうって言ってたよ。こんなこと私が言うのも変だけど、きっと、アメリアはレオンを好きになって幸せだったと思う。憧れも、尊敬も教えてくれて、人を大切に思う気持ちも知った。それに、きちんと終わらせてくれた事も」
素敵な人を好きになった自分を、きっと彼女は誇れる。
心残りなく振ってもらえたから、新しい一歩を迷わず踏み出せる。
きっとアメリアは、これから素敵な女性になるだろう。
「そして、そんな人と恋人同士になれた私は、凄く幸せだなって思った。いつかアメリアにすれば良かった、なんて言われないように、私も頑張るね」
「ルリ…」
少しだけ驚いた表情をしたレオンは、すぐに顔を綻ばせると、私の手を取った。
何だろうと不思議に思っていると、そのまま私の手を自分の口元に寄せ、ちゅっ、とキスを落とした。
「ひぇっ!?」
「…俺も、幸せだよ。こうして貴女の隣にいられることが」
あまりに突然の出来事に、私は何も言えずに口をぱくぱくさせるだけだったーー。
「ルリ?何故向こうを向いている?」
「イエ、ちょっと私には刺激が強すぎて…」
現在私は自分のベッドに横になり、レオンは隣に腰掛けている。
疲れているだろうからそろそろ…、と就寝をすすめたのだったが、私が眠るまで側にいたいと言われ、何故かこうなった。
何もしない、隣で手を繋ぐだけだと言われたしそれを信じているが、それと心の動揺は別物だ。
だってだって!薄暗いベッドの上で、好きな人と手を繋ぐって、何もなかったとしてもドキドキしない訳ないじゃない!?
月明かりでレオンの顔に陰影ができて、それがまた何とも言い難い、い、色気を醸し出しておりまして…。
こんな状態で眠れるかぁぁ!!!
…と思っていたんだけど。
不思議だよね、レオンの手の温度が心地よくて。
いつの間にか、私は眠りについていた。
「ルリ?…眠ったのか」
繋いでいた手から力が抜けた気配がして、ルリにそう呼び掛けた。
すぅ、と安らかな寝息を立てるルリの姿に、ほっとする。
穏やかな寝顔を眺めながら、レオンハルトは先程ルリに言われたことを思い出していた。
トパーズ子爵令嬢の件、そもそも彼女に会って話そうと思ったのは、ルリの為だった。
ちゃんとけじめをつけなくてはいけないと思えたのも、ルリだったらそうしただろうと考えたからで。
子爵令嬢の為だとか、そんな高尚な考えなどではない。
それでもその行いが、自分も、ルリも、子爵令嬢も救ったのであれば、それは正しかったのだろう。
それにしても名前で呼んでいた所を見ると、彼女たちとずいぶん親しくなったらしい。
それとーーー
『レオンおじさま。あのね、ルリせんせい、さいきんとてもうれしそうなの。きょうも、おじさまがくるの、たのしみにしていたわ。ちょっとまえはね、おじさまにあうのがはずかしいから、すこしへんなたいどをとっちゃう、っていってたのに。ふふ。きっと、はずかしいよりも、だいすきってきもちがおおきくなったのね』
『ルリ様、最近急に綺麗になったと話題ですよ。誰がそうさせたかは一目瞭然ですけどね。誰かに奪われないように、ちゃんと大切にして下さいね』
幼い二人からの激励も思い出し、笑いが零れる。
「自分がどれだけ人に影響を与えているのかなど、分かっていないのだろうな」
華奢な手をきゅっと握ると、んんっ、とルリが身じろぐ。
すると繋いだ手の温度が心地よいのか、頬を刷り寄せてふわりと微笑んだ。
「……参ったな」
本当に何もしないつもりだったのだが、と呟くと、レオンハルトは少しだけ考えた後、ルリの唇におやすみ、とキスを贈り、そっと部屋を後にした。
これから、私達はたくさんの壁にぶつかるかもしれない。
まだまだ謎の多い自分の魔力。
携わる事業。
きっと、悩むことも、間違える時もある。
それでも、ずっと一緒にいたいと思える人に出逢えた。
彼となら、きっと一緒に乗り越えられる。
私もこれから、最大限の努力をしたいと思う。
この世界で、幸せになりたいから。
第三章、終わりです。ありがとうございました。
瑠璃も落ち着いたので、次章はあの人かな?
何話か書いてみてから更新しようと思うので、少しお時間頂くかもしれません。
ブクマ・評価・感想等ありがとうございます!
いつも嬉しく思い、活力にしております。
また第四章でお会い出来ることを祈っております。
まだまだ頑張る瑠璃達をどうぞよろしくお願いします(*^-^*)




