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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第三章

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定食

「厨房を貸して欲しい、ですか?まあ、まだお昼を過ぎたばかりなので大丈夫ですけど…何をされるんですか?」


「うふふ。ちょっと、実験」


いきなり現れたシーラ先生と私に、困惑気味のベアトリスさん。


確かにチョコレートを渡しに訪れるつもりではあったけど、こんな予定ではなかった。


「急にごめんなさい、ベアトリスさん」


「いえ、良いんですよルリ様。ところで実験とは?」


「え、えーっと、話すと長くなるんですけど…」


「ルリの恋心が作った料理に反映されているんじゃないかっていう実験よ!」


「ちょ、ちょっとシーラ先生!!!」


もっともなベアトリスさんの疑問に何と答えたものかとまごついていると、シーラ先生が簡潔かつ恥ずかしい答えを述べた。


「あら、まあ、それは…。おめでとう、ルリ様」


それで色々察したらしい。


ベアトリスさんににっこりと微笑まれた。


「あ、ありがとうございます…」


生暖かい視線に耐えられないので止めて下さい…。


「聖属性魔法は、術者の想いの強さが関係しているのではないかと思ってね。上手くいけば、うちの聖属性持ちにも回復効果のある遠征食が作れるかもしれないわ。あと、他の聖女様方にも」


「なるほど…それはやってみる価値がありそうですね」


う、うーん紅緒ちゃんはともかく、黄華さんはどうだろう?


以前も期待しないで下さい、って言ってたし、ひょっとしたら料理苦手なのかもしれない。


嫌がるんだったら無理にはさせたくないけどなぁ。


「とりあえず、レオンへの差し入れ、今から作りましょ」


「そうですね。うーんと想いを込めたやつ作ってやりましょうね、ルリ様」


「…楽しそうですねお二人とも」


そんな事ないわよ仕事よー、と言っていたが、全然信じられなかった。








「さて、何を作りますか?」


「えっと…使っても差し支えない材料って何があります?」


「そうねぇ…肉なら豚と鶏なら在庫が豊富ね。野菜はわりと何でも大丈夫よ。あとはパンと…あ、ルリ様も知ってるわよね?お米もあるのよ」


「お、お米!?お米ですか!?」


「ええ、赤と黄の聖女様がお米食べたい…とおっしゃっているのを聞いてね。取り寄せてみたの。ルリ様なら美味しく食べるコツを知っているでしょ?是非教えて欲しいわ」


うわーっ!うわーっ!!


取り寄せようと思っていたが、まさかこんなところでお米に出会えるなんて!


これはかなりやる気が出た!!


紅緒ちゃんと黄華さんの為にも、これは是非作らせてもらいたい。


「知ってます!大好きです!いくらでも教えます!!」


「では、聖女様方の分もお作りしたいので、レシピをメモしても良いかしら?今夜の夕食に作らせてもらうわ」


よーし、それならまずは白いご飯と相性抜群のアレよね!!


男の人も絶対大好きなはずだし。


「あ、多めに作ってねルリ。私も食べたいから。鑑定しなきゃだし、これも仕事だから、ね?」


もっともらしいこと言ってますけど、ただ食べたいだけですよね、シーラ先生?







「じゃあ私は話もあるし、ここで食べた方が良さそうだからレオンを呼びに行くわ。そうね、一時間後くらいで良いかしら?」


「あ、そうですね。よろしくお願いします」


お米を研いで水に浸していると、シーラ先生はそう言って出ていった。


うーん。あんな感じだけど、本当に気の利く方だ。


さて、では一時間後に美味しく食べられるようにしなくちゃね!


実験とは言え、恋人同士になってから初めて作る料理だ。


どうせなら喜んで欲しいし、美味しいと言ってもらいたい。


「それで?何を作るの?」


「はい、豚の生姜焼き定食にしようかと思ってます!」


日本人ならド定番のこの料理。


今まで嫌いと言う人に出会ったことなどない。


「レオンの分は男性向きにしっかり厚みのあるロース肉を使いますけど、紅緒ちゃんや黄華さんには小間切れの方が食べやすいかもしれませんね。レシピは凄く簡単ですし、割と目分量でいっても美味しく作れますよ」


簡単で美味しい、素晴らしい料理だ。


「それときゅうりの浅漬けに味噌汁!お味噌、発見しちゃいました!これも使って良いんですよね?」


「ええ、勿論よ。ええと、ニホンショク、なのよね?それも取り寄せて今日届いたんだけど、使い方がまだよく分からないから、ぜひ教えて欲しいわ」


ベアトリスさんから材料の了解も得たので、早速調理開始!


まずきゅうりは適当な大きさに切って、保存用に開発した袋に塩・砂糖と一緒に入れて振り、揉みこむ。


保存袋、便利よね。


冷蔵庫的な魔道具の中に入れて寝かせれば完成だ。


「か、簡単ね…」


「はい、30分くらい寝かせれば食べられますよ?ご飯に漬物、間違いない組み合わせです」


さて、お次は味噌汁。


寒い季節だし、ここは体を温める根菜が良いかな?


豚汁も良いけど、今回は生姜焼きもあるからまた今度ね。


大根やにんじん、玉ねぎにキノコ類と具は多めにしよう。


レオン、意外と健康志向だったし、野菜をたくさん食べられた方が良いよね。


汁物なら栄養素も落とさずにしっかり摂れるから、ピッタリだ。


まだ忙しいんだろうし、体に良いものを作ってあげたい。


顆粒だしなんて便利なものは勿論ないので、ちゃんと出汁からとりましたよ。


かつお節、そんなに使うの!?って驚かれてしまった。


そうして出来た出汁に具材を入れて煮込んでいる間に、次はご飯だ。


「さーて、お米は…うん、良い感じ!」


程よく水を吸って、お米が膨らんでいる。


こちらも勿論炊飯器などないので、土鍋で炊くことにした。


一人暮らしを始めた頃、ずっとやってみたくて土鍋を買ったのよね。


そりゃ炊飯器様の方が楽だから普段はそっちだけど、時間のある時たまに土鍋で炊くこともあった。


何度かやっておいて良かった、知識と経験は財産である。


「では水は新しく張って、これをまずは強火で沸騰させます。沸騰したら中火にして5分待ちます。ベアトリスさん、見ていて下さいますか?」


「ええ、了解」


ベアトリスさんなら安心して任せられる。


さて、その間に生姜焼きにかかろう。


これを忘れてはいけない、キャベツの千切り。


そのままでも口をさっぱりできるし、タレを絡めて食べても美味しい。


たかがキャベツ、されどキャベツ。


あとは玉ねぎをくし切りにして、生姜もすっておく。


個人的には生姜は多めが好きだ。


レオンもお酒はさっぱり系や辛口が好きみたいだし、きっと多めが良いんじゃないかな?


そうだ、にんにくも入れてスタミナがつくようにしよう。


「ルリ様、そろそろ五分経ちます」


「あ、そうしたらつぎは一番弱火にして四分お願いします。最後に最強火にして五秒ほど。あとは火を止めて蒸らせば完成です!」


久しぶりのご飯!楽しみー!!


「さて、じゃあこっちもあとは焼くだけね」


先に良い感じに漬かったきゅうりを盛り付けてからお肉と玉ねぎを焼き始める。


これ、かなり良いお肉なんだろうな。


何たって王宮用だし。


両面焼き色が付いたら、調味料を入れて蓋を閉める。


うーん、良い音と匂いだ。


レオンも気に入ってくれるかな。


煮詰めている間に、鍋にお味噌を溶いて味噌汁も完成。


生姜焼きもそろそろ良いかな?と言う頃に、背後からシーラ先生の声が聞こえた。


「お待たせ。わ、美味しそうな匂い。丁度良いタイミングだった?」


「はい!バッチリです!」


素晴らしいタイミングに驚いていると、その後ろから会いたかった人が現れた。


「急に連れ出されて何事かと思ったのだが…ルリ、貴女だったんだな」


レオン、美味しいって言ってくれるかな?

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― 新着の感想 ―
[一言] >ただ食べたいだけですよね、シーラ先生? と、ルリに言われた瞬間目線を逸らすシーラ先生。を想像したけど、笑って誤魔化されるかな?。(´∀`*)ウフフ
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