聖女会議5
ということで。
甘いもの好きなエドワードさんとレイ君には生チョコとガナッシュやナッツの入ったチョコを。
マリアの旦那様はお酒好きとの事なので、ウイスキーボンボンを。
私はチョコペンで色々デコレーションした友チョコを作った。
そしてこれも大事です、"自分用"。
クッキーにチョコペンでお絵描き、パーティーでもやってたやつね。
これなら楽しいし美味しい。
今日はこのクッキーでお茶会だ。
「私まで同席してしまって良いのでしょうか…?」
「良いのよ、今日は4人で頑張ったのだから。ふふ、他の皆には内緒よ?」
今日だけ特別、と言うことでこっそりマリアも同じテーブルに。
「わ、るりせんせいのかいたうさぎ、かわいい!」
「本当ですね。それにしてもルリはさすがに上手ね。それにとっても美味しい!」
「ええ、本当。お菓子作りなんて初めてだったけれど、楽しいわね!渡すのも楽しみだわ」
リーナちゃんとマリアだけでなく、悪戦苦闘していたエレオノーラさんも楽しんでくれて良かった。
可愛いクッキーも好評みたい。
あとはそれぞれが夜、相手に渡すだけ。
因みに私は明日王宮で交流会と講義が入っているので、そこで渡す予定だ。
アメリアさんとオリビアさんには、明後日に予定を空けてくれたので、そのお茶会の時に。
喜んでもらえると良いな…。
翌日。
お昼前、私は交流会のためにいつもの王宮の部屋で二人を待っていた。
ちょっと早く着いたので、アルと話しながら待つことにした。
…主に先日のデートについて。
「で、無事に恋人同士になれたんですね?」
「え、えーと、うん、まあ。そうです」
長かった…とアルは両手で顔を覆いながら深く息を吐いた。
すみませんね!モタモタしていて!!
「やっと肩の荷が…いえ、心配の種が一つ減りましたよ」
「ご、ご迷惑オカケシマシタ…」
完全にダメな奴認定受けてるわね、私。
「まあ、でも少しは自覚出てきたみたいで安心しましたよ。ほら、それ」
「え?これ?」
アルに指された方には、チョコレートの入った包みがあった。
「お世話になっている人用に、と言っていましたが、数を見たところ、聖女様方と魔術師団長、それに料理長といったところですよね?いつもなら私や第二の連中の分まで用意していそうなものですが、団長殿の事を考えてあえて作らなかったのでしょう?」
ぐっ…!どうしてアルってばそんなに私の考えが分かっちゃうのよ!?
「話を聞くに、本来は特別な相手にチョコレートを渡す日のようですからね。変に期待する輩がいないとは限りませんし、何より団長殿の心が荒みそうですから、素晴らしい判断です」
うんうんとアルが頷く。
ちょっと待ってよ、なんか親戚の子の成長を喜ぶおじさんみたいになってない?
「それはどーも」
もう恋人になったんだから、その辺はちゃんとわきまえるわよ。
それにそんな勘違いする人なんていないでしょうに。
「甘いです。絶対に油断しないで下さいね。常にしっかり考えることをお勧めします」
だから、私の頭の中と会話しないでよー!!!
そんなこんなでアルと話していたら、時間になって二人が揃ってやって来た。
いつものように挨拶を交わして侍女さんにお茶とお菓子をセットしてもらうと、さて、と紅緒ちゃんが身を乗り出してきた。
「ーーーで?今日は噂の青銀の騎士様との恋バナを聞かせてくれるんですよね?」
「…へ?」
「うふふ、紅緒ちゃんたらずーっと楽しみにしていたんですよ。さあ、今日は全部吐いてもらいますからね?覚悟はよろしいですか?」
ちょ、ちょっと待って!
二人の圧がすごいんですけど!!?
「はあーっ、瑠璃さん頑張ったのね!団長さんもカッコイイわぁ」
「本当、聞いているだけで恥ずかしくなってきちゃいます」
「じゃあ言わせないで下さいよ!!」
結局ここでも全部吐かされた。
それを聞いてうっとりする紅緒ちゃんと、相変わらずからかい混じりの黄華さん。
でも二人とも良かったね、と言ってくれて祝福してくれたのが嬉しかった。
特に黄華さんは相談していた事もあり、ちゃんと自分で報告できて良かったなと思う。
黄華さんのおかげな所もあるので、しっかりお礼も言っておいた。
「でもバレンタインデーですか…もうそんな時期なんですね」
「そう言えばそうね。バレンタインにチョコ渡して付き合う、なんて良いわね~羨ましい!」
「あ、そうなのそれで二人にも…はい、いつもありがとう!」
どうやら二人はバレンタインデーの事などすっかり忘れていたらしい。
それは好都合だと、そこで用意していたチョコレートを二人に渡す。
お茶をしながらお菓子を食べている所を見ると、二人とも甘いものは好きなようなので、きっと喜んでもらえるだろう。
「えっ、何?友チョコ?わーっ!すっごい嬉しい!!チョコ好きー!!ありがとう瑠璃さん」
「ありがとうございます。まあ、本当に器用ですのね。チョコペンで綺麗にデコレーションされています」
「こちらこそ、いつもお世話になってありがとうございます!色んな中身にしてみたので楽しんで食べて下さいね」
「えー!楽しみー!!」
予想通りの反応に私も嬉しくなる。
うん、中身何かなー?ってワクワクしながら食べるのって楽しいよね。
特に紅緒ちゃんはチョコが好きらしく、蕩けるような顔をしている。
黄華さんは…と視線を向けると、予想外の表情をしていた。
チョコの箱を手に取り、懐かしむような、切なさも感じられる眼で見つめていた。
「黄華さん?」
「あ、いえ。私もチョコ好きですよ。ふふ、ごめんなさいね、ちょっと思い出しちゃって」
何を?と聞きたい気持ちもあったが、聞かないで、と言われているような気もして、口をつぐむ。
「なあに?あ、ひょっとしてバレンタインに告白した事でも思い出したとか?」
「まあ、そんな所です。紅緒ちゃんは?ないんですか、チョコを渡したこと」
「………ない」
あやしい。
じーっと黄華さんと二人、紅緒ちゃんに視線を送る。
「な、何よ!?本当にないのよ!悪い!?」
「悪くはありませんけど…ねぇ?」
「うーん。紅緒ちゃん可愛いのに、ゲームばっかりしてて男の子のアピールに気付かなかったんじゃない?」
「瑠璃さんには言われたくない!!」
「何でよ!?私ゲームなんてしないわよ!!」
「いえ、そういう事ではなく…。鈍感、という意味ではないですか?」
「今日も楽しそうですね」
「ホント。あー僕も混ざりたいなぁ」
「…聖女様方の仲が良いのは良い事だ」
ぎゃーぎゃー言い合う声が、扉の向こうのアル達に聞かれているなどとは露知らず、私達は暫くどちらが恋愛に疎いかで言い争うのであった。




