ルーシュ視点《2》
次の日、改めて登校すると何やら私を見てコソコソ話している人が何人がいらっしゃいました。寝癖でもついていたのかしら…?
ぐっと左右の髪を少し下に引っ張ってみるけれどどうかしら、寝癖直ってるのかしら。ううん、鏡が欲しいところですわね。
うんうんと唸っていると呆れた様な声色のマナに名前を呼ばれました。髪の毛をぐっと握ったまま振り返る。
「どうかしら、マナ!」
「愉快な事になってるわ」
「まだ寝癖が!?」
「……寝癖なんてついてないわよ」
寝癖がついていない? では何かしら、化粧…はしていないし。もしかして制服にシワが!?
ぐっとスカートを、握り締める。こんなにコソコソ話される程のシワなんて…一体どんなシワがあるというの!?
「さらに愉快になってるんだけど今度はどんな見当違いな発想したの?」
「見当違い? 制服にすごいシワがあるのではなくて…?」
「違うわね、学園に務める侍女がそんなヘマするわけないでしょうが」
それもそうね、確かに学園に務めている侍女が必ず準備を手伝ってくださいますもの、そこでおかしかったら指摘してくれるはずですわ。
「ではなぜ、私こんなに見られていますの?」
「…頭の可笑しい噂があるのよ」
「頭の可笑しい噂?」
「ルーシュのね」
「私の頭は正常ですわよ!?」
「そういうのじゃないわよ、貴女の噂だけど貴女じゃない噂なの」
「……?」
「あなたって頭は良いけれどお馬鹿よねぇ…」
これで上位貴族なのよねぇと考え深そうに視線を向けられました。何となく不服です。
「ルーシュがルーシュの正反対の存在に噂されてるの」
「私の正反対…」
自慢じゃないですが私身長があまりないのです。マナとは頭一個分身長が違います。つまり正反対というのは背が高い…?
私の体型も残念ながら幼い時とあまり変わっておりません。正反対だと大人っぽい体型ということですわね。
性格もあまり人に話しかけるのが得意ではありませんので友人もマナ以外まだできていません。まだ学園にきて二日目ですもの今後頑張りますが、正反対というとやはり友達が多い方ね!
「背が高くて…大人の女性の体型で…友人が多くて…」
「確かに正反対ではあるけれど違うわよ?」
「違いますの!?」
一体どんな噂があるというのでしょうか…ふむ、と顎を人差し指と親指で掴んでみる。あらこのポーズこの間読んだ『女探偵と三匹の狼の晩御飯』の中にでてきた女探偵リリーがしていたポーズに似ていませんこと?
なんだか、探偵になった気分ですわ!
「…楽しそうね?」
「ええ! とっても楽しいです! 謎解きはワクワクします!」
「謎解き…?」
それから私は沢山沢山色々な考察をしました。犯人は誰だとか、次死ぬのはあの子かしらとか。ヒロインはあの子でヒーローはあの方かしら?とか。
まぁ、数ヶ月は期待に答えてもらえる訳もなく平和に過ごしましたわ。ええ、とても平和でした。
「ちょっと行ってくるわね、いい子にして待っていなさい」
「私も行きたいです! 」
「ルーシュはお呼びじゃないの、もし来たら…分かってるわね?」
「………はひ」
私に何も起こらないのにマナは沢山の事件にお呼ばれしてるみたいです。沢山の人が彼女を訪ねに来ては消えていきますの。きっとマナは名探偵ですのね!
消えない方は顔を赤らめてマナを見ておりますし。もしかして…美しく凛々しいマナに心惹かれてしまっているのかしら?
分かりますわっ、マナってば女性らしさもありますのに、背が高くてふとした仕草がとても素敵ですのよ!
素晴らしいでしょう!私の親友は!素敵で、惚れ惚れしてしまうのはわかるのですが…それ私も混ぜてはくれませんの…?
一人で食べるご飯は美味しくありませんのよ…マナ。