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少女と竜の物語-輪廻-  作者: ひととせそら
9/11

8.竜の血

グルグル…。 グルグル…。

私は部屋の中を回っていた。

エルドに会いたい…。でも嫌な考えがまた浮かびそうで会えない…。

…でも会いたい。

「……ぅ~…。」

やっぱり、今日はもうエルドに会うのはやめようか…。

手足の紋様がばれても嫌だし…。

…。足はブーツで隠れるかな。手は…手袋、するとか?

体もそんなにだるくないし…。

って、会う方に考えがいってる。

もしあの嫌な考えが浮かんでしまったら…。

……ううん。私は絶対にしない、そんな事。

大事な友人を傷つけるような真似は、絶対に。

その思考に至った時だった。気持ちが少し楽になった気がした。

そしてそのまま、今日も私はエルドの元へと向かった。

手袋をはめて…。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「その手袋はどうしたんだ? 寒いのか?」

エルドが私の手元を覗き込んでそう質問する。

案の定、その質問がきた…。

「う、うん。今日はちょっと体が冷える感じがして…。

空気が冷たいのかなぁ…?」

両手を擦り合わせるようにして言う。

でも今日はポカポカ陽気で空気も暖かい…。

すんごく…苦しい言い訳だ…。

「ふぅん…。」

エルドは納得したのかしてないのかな返事をし、

覗き込んだ姿勢から元の姿勢へ戻った。

「所で、いつものキッシュはまだか?」

「あ、持って来たよ。ちょっと待ってね。」

いつもの雰囲気に戻り、私はホッと胸を撫で下ろし、

カゴに入ったキッシュを取り分け、エルドへとわた…

「…隙あり…だっ!」

「きゃ…っ!!」

キッシュと一緒に、私の手袋はエルドの手に持って行かれた…。

エルドの視線がその手に向く…。

「疫病、か…?」

「……。」

手を引いて、私は顔を俯かせるしかできなかった。

「……。」

「……。」

私は何を話したらいい…? エルドは今、何を思っているの…?

……

沈黙が続いた。

「「血」が必要か…?」

「…っ!!」

ドキンと、心臓が跳ねた。思わずエルドへ顔を向ける。

「ど、うして…それ…。」

「古き約束の時代にも流行った事のある病だ。

竜族には昔から伝わっている話でな…。それに、俺達に「関りのある事」

だから、な。」

「……。」

エルドなら、知っていて当然な気が、どこかでしていた。

「……。」

「……。」

また、沈黙が続く…。

「お前になら…」

「…いらない。」

即答する。

「それしか治療法はないんだぞ?

俺は、お前にだったら分けても…」

「いらないって言ってるでしょっ!!」

感情が溢れてきた…

「エルドが良いって言っても…

私は…私は絶対に、大切な友人を傷つけたりなんかしない!!」

強く、エルドを見据えた…

「それに、大量にいるんだよ?そんな事したら、もしかしたらエルドが…っ!!」

目元が熱くなり、ボロボロと零れ落ちる涙を止める事も無く、

私は一心にエルドを見つめた。

「リーリア…。」

私の泣き声だけが辺りに響く…。

「私は…こうして、エルドと会えるだけで良いんだよ…っ。

笑顔で二人で話せたら、それだけで良いんだよ…っ。

だから、私に大切な友人を傷つけさせるような事は言わないで…

お願い…エルド…」

「…リーリア…」

……。

……。

「…ごめん。私、今日は帰るね…。エルド…また、ね…」

「リーリア!!」

引き留める声がした。でも、いたたまれなくて… 悲しくて…

私は後ろを振り返らず、止まらず、その場を後にした…。


………。


……。


…。


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