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少女と竜の物語-輪廻-  作者: ひととせそら
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5.エマとダット

「いつもありがとうね。」

「いいえ。お大事にしてくださいね。」

おばあちゃんのお手伝いで、今日は常連のお客さんである、

近所のおばさんの元へ来ている。

薬も渡し終えたので、おばさんの家を後にして、

ゆったりと歩きながら、緑広がるのどかな風景を眺める。

その景色に時折、ぽつ、ぽつとまばらに人の姿。

そんなに大きな村ではないが、それに対しても人の数は

極端に少ない。

…嫌でも15年前の疫病を思い出す。

その疫病は、全身に紋様が浮かび上がり、それが両手足から始まり、

最終的には心臓へ辿り着き、死に至るという、

「呪いのような」病だった。

罹った者は紋様が広がるにつれて体を動かせなくなり、

衰弱していき、やがて死に至る恐ろしい病…。

その病で私の両親は亡くなり、村の半数以上の人も亡くなった。

15年たった今だから、村も少し落ち着いてきてやっと生活が成り立ち始めたが、

後におばあちゃんから聞いた話では、当時は働き手の若い男性も

大勢病に倒れ、村が何も機能しなくなり、それは酷いものだったそうだ…。


「リーリアじゃない!久しぶり!」

沈んだ気分でいた所に、よく聞き慣れた明るい声が聞こえて

振り向くと、そこには私の親友のエマが笑顔で手を振ってくれていた。

「エマ!久しぶり!」

「ここ数日、見かけなかったけど、どうしたの?

リィトゥナおばあちゃんのお手伝い、忙しい?」

「ううん、お手伝いは忙しくないよ、大丈夫。

でも、最近はよく森へ行ってるかな。」

「そうなんだ。森には薬草がたくさん生えているものね。」

素直にエルドの事は言えなかった。エルドに口止めはされていないけれど、

話してはいけないような気がして…。

「そ、それより、教会の方はどう?神父様、元気?」

「元気だよ。あ、でも最近腰が痛いって言い始めたかな。

この前の教会の大掃除のせいかもしれないけど。」

エマも私と同じように15年前の疫病で両親を亡くし、それからは

教会でお世話になっている。

「聞いてよ、最近教会で…」

「よお、二人ともここで立ち話か?」

エマの話の途中、男性の声が割って入った。

聞き慣れたその声に私とエマが振り向くと、

そこには私達二人の友人の姿があった。

「あら、ダットじゃない。畑の仕事は良いの?」

「そんなのとっくに済ませたって。今はお使いの途中だよ。

ったく、親父は人使い荒いよなぁ。」

ダットは手に持った小さめの茶色い袋を、ポンポンと軽く投げてみせた。

「今日はキャベロの種が安売りしてたわよ?」

「お、ホントか!あれは普段高いからな、「買い」だな!」

エマはダットの行動をすぐに理解し、お店の情報を渡した。

私もダットとはエマと同じくらい付き合いは長いが、

この二人は特に理解し合っている気がするなぁ。

「と、ところで、さ…エマ。明日なんだけど、暇…あるか?」

「明日?明日は教会に子供達の集まる日だから暇ないなぁ。

何かあるの?ダットの家の手伝いとか?」

「あ、いや、それなら、いい…。うん…。……はぁ。」

明らかに息消沈したダットに、何の事か理解してない様子のエマ。

傍から見ても明らかな状況だと思うんだけど…。

エマはそういうの興味ないからなぁ…。

「じゃあ、俺…お使いに行ってくるから。またな、二人とも…。」

やや肩を落とし気味なまま、元気のない手がフラフラと揺れ、

ダットはトボトボとお店のある方向へと歩いて行った。

「…?ダットどうしたのかな?元気無くなったね?」

「え?あ~…うん。疲れてるんじゃ、ないかな…?」

「やっぱり」な反応のエマに、ちょっと返答に困る。

遠ざかってゆくダットの後ろ姿を、私とエマは、違う思いのまま見送った…。


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