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少女と竜の物語-輪廻-  作者: ひととせそら
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3.出会い

…。

そよそよと、風が吹いている。

さわさわと、草の擦れる音がする。

ゆっくりと目を開けてみた。

開けた土地と、緑の草花。

そこに何本もの折れた白い柱が見えた。

(白い…柱…きれいだなぁ…)

ぼうっとした意識の中で、白い柱だけが目に留まった。

ゆっくりと、瞬きを数回…。

「意識が戻ったか?」

「…っ?!」

後ろから聞こえてきた声に驚き、一気に意識が覚醒した。

体を起こして勢い良く後ろを振り向く。

「ふむ、元気そうだな。怪我も回復してるようで何よりだ。」

「……。」

濃い緑色の、私の何倍もありそうな大きな体に翼、尻尾…。

それに、綺麗な金色の瞳…。

目の前のものに、私は魅入ってしまった。

「…? どうかしたか?」

「…え、あ…。」

その声に、はっとする。

「あ、の…あなた、は?」

「うん?俺か?

俺は成竜せいりゅうエルドグランド。」

「エルド、グランド…。」

綺麗な金色の瞳が、一層煌めいた。

「お前は?」

「わ、私、は…リーリア、です。」

「そうか、リーリアか。良い名前だな。」

…。

そよそよと、風が吹いた。

「あ、あの…」

「うん?」

「「せいりゅう」、とは?」

よわい100を超した、独り立ちした竜の事だ。」

「りゅう…竜?!」

今朝、聞いた単語に胸がドクンと波打つ。

「竜とは、その、絶滅したとされる、あの「竜」、ですか…?」

「ふむ…そうか、この世界では竜はもう存在しないものだったか。」

ゆらゆらと、長い首が揺れた。

今朝のおばあちゃんの言葉を思い出す…。「竜の守り人様」。

「竜の守り人様…?」

「うむ、そうだ。」

金色の瞳がしっかりと私を見据えた。

「この世界が出来てからというもの、代々俺達はこの神殿で人々を

見守るという任を担ってきた。それが先祖達と、この地に住まう者達との

約束だからだ。」

「約束…。」

とても古い、人と竜との約束事…。

なんだか昔話でも聞いている気分になってきた。

「まあ、そんな昔の話はどうでも良い。お前は何であんな崖の下で寝ていた?」

「崖の下…。…あっ。」

崖から落ちた事を今、思い出した。

…思い出したら体のあちこちが痛くなってきた気がする…。

「ね、寝ていたんじゃないです!落ちたんです!」

とりあえずそこは強く否定しておいた。

「はは、悪い悪い。分かって言ったんだ。

そんなに擦り傷をあちこちに負った体を見たら分かるさ。

意地悪言って悪かったな。」

擦り傷…。

改めて自分の体を見回してみると、スカートから除く素足に擦り傷が

たくさん出来ていた。

「…痛むか?」

先程とは変わってとても柔らかで、私を気遣ってくれている事が分かる

優しい声が、頭上から降り注いだ。

「えっと…少し。でも大丈夫です。家に帰ればいくらでも薬草がありますから、

傷薬には困りません。」

竜の守り人様の優しい声に応えたくて、私は笑顔を返した。

「そうか…強いな、お前は。」

また柔らかで優しい声が響く。

「しかし、お前の家には大量の薬草があるのか。薬屋か何かなのか?」

「はい。私のおばあちゃんが薬屋をしていて、私も薬草摘みを手伝って

いるんです。今日もそのお手伝いで森に来たんです。」

「そうか。その薬草摘みはもう済んだのか?」

「はい。…あ。」

話していて薬草が無事か気になって、薬草を入れた袋を取り出して

中身を確認した。…少し葉がよれているものの大丈夫そう。良かった。

「それなら今日は早く帰った方が良いんじゃないか?

傷の手当は早い方が良いだろう?」

「そうですね。でも折角、竜の守り人様に会えたんです、

もっとお話したくて…。」

「俺ももっとお前の話を色々聞いてみたいが、傷が心配だからな。

お前さえ良かったら、また別の日にここへ来てくれないか?」

「良いんですか?私の方こそお願いしたいくらいです!あ、でも…。」

「でも?」

ふと、辺りを見回す。見覚えのない景色に。

「ここに辿り着けるかどうか…。」

「ふむ。それなら村からの道順は教えてやろう。でも今日の所はその傷だからな、

村のふもとまで送ってやろう。さあ、背に乗れ。」

ゆったりと首を下げ、乗る様に施され、私は竜の守り人様に体を預けた。

そして、一時の空の旅へと飛び立つ…。


………。


……。


…。


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