2.薬草取り
「アムタの根と、ヤーノ草。よしっと!」
薬草取りは今日も順調に進み、私は目的の薬草をいくつか手に入れて、
大事に袋へ仕舞い込んだ。
そして森の景色を見ながら、今日ものんびり散策をしながら帰ろうかなと
思っている時に、ふと、今日の朝のおばあちゃんの言葉を思い出した。
「竜の守り人は、この森の奥の神殿に…。」
村とは逆の、森の奥であろう方向をジッと見てみるが、うっそうと茂った木々しか
私には見えなかった。本当に神殿なんてこの先にあるのだろうか?
でも、もうこの世界から絶滅したとされている竜という存在が、
もしそこに居るなら…。
…。
ざわざわと蠢く木々を見つめる。
…。
居るわけ、ない、よね…。
…。
でも、気になるな…。
…。
お散歩…。そう、お散歩なら良いよね。
自分を納得させたようにし、私は森の奥へ足を向けた…。
………。
……。
…。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
さやさやと、木々が風に揺れる音…
時々、小鳥達がさえずっている声…
不規則に歩く私の足の音…
陽も高く、木々の間から差す光が穏やかで、
とても気持ちの良い気分で足を進めていた。
デコボコな道をゆっくりと、ゆったりと…。
それはやっぱり“お散歩”な感じだった。
でも、行けども行けども神殿らしき物は全く見えては来なくて…。
…。
(やっぱり、適当に進んでみたって、見つかるわけないよね…。
本当にあるのかも分からないし…。)
…。
ふと、足を止めた。
(……。帰ろう…。)
くるりと踵を返して元来た道の方へ…。
方へ…。
…。
(た、たぶん…こっち?)
似たような景色ばかりで、自信が無くなってきた…。
しばらく歩みを進めてはみるものの、さっきよりも周りの景色は薄暗く、
生い茂る葉は色味を増している。
段々色濃くなっていく森の景色を前に、不気味さがじんわりと心に広がってきた。
(…どうしよう。道に迷ったかも…。)
不安で一杯になってきて、思わず近くの大木に手を添えて寄り掛かろうと…。
…視界が揺らぐ。
手に何も感触が無い…。
手の先へ視界を移すが、一瞬ずっと先に青い空が見えて、
体はそのまま体制を崩して、地面の無い先へと向かって行き……
(…っ―――!!!!)
………。
……。
…。