1.いつもと違う朝
ピピピ… チチチ…
「…んん…。」
心地良い小鳥の声。
麗らかな日差しが、私の体に当たる。
(…朝…?)
何かの夢を見ていたような…見ていないような…。
そんな微睡の中、私は目を擦りながら、
まだ温もりの残る柔らかな布団からゆっくりと体を起こす…。
のどかな村の、いつもの景色。いつもの朝。
もう一度目を瞑り、深呼吸を何度もする。
(…よし!)
目も覚めてきた私は、自分の部屋を後にした。
………。
……。
…。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「おや、リーリアかい。おはよう。」
「おはよう、おばあちゃん。」
いつものおばあちゃんの柔らかい笑顔。
私は、いつもの朝食の準備をして、おばあちゃんの向かいの席に腰を下ろした。
他愛のない会話を始める。いつもの光景。
「おばあちゃん、今日の薬草取りのお手伝いは?」
「そうだねぇ…。アムタの根と、ヤーノ草をお願い出来るかね?」
「うん、任せて!」
おばあちゃんが薬屋さんをしているので、薬草取りを毎日手伝っている。
これもいつものやりとり。
私が席を立って薬草取りの準備をしに行こうとすると、
おばあちゃんが話しかけてきた。
「そうだ。今日はとても穏やかだから、こんな日は竜の守り人様に
会えるかもしれないねぇ。」
「…竜の、もりびと?」
何故かいつもと違う言葉が飛んだ。
「そうだよ。この大陸を見守ってくれている竜が、あの森の奥の神殿に
おわすんだよ。」
おばあちゃんは家のずっと先、村の外にある森の方を窓から眺めた。
「神殿?でも神殿なんてまだ一度も見た事もないよ、私…」
「ふふ、守り人様は恥ずかしがり屋なのかもしれないねぇ。」
そんな事を話して、おばあちゃんは部屋へ行ってしまった。
「竜のもりびと…。もりびと…?」
私は不思議に思いながらも、いつもの薬草取りへと出発した。