-99- 意識
準備は十分に行われ、いよいよ実施に向けての最終段階に至っていた。こう書けば、まるでロケットの打ち上げ間際か何かを連想させるが、コトは至って簡単で、小学校に通う正也の朝の寝起き場面だった。数億円が無駄に消える・・などという馬鹿げた話ではない。
明日は遠足だというので、正也は意識して、いつもの30分前に眠ることにした。両親に言われたから・・ではなく、自主的に意識したところがパチパチパチ…と手が叩ける偉いところだ。が、しかしである。目覚めると、用意 周到に準備して枕元に置いたはずの水筒が見つからない。さあ、弱ったな…と、正也は思うでなくアチラコチラと探し始めた。これも思うでなく少し寒いな…と思えたのは探し始めた5分後で、正也はまだパジャマから着がえていないことに気づいた。目覚ましは30分早く寝たのが功を奏したのか、セットした時間より小一時間も早かったから、まだ十分にゆとりはあった。正也は意識して、いつもの服に着替えた。これも自主的に・・だから偉い。着替えて水筒の捜索を再開した正也だったが、水筒は見つからない。まあ、いいや…と思うでなく捜索を断念した正也は洗面所へ歯磨きに向かった。
「正也、これっ!」
母親の未知子がキッチンから出てきて、水筒を正也に差し出した。そのとき、正也は意識して水筒を未知子へ手渡したことを思い出した。お茶を淹れてもらうのだから、枕元に置いておいても仕方がないな…と、思うでなく意識して枕元へ置くのを変更したのだった。
「…」
正也はニンマリ! とした顔で受け取った。なんだっ! と、よかった! が合わさったような気分で、である。
このように意識してやったことは、逆転の結果を招きやすいから、意識しないでコトに望むことが成就する秘訣なのかも知れない。
完
※ 正也君、未知子さんは風景シリーズの湧水家からの特別出演です。^^




