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-90- その時(とき)

 日々、何げなく過ごしていると、そのときという瞬間を意識しなくなっている。というよりは、知らないあいだに無駄にしてしまっているのが日常の私達の生活といえる。ところが、よくよく考えてみれば、その時という瞬間にこそコトの成否せいひが隠されている・・と、逆転して考えられるのだ。たとえば、老ノ坂にさしかかった戦国武将、明智光秀が、『敵は本能寺にありっ!』と言ったかどうかまでは直接聞いていないから分からないが、その時、決断したことは史実に残る事実である。

 とある野外公園のトイレの前にはイベント開催の関係からか、長蛇ちょうだれつが出来ていた。

「まだ? でしょうね…」

 列の最後尾さいこうびに並ぶ男が、それとなくその前に並ぶ男に声をかけた。

「ええ、当分はっ! どうも進んでないようですから…」

 その時、前の男は突然の声にギクッ! としたが、振り向いて咳払せきばらいを一つした。そして、えりただしてそう言うと、また前を向いた。

「弱りましたな。出そうなんです…」

 最後尾の男は、言うでなくつぶやいた。その声が聞こえれば無碍むげにも出来ない。前の男は、また振り向いた。

れる方ですか?」

「ははは…そちらじゃないんです」

 その時の笑いが、最後尾に並ぶ男の明暗めいあんを分けた。前の男は、その笑いに、『余裕あるじゃねぇ~かっ!』とカツンッ! と頭にきたのである。

「そうですか、お気の毒に…」

 前の男は内心で『馬っ鹿! 漏らせ漏らせっ!』と笑いながら、外面そとづらは同情っぽく言った。

 その時という瞬間は、どうしてどうして、なかなかの曲者くせもので、あなどれないのである。


                   完

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