-71- 起死回生(きしかいせい)
起死回生・・とくれば、逆転・・という言葉がよく合う。それほど、起死回生の四文字には、ほぼ諦めていた当事者をオオッ! と感動させるオーラ[雰囲気]がある訳だ。むろん、起死回生された側からすれば、ほぼ、こちらの…と勝利を確信していたのだから、チェ! とテンションが下がることにはなる。
明日の発表会に向けたママさんコーラスの最終打ち合わせが公民館の和室で行われていた。確認をしているのは部長の大口だ。
「奥目さん! 出席できますかっ!?」
「出来ないとは思いますが…」
奥目は小さな声で大口に返した。
「えっ? どちらなんです?」
「それが…上手くすれば参加、出来るんですが、ほぼ出来ない・・というようなことで…」
「出来ない・・で、よろしいですね?」
「ええ、まあ…」
「はい! それじゃ、顎長さんは?」
大口の出欠確認は進んでいった。奥目はお茶を飲みながらお茶を濁した。奥目がはっきりしなかったのには理由がある。中学二年のドラ息子の不始末で学校に呼び出されていたのだ。重なった時間から見て、早く済めば発表会に間に合い、長びけばアウトとなる。ここは起死回生の妙案が浮かべば…と奥目は考えたが結局、欠席・・ということで家路に着いた。
起死回生は夕食どきに訪れた。
「な~んだ! それなら、俺が行ってやるよっ!」
ポ~ン! と長打のホームランを打ったのは夫だった。上手い具合に会社の休みが取れたのだという。
「よかったわっ!!」
起死回生は、逆転のいい気分にさせる即効薬である。
完




