-65- 使いよう
得心できる、いい格言がある。━ 馬鹿と鋏は使いよう ━ だ。どんなものでも、その使いようを考えれば、上手く利用できる・・という訳だ。使う人の使いようによって、成否が逆転する・・ということも当然、有り得ることになる。
「灯守さん、急かせてすみませんが、アレどうなりました?」
「ああ、アレですか。ははは…アレはまだ…」
部長の狭島に訊ねられた第一課長の灯守は一瞬、しまった、忘れていた! と思ったが、顔には出さず、悟られまいと余裕めかした笑顔で開き直った。
「そうでしたか、いや、どうも…。君の仕事は100%間違いがないが、出来るだけ早く頼みます」
穏やかに返した狭島だったが、内心は、人選を誤ったか…と、悔いた。要は、人材の使いよう間違いを・・である。第二課長の短崎だったら、出来ていたか…とも思えたが、灯守がいる手前、微笑んで濁した。一応、安全策を取るか…と、さらに巡った狭島は、短崎にコンタクトを取り、灯守に依頼した仕事を打診した。
「ああ、アレですか。アレなら万が一を考えて、私もやっときました。明日、お持ちしましょう!」
「なんだ! そうでしたか。それは助かりまります! いや、有難う!!」
狭島は短崎の手を両手で握り締め、礼を言って感激した。専務の呼び声が高い狭島としては、これで
役員の面々に対し面目躍如といったところである。そんなことがあった日以降、短崎は狭島の剃刀として、切れのいい腕で使われるようになった。で、一方の灯守は? といえば、これもまた、剃刀仕事後の確認役として重宝されている。これが、使いよう・・ということだろう。
完




