62/100
-62- 雨の日
雨が降っている。しかし、よくよく考えれば、雲海の上は晴れている・・と、話は逆転する。早い話、お日さまは楽しい休日となる訳だ。お日さまが日々の疲れを取ってお休みになるのは、いわば、人が骨休みで快適な旅に出て保養する・・みたいな感じだろう。恐らくは、新鮮で美味しい霞なんかを食べ、舌鼓を打たれていることだろう。
「ああ…降っているか。まあ、今日は別にすることもないからな…」
歯を磨きながら下界の川豚は朝から降り出した雨空を見上げ、陰鬱にブツブツと呟いた。こういう雨の日は、なぜか心のテンションも下がるというものだ。そこへ飼っている猫のミケが現れた。動物病院の獣医、鳥海が、「ほう! 三毛で雄とは珍しいっ!」と、驚いた曰くつきの猫だ。今年で三才になる。そのミケが顔を手でナデナデしたあと、ニャ~~とひと声、鳴いた。
『雨ですか…』
ミケはそう言ってご主人である川豚の様子を窺ったのだった。
「はいはい…」
ミケは川豚の気分を言ったのだが、ニャ~~の意味が分からない川豚は、さてと…と、餌の準備を始めた。ミケは、ふたたびニャ~~と、やや大きめの声で鳴いた。
『そうじゃないんですよっ!』
雨の日は意味が通じない逆転した誤解を生むようである。
完




