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-60- いい話、悪い話

 表立っては、なるほどっ! と得心とくしんが出来るいい話でも、悪い話だった・・ということがある。世の中は、そう甘くないことを裏づける厳然げんぜんたる事実だが、昨今さっこん、いい話は逆転して悪い話だ・・と考えてもよさそうな殺伐さつばつとした時代に至っている。マルチ商法のいい話に、ついフラフラと乗せられ、自殺を考えるほどの大損おおぞんをさせられたあわれな独居どっきょ老人の話には、思わずぅぅぅ…と涙を誘われるが、まあ不用意だった・・という自己責任も当然、あるはずだから、[痛いたかゆし]といったところかも知れない。むろん、犯罪行為は許されるはずもないが…。

「コチラとソチラ、滝山さんはどちらがいいと思われますか?」

「なんです? 急に…」

 川釣り専門店で偶然、出くわした愛好会の二人が語り合っている。話し合っているのではなく、語り合っているのである。ただ短なる世間話ではなく、釣り仲間の専門的な話だから語り合っている・・と、まあこうなる訳だ。

「いや、どちらか買おうと思いましてね」

「そらぁ~私は、コチラの竿さおの方がいいと思いますが、使うのは岩池さん、あなたですからな…」

「なるほど、コチラですか…。特価品ですが、コチラですか?」

「いや、コチラじゃなくちゃ! という訳ではないんですよ。ソチラでも十分、いいと思います。ふところ具合さえいいようでしたら…」

「そうですか…。安いのは何かあるんじゃ? と思えるんですよ、私には」

「でしたら、ソチラでいいと思います」

 どっちでもいいだろっ! と内心、迷惑気分で滝山が選んだコチラの釣り竿は、店が限定販売した見切り品で、超特価の安さだった。ところが、である。一見いっけん、特価品には何か問題がある・・と思われがちなコチラの釣り竿が、実はお買い得商品の代表格の品で、普段ならソチラの倍の値がする最高級品だったのである。要は、いい話だったということだ。逆に、岩池が選んだソチラの釣り竿は、高価な上にしつが余りよくなかった。

「それじゃ、滝山さんの言うとおりコチラに…」

 岩池は折れ、滝山に従った結果、折れなかった。危うく悪い話になりそうだった買物が、いい話へと逆転した訳である。世の中に逆転は付きものだ。


                   完

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