-57- 邪魔(じゃま)
邪魔とは、人がしよう! とする行為を制限することである。これは、強制的に相反する行為をすることで相手の行為を妨げることに他ならない。ところが、強制した者は回り回って必ずその報いを受ける・・という破目に陥る。この3次元世界の科学では到底、説明がつかない現象を、残念で悲しいことながら、誰も認識できていない。平たく言えば、自業自得となる・・ということを。
「登入さん! 悪いが明日、私に変わって忘年会に出てくれませんか? 私、ちょっと急用が出来ましてね」
「ああ、はい。いいですよ…」
課長の糞野に頼まれた係長の登入はニタリ! と思わずしそうになり、懸命に堪えた。というのも、登入にとってこういった会合は楽しみ以外のなんでもなかったのだ。だが、今一、仕事が遅い登入は、いつも残業を余儀なくされ、出席できなかったのである。そこへ、この天女が舞い降りたような幸運な話だ。美酒に酔いしれ、美味い料理に舌鼓を打つ・・なんとラッキーだっ! …と、登入はニヤけ出した。
「んっ? どうかしたの、登入さん」
「いや、べつに…」
懸命に堪えていたものが、ついに…である。それを近くの席で見聞きしていた課長補佐の手蕗は面白くない。課長、俺でしょ?! と思わず言いそうになり、不満げに机上のパソコンへ視線を落とした。よしっ! こうなっては妨害以外に俺が頼まれることは、まずない…と思えた手蕗は、登入が忘年会へ出られないようにしようと策を練った。
「登入さん、このファイル整理、明日までにしてもらいたいんだ、よろしくねっ!」
手蕗は内心で、フフフ、これで明日の忘年会は無理だろう…と読んだ。ところが、である。次の日の朝が巡ると、事態は一変していた。他の課から回された急な仕事が課長の糞野から手蕗に命じられたのである。しかも、登入が手蕗に頼まれたファイル整理は、これも課長命令でボツになったのだった。
「じゃあ! 課長。出席させてもらいますっ!」
「ああ、なにぶん、よろしく頼むよ」
近くの席で聞いていた手蕗は、思わずチェッ! と舌打ちした。
結論として言えることは、邪魔をすれば逆転して邪魔をされる・・ということだ。
完




