表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/100

-55- 植え替(か)え

 盆栽はある程度の年月で植ええをしなければ木が痛み、場合によっては枯れる。根が伸び過ぎ、用土が細かくなリ過ぎた結果、通気性が損なわれて枯れる訳だ。そのために植え替え作業となる訳なのだが、これがどうして、簡単なようで、なかなか難しくれがいる。馴れればどうってこともなくなるが、それまでは経験の積み重ねが大事となる。人の場合も同様で、人事異動は丁度、この植え替え作業と似ていなくもない。公務員の鴨崎かもざきにとってせまる四月の異動は、あたかも植え替えを待つ盆栽のはちだった。

 盆栽の植え替え作業は植木職人だが、課長の鴨崎が勤務する場合は、泣く子も黙る人事部管理課[略称は人管]だ。この人管によって多くの同僚が悲喜こもごもの涙を流したのである。嗚呼ああ、いよいよ俺の番か…と鴨崎は深い溜め息を一ついた。

「鴨崎さん、ちょっと!!」

 部長の鍋蓋なべぶたが煮えたぎった顔で、今にも出しじるへ放り込みそうな声で鴨崎を呼んだ。

「は、はいっ!!」

 鴨崎は、俎板の鯉のような気分でイソイソと部長席へ近づいた。

「実は…先ほど人管から内示を受けてね」

「はい…」

「君は四月から別の鉢へ、いや、別の部へ移動が決まったよ。一応、内示しておくから、心しておくように…。部は○□部で、次長せま)待遇だっ! よかったなっ!」

 ○□部の次長待遇なら、万年課長だった鴨崎にとってはおんの字だった。

「はっ! 有難うございますっ!!」

「いや、私は何もやっとらんよ。君の日常の努力が認められた結果だ。よかったな!」

「は、はいっ! 有難うございますっ!! ぅぅぅ…」

 万感ばんかんせまった鴨崎は、思わず嗚咽おえつの声をらした。

「馬鹿野郎! 泣くやつがあるか。ははは…」

 鴨崎は上手い具合に植え替えられ、ようやく、いい鉢へとおさまった。


                   完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ