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-54- 氷と水

 氷はコチコチで固く、まったく動かない。水はその反対で、グ二ャグニャで変化して、よく動く。人々が暮らす世間でも、この両者はせめぎ合っている。どちらがいいとか悪いという問題ではなく、両者には一長一短があるのだ。

 とある中学校の職員室である。

堅仏かたぶつ先生! アノ用紙、出来てます?」

「アノ用紙? アノ用紙といいますと、先だってテストされたアノ書類ですか?」

「ええ、アノ用紙です」

「アノ用紙は昨日きのう、お渡ししたはずですが…。おかしいなぁ~」

「何言ってるんです。受け取ってませんよ」

 教師の軟泰なんたいは堅仏に不満たらしく返した。堅仏は一週間前の記憶を思い出したのである。明らかな勘違いである。この一週間前の記憶の氷が軟泰によって解かされないと、アノ用紙は堅仏の自宅の机の中で眠ったままになる・・という由々しき事態を招いていたのである。アノ用紙とは大事な試験の答案用紙で、急がしかった軟泰が同僚教師の堅仏に採点を頼んでおいた用紙だったのだ。さらに深刻なのは、有名高校への進学のかぎを握る模擬もぎテストだったから、最悪の事態だった。

「弱ったなぁ~! さて、どうする?」

 軟泰は困り顔で堅仏を見た。ところが、話は逆転するようなかん違いで、少しも軟泰が困る必要はなかったのである。というのは、軟泰は先を読み過ぎていたのだ。有名高校の試験は3年生に実施されるべきはずの模擬テストだったのだが、軟泰がテストさせたのは2年生だったのである。1年先の有名高校試験用の模擬テストを2年生に受けさせたのだった。軟泰はその勘違いにまったく気づいていなかった。

 物事を氷のようにいつまでも維持いじし過ぎるのも問題だが、逆転して水のように先へ先へと軽く流し過ぎるのも問題となる訳だ。


                   完

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