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-52- 肩(かた)叩(たた)き

 どうも疲れている…と、錦木にしきぎは片手で肩をポンポン・・とたたき始めた。会社で残業する日が多くなったからな…と、錦木は思いながら得心した。ここ最近、会社内の雰囲気は悪く、そうでもしないとリストラ対象になりかねない状況だったから、いい意味ではなく悪い意味で肩をポンポン・・と叩かれては困る訳だ。そんなことで残業続きの日々となったのだが、錦木としては、たまには何も考えず、馴染なじみのすし屋で上トロを頬張ほおばりながらあつかんでキュッ! と一杯やりたい心境だった。その馴染みの鮨屋も、ここ最近、とんと、ご無沙汰ぶさたしていた。

 錦木が暗い課内で机上の蛍光灯一つでパソコンに向かっていると、そこへガードマンが一人、懐中電灯を照らしながらドアを開けた。

「ああ・・錦木さんでしたか。遅くまでご苦労さまです!」

「ああ…警備の堀田さん」

 錦木は思わず手を止め、振り向いた。堀田は錦木のデスクへ近づいた。

「いやぁ~誰かがお残りなんだろうとは思いましたがね、これも念のためです。仕事ですから…」

「そら、そうです。いや、ご苦労さまです」

「お互いに…」

 二人は顔を見合わせ、笑い合った。錦木は首を回しながら肩をポンポン・・と何度か叩いた。

「最近、お疲れなんでしょうな」

「はあ、まあ…。会社の状況が今一、きびしいですから」

「実は私も、ポンポン・・の口なんですよ」

 堀田は隣りのデスクの椅子へ座った。

「…と、言われますと?」

「前の会社で肩を叩かれまして…」

「叩かれましたか…」

「はい、叩かれました。それで、今です」

 二人は顔を見合わせ、また笑い合った。

「私もお世話になりますかな」

「その気分なら、リラックスできて肩を叩くほどお疲れにはならないでしょう」

「ははは…それもそうです。そのせつはよろしく」

 その日以降、腹をくくった錦木は、残業しなくなった。成りゆきにまかせたのである。この逆転の発想で、錦木の肩はらなくなった。


                   完

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