-50- 意気込み
思ったことを、何がなんでもやってしまおう! というのが意気込みだ。意気込みがない思いつきは失敗を招きやすい上に、下手をすれば、逆転して取り返しがつかないことにもなりかねない。
日曜の朝、味噌川は、ふと思いついた料理を作ってみよう…と思わなくてもいいのに思ってしまった。テレビに映っていた料理番組の料理が余りにも美味そうだったからだが、思ってしまったものは仕方がない。生憎、妻と子は田舎の実家へ帰っていて、家の中は味噌川一人だった。まあ、思いようによっては横からとやかく言われず、やり易くはあった。ただ、綿密に計画を立てて、やろう! と意気込んだ調理ではなかったから、材料も当然、整っていなかった。それでも、まあ代用品でもいいか…とキャベツ代わりに白菜を、牛肉代わりに豚肉を使って調理することにした。主役が倒れたから急遽キャストに代役を立てる・・というのに似ていなくもなかった。
「おかしいなぁ…」
この言葉が味噌川の口から漏れ出たのは、調理を始めて小一時間が経った頃である。味はそれなりの味に仕上がっていたが、仕上がった外観がサッパリだった。どうサッパリなのか? といえば、見た目がグチャグチャで、材料をそのまま放り込んで煮た・・というような仕上がりだった。テレビでは綺麗に皿へ盛り付けられていたから美味そうだったものの、出来上がった代物はサッパリ食欲が湧かなかった。
「まあ、仕方ないか、そのうち腹も減るだろう…」
愚痴ともつかない言葉で調理をやめて片づけると、味噌川は他の雑用をやることにした。出来上がった料理は、容器に入れて冷蔵庫へ収納しておいた。
それでも人間は上手く出来ている。雑用をしているうちに味噌川は腹が減ってきた。よしっ、食べるかっ! と、味噌川は意気込んで腹を満たすことにした。そして、冷蔵庫から意気込まずに仕上がった料理を取り出し、意気込んで食べ始めると、案に相違して美味かった。
意気込むことは、大事なのだ。
完




