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-44- 苦

 苦も人生修行と思いなされ・・などと寺の高僧に言われれば、ああ、そんなものなのか…と私達凡人は思ってしまう。世俗せぞくにいるのだからそれも当然なのだろうが、落ち着いて考えれば、それもそうだな…と思えなくもない。逆転した考え方だが、苦が自分自身を高める・・という高級な発想だ。

 とある町役場の課内である。課長とおぼしき男が、やたらと歩き回り、アチラコチラと探している。

「妙だな? 平山さんの姿が見えんが、どうしたのかね、君?」

「えっ? あっ! おられないですね。つい今までとなりのデスクでウトウト眠ってました、いや、おられましたが…。おかしいなあ~?」

「おかしいって君、隣りの席だろっ。分かりそうなものじゃないかっ!」

「課長はそう言われますがね。平山さんは、いつの間にかスゥ~っと消えられるんで、皆に幽霊職員と呼ばれてるんですっ!」

「だから、それがどうしたの! そうだとしても、フツゥ~は気づくだろうがっ! 隣りなんだからっ!」

「ええ、まあ…それはそうなんですけどね。妙だなぁ~」

「妙って君、隣りにいて、そんな」

「課長はご存知ないないだけですよ。あの人、苦のない方ですから。たぶんお身体からだが軽いんじゃないでしょうか」

「ははは…上手うまいこと言うなあ、君。私なんぞ、苦だらけだから、かなり重いよっ。そんなことは、どうでもいいんだっ! …しかし、そういや、体重が増えたな…」

 課長はひとりごちた。

「それで課長。平山さんになんなんです?」

「んっ? なんだったかな…」

 課長は席へと歩き始めた。いつの間にか、苦のない平山は、またスゥ~っと席に着いていた。私ならここにいますが…と言おうとした平山に、二人は気づいていない。

 苦がないと自身の向上はなさそうだが、逆転して、どうも忍者の身軽さが備わるようだ。


                   完

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