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-37- 味覚の嗜好(しこう)性

 スキ焼は、なぜあんなに美味うまいのか? を真摯しんしに研究する風変わりな学者がいた。名を善哉ぜんざいという。もちろん、世間で表立って話せる学問ではないから、その学者はその研究を━ 一般大衆による味覚の嗜好しこう性 ━ と名づけることで正当化しようとした。むろん、大学からはその件に関する研究費が出る訳もなく、自費による別枠の研究として自分の研究所内で立ち上げたのである。迷惑に思う助手の辛口からくちは尊敬できない眼差まなざしで善哉を見た。

「君、そういう目つきで私を見るんじゃないっ! この研究も、いつの日か世間で脚光を浴びる日が来るはずだっ!」

「来るでしょうか?」

「… 来ないかも知れんが、無駄むだにはならないはずだっ!」

「そうでしょうか? 僕には無駄以外の何ものでもないように思えるんですが…」

「君はそういうがね。あの残りじるが実に、なんというか…たまらなく美味うまいんだよ」

「それは先生がそう思うだけでしょ。味覚には個人差がありますよっ!」

「君はそう言うがね。スキヤキという名の歌も過去にあったくらいだよ。逆転の発想でいけば、スキ焼には何かあるっ! ところで、研究材料は買ってあるんだろうねっ!」

「はいっ! 肉も白滝も焼豆腐、それから葱も買ってありますっ!」

「おいっ! シイタケと菊菜はどうしたっ!」

「あっ! 忘れましたっ!」

駄目だめじゃないかっ! シイタケと菊菜が風味づけなんだから…」

「どうも、すみません…」

 口ではあやまりながら個人差、個人差! …と辛口は思ったが、思うにとどめた。

「いいよ、いいよ…私がこれから買ってくるから」

 善哉が買いに出たあと、辛口は味覚の嗜好性の研究が心理学というより料理学に逆転しているな…と思った。


                   完

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