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-3- 劣化(れっか)

 物は時がてば劣化れっかする。いくら新しくピッカピカの一年生でも、時が経てば、ものすごく、むさくるしいオッサンやオバサンになる。ウッワァ~~! 君があのっ! 可愛かわいかった子供かい!? などと言われ、思わずムカッ! としても、それはそれで事実なのだから仕方がない。逆転の発想は、ならば、それなりの年の味わいを見せてやろうじゃないかっ! と、卑屈ひくつにならず開き直る発想だ。開き直る・・ここがポイントである。確かに、年相応の生き方、過ごし方、身嗜みだしなみが、あるにはあるのだ。ただ悲しいかな、大半の高齢者がそれに気づいていないのが残念ではある。なにも、高い、あるいはド派手な衣装を身につけて着飾るのが逆転の発想ではない。地味じみで立ちの中にも、ピカッ! と隠れて光る瑠璃るり色の輝きもある訳だ。もちろん、青紫の瑠璃の光だけでなく、だいだい色の光もあれば黄色、緑…と、いろいろ光もある訳で、そこはそれ、各人各様なのだが…。

「小林さんは、いつも地味だねぇ~~。立ち居振る舞いもさることながら、身嗜みもシックでさぁ~」

「そうですか? いや、まあ…」

 課長の目館めだちとは同期ながら、万年平に甘んじている不居いずは、ばつ悪く、ぼかして返した。

「私なんか、一日も持たんよ。ははは…」

 そう言いながら、目館はあつらえの高級背広に付いたほこりを片手で払いながら嫌味いやみな笑いを浮かべた。だが、不居は取り分けてどうこう思っていなかった。不居には、ほこらず・・という見えないオーラの輝きがビカッ! とあった。課員達が[先輩]と呼んでて尊敬する不居と、立場上、仕方なく従っている目館とは、明らかに存在感が逆転していた。目館はすでに人間として劣化していたのである。


                   完

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