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-12- 遅(おそ)かれ早かれ

 おそかれ早かれ、そうなるのであれば、逆転の発想で、そう急ぐこともなくデェ~~ンと開き直ってゆったり構える・・というのも一つの手段ではある。

 夜、七時を過ぎた会社のオフィスである。

「いつも残業続きで悪いねっ! 落谷さん、今日はもう、引いてもらっていいよっ!」

 離れたデスクに座る課長席の山家やまがが万年平の同期、落谷に慰労の声をかけた。

「いやぁ~もう馴れてますよっ! それに今、帰ったところで、恐妻はいびきをかいて熟睡じゅくすい中で、遅かれ早かれ、売れ残ったコンビニ弁当、一つですから…」

 山家は「わびしいねぇ~』と思わず言おうとし、あわてて口をつぐんだ。

「…いやまあ、それはそうなんでしょうが…。どうです! 帰りにちょこっと店で食べて帰りませんか? 私のおごりでっ!」

「いや、それは悪いですよっ、課長!」

「同期の間で課長はよしましょうよ、課長はっ! 誰もいないんですから…」

「はあ、どうも…」

「山家で結構です、山家でっ!」

「いくらなんでも、呼び捨てはっ!」

 山家は聞いた瞬間、『呼び捨てるんかいっ!』と思ったが、思うにとどめ、笑ってぼかした。

「ははは…、山家さんでいいですよ」

「はあ、どうも…」

「行きつけの、いい店がありましてね。一杯も飲めます」

「そりゃ、いいですねっ! しかし、奢りというのは…」

「まあまあ、そう言われず…。私も、帰ったところで遅かれ早かれ独り身ですから…」

 落谷は聞いた瞬間、『侘しいなっ!』と思ったが、思うにとどめ、笑ってぼかした。

「ははは…でしたね」

「ははは…まあ」

 二人の職場上の立場は逆転していたが、遅かれ早かれ、急ぐ必要もない孤独な同じ穴のむじなだった。 


                   完

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