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-10- 斜(はす)に構(かま)える

 はすかまえる・・とは、物事の本質を違った角度からとらえて考えるという、ある意味での逆転の発想である。

「あ~あ…」

 朝から溜め息混じりにつぶやくのは、この寺の住職で老僧の空腹だった。空腹は名前こそ笑える僧名ではあったが、これでもどうしてどうして、かの有名な仏師、円空の流れをむ遠い遠ぉ~~いお弟子? には違いなかった。とは、空腹の勝手な自説だったが、その空腹が朝から溜め息混じりに悩んでいたのである。その訳は本堂横の書庫から夜な夜なポコポコ…と音がするためだった。それが日々、続いたから、空腹は眠れなくなった。これでは朝のおつとめもままならない。いったい何の音じゃ? と気になった空腹はある夜、こっそりと書庫をのぞいてみることにした。すると驚くことに、十数匹の子狸と一匹の親狸がポコポコと腹鼓はらつづみを打っているではないか。どうも腹鼓の練習をしているようじゃ…と空腹には思えた。さしずめ、あの大きい親狸が先生といったところじゃな? …と思いながら寝所しんじょへともどった。戻ってとこへついてみると、どこから入ったんじゃ? とか、なんとか入れぬようにせずば勤行ごんぎょうにのう… といった雑念が生まれ、益々、目がえ渡った。これでは、いかん! と空腹は、やおら身を起こすと本堂へ籠もり、座禅を組むことした。そしてしばらくしたとき、空腹のわだかりまはうそのように消えていた。

『そうじゃ! 人に人生があるように、やつらにも狸生たぬせいがあるんじゃった…』

 斜に構えてそう思うと、不思議と腹鼓の音が気にならなくなったのである。

 物事を逆転し、斜に構えて捉えることも大切だ・・というお話である。


                   完

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