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俺とワンコで異世界コント  作者: 朝倉 ユウコ
蛇足編
9/9

俺とフロちゃん 再登場の巻!

 気怠い授業を聞き流しながら

 アンニュイな気分で何気なく窓の外を眺める。


 空は俺の気分とは裏腹に雲一つ無い快晴だ。

 飛んでいるのは黒い変な虫……違うな、遠いからそう見えただけだった。

 猛スピードでこちらに向かって飛んで来るて輪郭がはっきりしてくる。あれは――ああ。大型トラックだ


「――は?大型トラック……?!」


 ガシャン!! ドガガガガッ!!


「なんじゃコリャぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 教室の窓を盛大にぶち破って突入したトラックに轢かれた俺は意識を失った。



 ――――暗転。



「という訳で『トラック転生』成功なのである。おかえりなさい冷凍大根の勇者よ!!」

 目を覚ますと、そこに佇んでいたのは一匹のしゃべる犬。


 茶色と白のコケティッシュな顔立ちのパグ

 自称「神の遣い」 俺を地獄の底に叩き落とす混沌の使者


 我が親戚のおばちゃん家のペット「フロレンシア」こと通称「フロちゃん」だ!!


「本日は巷で流行ったという噂のある様式美にチャレンジしてみた趣旨である。なお、ただのトラック転生じゃインパクトに欠けるのでちょっぴりひねりを加えてみたのである。」

「そんなアグレシップなトラック転生があるかぁぁぁっ!!」


 なんでトラックが上空から教室に突入するんだよ!! ミサイルじゃないんだぞ!!

 どんな事故が起きたら教室までぶっ飛んで来るんだよ?!

 っていうか事故でもないよな!! バリッバリに殺りに来てたよな!!


 フロちゃんは俺のツッコミ何故かにパアッと顔を輝かせた。

「何と!! お気に召さないと!! それでは仕方ない、テイク2に移るのである!!」

「え、ちょっ……待っ……」

「3、2、1、スタートッ!!」


 パチン、と手を鳴らす音と共に俺の意識は白く塗りつぶされていった――


 ――――


 下校途中、人のまばらな開けた道路をちんたら歩いていた俺はふと我に返った。

「何か……とんでもない事を忘れている気がするなぁ。何だったっけ?」


 ――きゃああああっ!!

 突如、響き渡る声。

 悲鳴のする上空を見上げると、何と空から美少女が落ちてくる最中だった!!


(空から美少女ネタ?! マジでやってる作品あんま見ない気がするが!!)

(っていうかこのままじゃラブコメじゃなくてスプラッタグロになっちまう!!)


 迷う前に体が動いた。美少女を受け止めようと予想落下地点まで全速で駆け寄る!!

(ガチだと普通は受け止めても死ぬけどっ! 仮にも勇者ならここは動くよな!! ここで受け止めなければ――男がすたる!!)


 しかし、衝突が間近に迫ったその刹那――


 美少女の姿が一瞬で大型トラックに入れ替わった。

 嘲りの声が朗々と響く。


「かかったな!!幻影だ!!」

「――――はっ?!――――」


 俺は大型トラックと衝突し、意識を失った。



 ――――暗転。



「という訳で『トラック転生第二弾 ハニートラップ編』なのである。」

「折れたよ!!心が!! そりゃあもうポッキリと!!」


 何という美少女詐欺!!

 空から美少女が来た時点で嬉しハズカシラブコメワールド突入のはずだろ!! その時点で痛い思いして異世界転生しちゃってどうすんだよ!! 男の純情に付け込んだド鬼畜トラップだこん畜生ぉぉおっ!!


「何と!! まだお気に召さないと!! それでは仕方ない、テイク3に……!」

「ヤーメーロ!!」


 俺の悲鳴に近い拒絶にフロちゃんは酷く残念そうに顔を弛ませた。

「まだ『トイレの中からこんにちは☆ ホラーテイスト編』を実践してないのである。」

「タイトルだけで察しがついたぞ!! あれだな、テレビの古井戸から出現する髪長女さんのノリをトラックと便座でやろうっていう魂胆だな!!」

 ネタ的に古すぎるし。知らない人の方が多いんじゃないか?しかもトイレなんかから出したら叱られそうだ。


「とにかくトラックから離れろ!! 他にも異世界行く導入はいろいろあるだろ、ホラ美少女な美少女お姫様や賢者に召喚されるとか!!」

「うむ、仕方ない ではアニメオープニング定番で行こうか。吾輩勇者その他エキストラでキメッキメ☆に謎ダンスを踊るのである!!」



 バックはカラフルなライトやスターの飛び散る派手派手な演出。

 中央に俺とフロちゃんが華麗に登場。

 犬であるフロちゃんの可愛さを最大限に生かすべく構成されたダンスを息の合ったコンビネーションで披露する。


 バックダンサーにオオカミ、花子さん、石地蔵にデッキブラシ、レポーターのお姉さん(ボッシュート中なので落とし穴で代用)が次々と登場し、せわしないステップをこなす。一人こっそり振り付けをワンテンポ遅らせるのも忘れない。


 登場キャラの人数が少ない所は手足の生えた大根を踊らせる事でカバーする。やはりこういうものは画面が賑やかな方が映えるのだ。


 場面が変わり、アングルが近づいて俺一人にスポットを当てた構成になる。


 下から上まで緩やかな回転を足したカメラアングル。

 せわしない振り付けこなしつつ、顔までカメラが回った所でウインク付きのキメポーズを――


「お寒いノリはやめろぉ!!」


「むう、勇者は『何故か爽やか笑顔で走ってる謎なオープニング』の方が好みであるか。こちらも定番ではあるがダンスの後だとインパクトに……」

「ホントに勘弁してくれ!!鳥肌立ったわ!!大寒波だ!! 恥というものを知れよ表を歩けねえよ!!」


 しかしフロちゃんは仁王立ちになって胸を張り、おもいっきり開き直った。


「この作品自体お寒いノリで出来てるので恐いものは何も無いのである!! むしろ小説でやらずしてどうする、と言っておこう!! 絵付きでやったらビジュアルブリザードは必至、抗議が来るレベルで速攻に致命傷である!!」」

「滑りまくってるけどな。絶望的に。」

 只でさえブラバ必至の展開連打なのに、最後までブラバしない猛者はどれだけいることやら……


「頑張って盛大に滑る人、我はけっこう好きなのである。なので彼らに恥じぬ同士となるべく、あさっての方角を目指してひたすら爆走するのである。」

「その志は買ってもいいが俺は巻き添えを了承してません。」


 疲れた。もうオープニングなんて何だっていいだろ?

「勇者よ、その考えは間違っているぞ!!」


 フロちゃんは「ちっちっ」と手を振ると無駄に偉そうに講釈を垂れ始めた。


「ストーリーの導入とは視聴者をガッチリ捕える為、つまり物語において最大に重要な部分なのである。竜頭蛇尾?エンターテインメントの飽和した現代ではまず注目されないとお話にならないのである!! そしてそれ故に導入とは古今東西ありとあらゆる試行錯誤が成され、技術の粋の詰まった洗練された部分なのである。」

「つまるところ……ネタ的に美味しいのである!! これに手を付けないなどッ、砂糖どっぷりフレンチトーストにメープルシロップバニラアイス缶詰フルーツを投入するが如く甘い考えだと言わざるを得ないのである!!」

 無駄な修飾で笠を増すなよ。胸焼けしそうだ。


「はいはいはいはい。もう十二分に判ったから、いい加減本題に入ってくれ。」

「本題?」

 犬っぽくきょとんとして小首をかしげるフロちゃん。


「何か用事がるから異世界召喚したんだろ?」

「うむ、きちんと説明してはおらんかったな。まあ、用事というのは他でもない。」

 フロちゃんがいそいそと姿勢を正したので、つられて俺も姿勢を正した。


「それで、用事って何だ。」

「出オチである。」


 …………出オチ……?


 ………………

 …………

 ……。


「え?じゃあもう用件済んだのか?」

「イエース、その通りでござい。あと1分程で自動帰宅するので気にせず帰るといいのである。お土産ナシで。」

「さようならなの?! 俺しょうもない話に付き合うためだけに呼び出されまくったの?! もういいよ、二度と俺に関わるな!!」


「全てはネタ神の気まぐれの元に……。愚かなる勇者よ!!ネタが降りてこない事を祈るが良い!!」


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