本気で締めるぜ 超絶必殺! 我が願い、届け!!
「魔王……っ!貴様を許さない、これからが本番だ!!」
「愚かなっ!! 貴様に一体何ができるというのだ!!」
ムンクの叫び面で強がっても説得力無いし。
「(ボソボソッ)やってもーた…仲間の犠牲で主人公覚醒とか王道だわマジ我死亡フラグ――いやいや、それだけじゃあまだ理由としては薄いからヘーキヘーキ」
「さあ、貴様もこれで終わりだっ!!」
「うおおおおっ!!」
俺は雄たけびをあげて突進する。ブラックドラゴンの振るう剛腕や牙に怯まず、紙一重で潜り抜け、その巨体を踏み台に脳天へと渾身の一撃を叩き込む。
パキーンッ!!
しかし、振りかぶった冷凍大根はあっけなく砕け散った。
「ふ…フハハッ! 矢張りその程度かっ!!笑わせてくれるわっ!! 冷凍大根の勇者など、恐るに足りん!!」
やはり、生半可な攻撃は効かないか……だが、
「焦るなよ、勝負はまだこれからだろ?」
意識を集中させると、再び俺の手の中に無傷の冷凍大根が出現する。
”勇者特性”で俺はいくらでも冷凍大根を召喚できるのだっ!! (嬉しくねえ)
「その余裕な態度、いつまで持つかな?」
再びブラックドラゴンの猛攻が始まる。しかし、巨体ごと俺に向かって突進しようとしたその瞬間、俺は攻撃を仕掛けたっ!!
「冷凍大根召喚っ!!」
ブラックドラゴンの足元に冷凍大根を召喚っ!!
「グオオッ?!」
うっかり属性持ちだけあって、ブラックドラゴンはみごとに大根に足を滑らせ、自らの羽を巻き込み床に巨体を叩きつける。…よし、行ける!!
ドゴーンッ!!
「クッ……小癪なマネをしてくれる。」
「冷凍大根、大量召喚っ!!」
俺はそんなドラゴンを囲むように床に大量の冷凍大根をまき散らす。
「もうそんな手に乗らんわ!! 焼き尽くされるがいい!!」
ブラックドラゴンは凶悪な顎を開くと、業火のブレスを解き放つ。
「ぐっ、冷凍大根、大量召喚!!」
俺は手前の空間に、膨大な量の冷凍大根を召喚し、その威力の相殺を狙う。
しかしやはりその威力を抑えきれず、両腕にいくらかの火傷を負う。
「冷凍大根、大量召喚!!」
今度はブラックドラゴンの頭上に召喚し、雨あられと冷凍大根を降り注がせる。ブラックドラゴンは鬱陶しそうに大根を振り払う。
以降も俺は冷凍大根で牽制を続けながらブラックドラゴンの猛攻をかいくぐり続けた。しかし、
「ちょこまかと小賢しい、これでも喰らえ!!」
ブラックドラゴンが目を見開くと、その血の様に紅い瞳から黒い閃光が奔る。その瞳見る者の身体を縛る魔王の特技、『邪眼』の光だ。
「うあっ!!」
しまった!邪眼をもろに喰らってしまった!!身体がピクリとも動かない!!
迫り来る危機に焦りながら必死に思考を巡らせる。
…まてよ、確か今の俺の格好は……見苦しいゴスロリのままだったはず!!
俺は覚悟を決め、心を乙女モードに切り替え、うるうる目のハスキーボイスな甘え声で魔王に訴える!
「わたし……そんなに見つめられるとハズカシイのっ♡」
「オゲロロロロッ!!」
やはりカワイイは最強だっ!!(違) 俺の精神ダメージも半端ないけどっ!!
身体の自由がもどった…だが、もう潮時だろう。
俺は逃げるのを辞め、魔王の前に立ち塞がった。懐からフロちゃんの形見(?)のスマホを取り出し、高々と掲げる。
「魔王、最後の一撃だ。これで決着をつけてやる!!」
「何……っ?!」
「今の俺の力じゃ、貴様を倒すことはできない…。だが、それはRPGやアクションゲームでの話だ!! だから俺はこのゲームを選択する……。」
「選択するゲームは、ブロック消しゲームだ!!」
「ブロック消しゲーム、だと……!!?」
魔王は愕然として辺り一帯に目を走らせる。
ブロック消しゲームでメジャーなルールは至ってシンプル。
同じ種類のブロックを揃えて消すゲームだ。
そして、この広大なホールの床には、(割れた物、焦げた物も混ざってはいるが)俺が召喚した膨大な量の冷凍大根が散らばっている……!!
「冷凍大根よ……勇者の真の力を見せろ!!」
ホールが聖なる輝きで満ちる
その輝きに、あちこちに散在する冷凍大根が共鳴し破片となって砕け散る。連鎖反応だ。
「勇者最終奥義…名付けて……えーっと……げ、間に合わねぇ!?」
――瞬間、虚空から膨大なエネルギーを纏った虹色に輝く冷凍大根が出現し、流星の如く魔王の身体を貫く!!
「グオオオオオッ!!」
断末魔の叫び声をあげ、ブラックドラゴンの巨体は轟音と共に倒れ落ちる。しかし。
「くっ…ま、まだ…これしきでっ…」
恐るべきその生命力。痙攣しつつも、奴は未だ滅びない!!
まだ息があるのかっ! なら、これでとどめだっ!!
「パンチラ」
「グフッ(パッタリ。)」
ブラックドラゴンは息絶えた。
夜が明ける。薄暗かったホールに柔らかい光が差し込む。
その温かさ、美しさ。
俺は傷ついたボロボロの体を床に横たえ、余韻に浸った。
「終わったよ……フロちゃん……。」
返事はない。
「おい、フロちゃん、冗談はよせよ。」
自称神の使いであんなデタラメな存在がやられる訳ないだろ?どこかで見てるんだよな……?
「フロちゃん、おーい!!」
――やはり、返事は、ない――。
一抹の不安が頭をよぎる。
「返事しろ、フロ!! おやつ買ってきてやるからー!!」
「ビーフジャーキー!!ビーフジャーキーがいいであるっ!! 最近健康管理だのいわれてちっとも口に入らないのである!!あと、○○メーカーのチキン味とチーズ味、あっ、新メニューが追加されたのでそちらも試したいのである!
虚空からひょっこり現れしっぽ振り全開で走り寄る、ケガひとつ無いフロちゃん……。
「……俺を、どうか俺を、冷凍大根じゃなくハリセンの勇者にしてくれえぇぇぇっ!!」
――俺のささやかながら切実な願いは、いつまでも光差すホールに響き渡るのであった――。
ここまでお付き合いいただき有り難うございました。
ネタ思いつくまでしばらく休止かも
うちのメイン作品はプロットもどきなので 宜しければそちらの作品も見てやってください。