本題に入ろうか バトルは手抜き仕様だぜっ
「うむ。冗談はここまでにして本題に入ろうか。」
と、姿勢を正すフロちゃん。
「ここは異世界トリップファンタジー冒険活劇を楽しむ……」
「帰してくれ」
「コンマ秒の躊躇も無く帰宅希望ー!!!?」
冗談じゃない!!
「お前の魂胆は判ってる!俺が酷い目に合って右往左往するのを肴に楽しもうっていう趣向だな!!そう簡単に口車に乗ってたまるかっ!!」
こんな雑な扱いされれば嫌でも判る事である。
「……お前さん、いつの間にそんな疑り深い人間になっちまったんだ……おっ母さん泣いているぞ」
しらばっくれるな!そんなつぶらな瞳をウルウルさせたところでいつもと変わり無いんだよっ!!
「そんなに言うなら証拠を見せろっ!美少女をとっとと出してイチャコラさせろー!!」
興奮のあまり年頃健全男子の本音ダダ漏れである。
「えー」
「やっぱり俺をおもちゃ扱いする気かーっ!!?」
「きゃあああっ」
ほ、ほんとに出たっ!!まぎれもなく金髪碧眼の超絶美少女だっ!!
まさかこんなに素直に要求を呑んでくれるとは思ってかったぞ。
後ろから物騒な怪物(オオカミ一体)が追っかけてきてなければ最高だったのになっ!!
「ピンチの所を颯爽と救ってラブロマンス移行は王道中の王道ではないか。さっそく手腕を見せるがよかろう。」
「唐突すぎる展開で情緒もクソも無いなっ!まあ許す! なんか武器くれ武器っ!!」
フロちゃんが飛び上がり、宙で一回転を決める。
するとその場に光が満ち、
俺の手の中には一振りの
冷凍大根がっ!!!
「やりやがると思ったわーっ!! ツッコむかと思ったか!? とりあえず鈍器的に使えるからこれでやってやるぜっ!!」
俺は冷凍大根を振りかぶり、今にも美少女に飛び掛かろうとしていたオオカミに襲いかかった。……もうヤケクソだっ!!
実にシュールな絵面だろうがもう構うもんかっ!!
オオカミと俺の睨み合いの中、巻き添えを嫌ったのであろうフロちゃんは俺たちから距離を取ると、おもむろに仁王立ちになり、お尻ふりふり(ちょっと可愛い)しながら高らかに遠吠えを響かせ始める。
ワーン♪ワンワンワンッワンワンッ♪
「……フロちゃん、何のつもりだ?」
「うむ。ファンタジーバトルには盛り上がる戦闘BGMが付き物である。吾輩、歌声には自信あるのでバッチリ任せて……」
「黙って見てろー!!」
暇なときにでもエグいダメ出ししてやるからっ!!
余所に気を取られた隙に
ザシュッ!!
……しまったっ!!
オオカミの振り被った一撃を喰らい、肩の肉を切り裂かれる。
「平和な日常からやってきた住人ならリアルスプラッタに耐性が無いであろう。その辺のフォローも抜かりは無い。傷口の描写はモザイク使用、痛みの表現もマイルド使用である。」
そうなのか?言われてみると体を動かすのに支障は無さそうだ。
「布団に爪を引っ掛けて半分剥がされる程度の痛み」
「メチャクチャ痛ってぇぇぇぇ!!」
爪を剥ぐ拷問ってどっかの本で読んだぞっ!?
傷口を抑え呻く俺の姿を好機と捉えたか、オオカミの攻撃は更に苛烈なものになる。
マジもんの野生オオカミVS人間なら一瞬で決着着いてるだろうが気にしてはいけないっ!