振り向かない背中
私には好きな人がいる。その人は、同じ高校の一個上の先輩である。
その先輩は、無表情でいつも何を考えているか、みんなわからないらしい。だけど、私には、なんとなくわかる。
例えば、部活のテニスの時とか……
――あ、明後日の試合のことを考えてる。
先輩は、試合が近づくとゲームの時に空を見上げるし。
――このあとの事を考えてる。
キャプテンでもある先輩は、休憩時間の時にボーっと顎に手を当てながらコートを見てる時は練習内容を考えてる。
これくらいなら、毎日注意深く見てたらわかる。 私がわかるのは、感情……かな?
――あ、今日はちょっと機嫌がいいみたい。何かあったのかな?
いつもと同じように見える無表情でも、どこか雰囲気が違うくて、この違いがわかるのは、私くらいだと思う。
だけど、やっぱりわからないことのほうが多い。
所詮、私が知っている先輩は、部活八割、その他の学校での間二割で、プライベートなどはまったくわからない。
――彼女がいるのか……。
表情からはまったくわからない疑問。これが、私の不安の種。
もしかしたら、機嫌の良い日は彼女に会えるからかもしれない。
しかし、私にそれを聞き出す勇気はない。
だけど、夢を見続けるのも良いかもしれない。
だって……
「先輩! 頑張ってください!」
って、試合の時に叫ぶと。
「……」
振り向かないけど、手を振ってくれる。私が叫んだ時にだけ。
――ねぇ、先輩。今日の試合の後に、私の気持ちを伝えてもいいですか?
〜fin〜