その後のお話
誤字脱字増え字などあったら教えて下さい。全力で直します。
※タイトル変更しました。
「し、しかし、やはり暑さは苦手ですね」
砂漠の昼間の一番暑い時間に、魔法使いである彼は地面に杖をつきながら体を支えていた。
乾燥帯である砂漠は草木や水がほとんどなく、気温がとても高い。風が吹いても風事態も暑いため涼しく感じない。だが彼は暑い暑いと言っているが、汗一つかいていない。
「水、みず……」
彼は水筒の水を飲む、が、この気温のせいで水も熱くなっていて、彼は水を口から出してしまった。
そしてもう一度、吐きたい気持ちを我慢して水を飲む。少しむせたのか咳き込んでいる。だが今度は水をちゃんと飲んだようだ。
こんな時も魔法を使えばいいと思うが、こんな時だからこそ使ってはいけない。魔法を使うのは本当に最後の手段だ。何故ならいつも魔法にたより過ぎると、肝心なところで魔法が使えなくなった場合に対処できない恐れがあるからだ。例えば魔法を使って火をおこすとしよう。ではもしもその魔法が使えなくなったりしたら? 魔法に頼り過ぎ魔法以外の火のおこし方がわからなくなってしまう。彼の場合はこういった極限状態の時に魔法を使わず、自分だけの力でなんとかできるようにするために魔法を使っていない。
「おお、見えてきた!」
とうとう首都が見えたらしい。目的地が見えたことで彼の気力が回復し足取りが軽くなる。しかし突然彼の目の前の砂が何かの衝撃で飛び散った。
ドカアァァァァァァァンン……
「い、いったい何が……」
彼は咄嗟に顔を腕で隠し砂から守った。そしてしばらく砂煙が上がり、煙が消えてきたときに、二つの影が見えた。
完全に煙が消えると、そこには黒いローブを着た二人組がいた。片方し身長が170ほどある男で、黒い髪の毛と目、見た目だけなら十八歳ほどの年齢のようだが、もっと細かく観察すると所々に皺がある。本当は二十代ほどだろう。そしてもう一人は子供のようだ。茶色く肩まで伸びる髪に青い目を持っている。
二人は彼の方へ進み、彼に話しかけた。
「久しぶりだな」
「……」
男の顔を見て彼は顔をしかめる。男とは知り合いのようだ。
「何故私の所に来たのですか? 別に何かした覚えがありませんが」
「……おい、マジで言ってんのか?」
彼の発言に男は青筋を浮かべ、殺気を放つ。それを横にいた少女が手で制する。
「……今は、ダメ」
「ちぃっ! ……テメェはついこの間魔法を使用し警察に銀行強盗の捕獲を手伝った。さらにさっきは魔法を使用して子供の病気を治した」
「フム、それがどうかしたのですか?」
「どうかしたじゃねぇだろ! 人間に魔法を使用したり魔法の存在を悟らせるようなことをしてはいけない! それが俺達魔法使いのルールだ! そしてお前はそのルールを破った。何か異論でも?」
「人を守るためです、しょうがない措置でした」
「んなもん勝手に死んどきゃいんだよ!」
男の言葉に弧を描いていた彼の口が一瞬ひきつった。そしてその後彼の空気が変わっていき、だんだんそれが顕著になる。それに気づいた二人は数歩後ずさる。
「まだ未来ある子供達、そしてその未来を手助けする大人達を勝手に死ねなどと、言っていいことと悪いことがありますよ」
「……あんたは、なんでそんな風に変わっちまったんだよ。俺はぁ! 昔のアンタに憧れてたんだよ! それなのに、なんで……」
「……ある昔の話です。私は国の内乱に巻き込まれました。私はしょうがなく来る者来る者を殺しました。そしてある日私はとある家族と出会いました。その家族の父親が怪我をしていて、子供の泣き声が五月蝿かったので私は父親の怪我を治しました」
彼は語る、その日のことを、かつての愚かな時代の自分を思い出しながら。
「その後、私はすぐにその家を出ましたが、家から男の子が出てきて私の所に来ました。私は鬱陶しいと思って男の子を殺そうとしました。しかし……男の子は言ったんですよ、私に、あんなに頭がどうかしていた私にただ一言、『ありがとう』という言葉と笑顔を私に見せてくれたのですよ。私はその笑顔を見て思いました、『ああ、なんて美しいんだ』と。そして私は気づいたのですよ、自分がどれだけ血で汚れた心を持ってしまっていたか。私は決めました。あのまっすぐで美しい笑顔を私のような者に理不尽に奪われてはいけない。そしてこれからも、私はあの笑顔を見ていたい。そう思ったのですよ」
彼はとても良い笑顔でそう言った。男は自身の顔に何か冷たいものを感じ手で拭った。そしてもう一度彼を見ると、男は言った。
「お前は今から俺達の敵となった。だが上はあまりお前とことを構えたくないそうだ。よってもし俺がお前を敵と判断した場合、それは俺達の総意と考えお前を俺達の敵とみなすが、俺達の同胞が襲われる、もしくはお前によって魔法が世間に認知された場合に限り俺達はお前に報復する。わかったか?」
「理解しました」
「……魔法は、ダメ」
「フフ、最低限使いませんよ。まあ、どこまでが最低限かはわかりませんが」
「……ちっ、この異端者が」
男はそう吐き捨てると、砂塵と共にどこかへ消えていった。
だが、まだここから去っていない者が一人……
「……」
「……帰らないんですか?」
「……私は、監視。あと、あいつがもっと世界を見てこいって」
「そうですか、では行きましょう」
「ん」
そして二人は、向こうに見える首都へ歩き始めた。
たぶんこれで連続投稿は終了かもしれません。