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楽園物語  作者: 如月瑠宮
第三章 策略
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約束

 決めたのは彼自身だった。アイアコスは告げる彼を見つめた。

 そして、笑う事が出来た。

 彼の眼差しは諦めてなどいないから。


 アイグレーはエリテュイアの姿を見た瞬間、耐えられなくなった。零れそうで、零れずにいた涙が頬を伝う。

 ただ涙を流すアイグレーをエリテュイアは抱き締める。

「・・・分かってるの」

 アイグレーの呟きは掠れていた。

「分かってる、けど・・・っ」

 涙が幾筋も流れていく。落ちる先は彼女やエリテュイアの衣。涙が染み込んでいく。

 分かってはいても、涙は零れていくのだ。そして、止める事も出来なかった。

「アイグレー、聞きなさい」

 エリテュイアの声にアイグレーは顔を上げた。その頬には痛々しい程に涙の筋が見える。

「ウルカーヌス自身が何を考えて、何を思っているのか。それを貴女は知るべきだわ」

 知るべき事。それは、アイグレー自身で確かめなければならない。エリテュイアはそう思った。

 だから、エリテュイアは彼女の背を押す。彼女の役目は、姉として行動する事だ。アイグレーのたった一人の姉としてその背を押してあげる。母を亡くした妹の為に出来るのはその代わりになる事であった。

 エリテュイアは気付いていた。隠れようと思わない背後の気配に。

 だから、妹を送り出さなければ。彼女を大切に想う相手の許へ。

 エリテュイアは背後に目を向けた。アイグレーがエリテュイアの視線を追う。

「・・・・・・」

 アイグレーの目が見開かれる。

「よろしくね」

 エリテュイアはウルカーヌスに向けて微笑んだ。そして、その場を後にする。二人の幸せを祈りながら。

 アイグレーはそんな姉の背中を見送った。凛とした美しい姿に彼女は勇気付けられた。

 ウルカーヌスを真っ直ぐ見つめる。そして、ただ一言告げた。教えて、と。

 ウルカーヌスは語り始める。自身の生まれやエリシオンに来た目的、今の考え。アイグレーは何も言わず、彼の言葉を聞く。

 そして、全てを聞いたアイグレーは笑った。


 アイグレーは立ち去るウルカーヌスの姿を目に焼き付けた。暫らくの間の別れだ。彼女はそう思う事にしている。もしもの事は考えない。

 ただ、彼女の胸には約束があった。彼との再会の。

「必ず・・・」

 彼女は願う。約束が果たされる事を。

 願うアイグレーの背中をアトラスは見つめていた。父として、娘の決意を見守った。それが、彼に出来る祝福だから。

 そして、アトラスも願う。


 ただ一つの約束が果たされる事。

 それだけだ望みだった。




 第三章 終


 エリシオンの四つの春 完

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