魔女のチョコレート
昔ある町に偉大で可憐な魔女が住んでいました。
めったには見られませんが、時々運のいい人は会えるそうです。
でも会えるといっても魔女かどうかは分からないのです。
なぜなら町にいるときはたいていは動物や何かになっていて、
知らない所で町の人々を観察しています。
ある時、彼女は見たのです。彼を。
彼の名前はベルク。彼は恵まれていて、裕福な家の一人息子で、両親ともに、穏やかであたたかい人でした。
けれど、ベルクはさびしそうでした。いつも満たされないこころを持っていました。
魔女は不思議でした。彼女には親という存在がいなく、生まれたときから一人でした。お金も興味がないけれど、うらやましい存在だったのです。
なぜベルクがさびしそうにしているか理解できませんでした。
だからこそ、惹かれる存在でもあったのです。町の人々はたいてい恐れるか、魔法の力を手に入れようと、
あらゆる手段を使って魔女を捕まえようとします。
ベルクは魔女と反対でした、魔女は自分とメリットなしでいてくれる存在を求めていました。
なんとかしてベルクに近づこうと毎日努力しました。
けれど魔女は犯してはいけないことをしてしまいました。
ベルクの前で自ら魔法を見せてしまったのです。あんまりにもベルクが自分の方を向いてくれないので
むきになってしまったのでした。それがもたらす結果を知っていたはずなのに・・・・・。
気付いた時には遅すぎました。彼は彼女にすがりついて、毎日毎日叫びました。
「ぼくに魔法をおしえて」
「ぼくに魔法をおしえて」
来る日も来る日も彼は言い続けました。
「それは無理なの、特別な者しか使えない。」
ベルクが来るたびにそう言い続けました。
涙を流して、魔法にとりつかれた彼をみつめながら。
ある日、魔女は決断しました。
このままでは彼が自分を取り戻せなくなる
だから、魔女はある物を作りました。
チョコレート。
この時代はチョコレートは毒とされていて誰も食べたことがありませんでした。
魔女はチョコレートに自分の想いと忘却の魔法をかけました。
彼は魔女から受け取ったチョコレートを食べました。
彼は食べたことのないチョコレートの味が魔法のようだと感じました。
魔女はこの町にはもういませんでした。
そして時が過ぎ、ベルクはチョコレート工場の社長になりました。
うっすらと覚えている思い出の中のあの人に食べてほしくて。
そしてその人が見つけてくれるように、このチョコを。
「魔女のチョコレート」
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